#13 ピンクの花
惑星サッカロは湿りの星。70%が海、一部が陸地。アリーヤは、マイクを起こそうとすると、マイクはこういった。
「そこに環境適応スーツがある。」
アリーヤはマイクから環境適応スーツを借りて、サッカロの地表に降りることにした。
「マイクは寝てていいから、留守番しててね!」
宇宙船下部から、光の柱が降りる。その光の柱をつたって、アリーヤは地表に降り立った。
あたりはシダ植物に似た森でおおわれていた。
「チャーリー、どこ?」
草むらを、森をかき分け、チャーリーを探すアリーヤ。
「今思えば、ロッソ星で救助活動をしてたから、マイクはつかれたのかも……もう少し、休ませてあげればよかった……」
アリーヤはひとりごとを言いながら、あちこちを見回している。
すると、腕に付けている探知機が反応した。
「チャーリー!」
向かった先には、チャーリーの乗っていた小型の脱出ポッドがあった。ポッドの中に、チャーリーの姿は無い。
「どこに行ったの、チャーリー!」
付近を探し回るアリーヤ。やがて、3時間が経過した。チャーリーは見つからない。
「全部、私のせいだ……もうだめだ……」
アリーヤは、宇宙リスのチャーリーが乗ってきたであろう、小型脱出ポッドの前で、うずくまった。
「わたしがマイクに宇宙船の操縦を任せっきりにしたから……わたしがチャーリーを部屋に1人だけにしたから……全部、私のせいだ……」
アリーヤは、三角座りをしながら考え込んだ。ふと、アリーヤの座っている近くの地面に、小さなピンク色の花が3つ、咲いているのが見えた。
その花は、アリーヤの親・ローザが、家で育てていた花と同じだった。
「どうして、この花がこの星に?」
すると、アリーヤは花のすぐ近くに、水色の毛が落ちているのを見つけた。
「チャーリーの毛だ!」
ほんの僅かな毛であったが、アリーヤにはそれが、宇宙スクワールのチャーリーの落としたものだと分かった。
ピンクの花や、チャーリーの毛の近くには、大きな木のようなシダ植物が立っている。
「そっか、リスは木登りが上手だから、チャーリーも木に登ってるかもしれないね!」
アリーヤは手がかりを探すため、環境適応スーツの手首周りに付いている、生命探知機を上に向けた。
初めの2つの生命反応は、その惑星の生き物だったが、3つ目の生命反応を捉えたとき、シダの木の屋上からチャーリーが、ようやく顔をのぞかせた。
「チャーリー!大丈夫?ケガは無い?」
「おお、アリーヤ!ここはいったい、どこなのですか? 惑星ブルームにしては湿気が多いですし、私の家がありません!」
「ごめんなさい、チャーリー!ここは惑星ブルームでは無いんです。進む道をまちがえて、サッカロという別の星に来ちゃったんです。」
チャーリーが大きなシダから降りてくると、
アリーヤはチャーリーの小型脱出ポッドを持とうとした。
「それは重くて無理ですよ。私が片付けます。」
脱出ポッドに乗り込むチャーリー。
アリーヤとチャーリーの様子を、遠くからじっとながめている者がいた。
アリーヤの生命探知機に反応がでる。
彼女が振り向くと、そこには首の長い軟体動物型の宇宙人が3人いた。その宇宙人は、カタツムリ型の脚で、地面をすべるように歩いて来た。
その宇宙人は、体は軟体動物だが、顔らしきものが銀色の鉄板のようで、逆三角形の目のようなくぼみが2つあった。
「あれは、サッカロ星人!」
チャーリーにサッカロ星人と呼ばれた宇宙人は、アリーヤの目の前まで歩いて来ると、カタツムリ型の脚と胴体の間にある、松ぼっくり型の2つの突起物を覗かせた。左右に2つある、松ぼっくり型の突起物のうち、右にある突起物が、細長くのび始めた。のびた突起物の先端が、4つの指に分かれる。のびる突起物の正体は、サッカロ星人の腕であった。
サッカロ星人は、自分の手のひらをチャーリーの頭に乗せた。
「何をするの?」
アリーヤが問いかけると、チャーリーがこんな事を話し始めた。
「私は、サッカロ星人のケレヴィ。あなたは地球人ですね?」
アリーヤは戸惑った。チャーリーは続ける。
「我々サッカロ星人は、他種族とのコミュニケーションをとるとき、他の生物の声帯や脳に手をあて、一時的に操ることで言葉を発します。このリスはなぜ、人間の言葉を話せるのですか?」
「分かりません……私もチャーリーと会ったばかりなので……」
「なぜこの星へ?」
「惑星ブルームへ行くつもりが、ここへ着いてしまいました。」
アリーヤは、地面に生えている、3つのピンクの花を指し、ケレヴィに話した。
「このピンク色の花は、何という花ですか?」
「ああ、その花は、ある地球人が植えた雑草ですよ。名前は知りません。」
「サンプルとして、持ち帰っても?」
「良いですよ。この花はサッカロ星の自然環境を壊します。いくらでも持ち帰って下さい。」
「惑星ブルームへの道を知っていますか?」
「もちろん。地球人と我々サッカロ星人達は、友好的であるべきです。ただし、この土地に咲かせた、ピンク色の花を回収してください」
その頃、宇宙船。
操縦室で、マイクは居眠りをしている。背中には薄い毛布がかけられている。ふと、マイクが目を覚ますと、船は惑星サッカロの上空だった。マイクはあくびをした。
「なんだ、ここは?たしか昨日の晩は、どこかの星で買ったバーチャルゲームをしていて、徹夜して……わかった、それで眠いのか」
「睡眠はしっかりね」
操縦室の入り口に、少々怒り気味のアリーヤがいた。
「アリーヤ、いたのか」
「新しい仲間を紹介するよ!ケレヴィです!」
アリーヤの後ろから、ケレヴィの姿が。
「おい、そいつサッカロ星人じゃねえか!仲間にしたって!?」
するとケレヴィの手のひらが、マイクの頭に覆いかぶさる。
マイク(ケレヴィ)「サッカロ星人のケレヴィです。よろしくね。」
マイクの声帯で自己紹介するケレヴィ。
マイクは必死に、ケレヴィの手のひらを頭からどけた。
「これからケレヴィは、この組織のシェフになってくれます!皆さん、仲良くしましょう!」
それからアリーヤは、マイクを宇宙船内部の広場へ案内した。
そこには、色とりどりの花畑があった。地球に咲いている花もあれば、見たことの無い宇宙植物も生えている。1番多いのはピンクの花だ。
「キレイでしょ?」
「これ、どうしたんだ?」
「サッカロに生えてた雑草扱いの花たちを、私が引き取ったんだ。これから育てるつもりだよ!」
宇宙リスのチャーリーもやって来た。
「ピンクの花はどこへ飾るのですかな?」
アリーヤは、植木鉢に入れたピンクの花3つを、自身の個室に飾っていた。
アリーヤは柔らかく、微笑んだ。
つづく
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