#11 救難信号
アリーヤ・カルティエは地球に住んでいた、アフリカ系の14歳。比較的、平凡な街に暮らしていた。
宇宙犯罪者であるデッド・オリオンに家と街を破壊され、親であるローザを傷つけられたアリーヤは、デッド・オリオンを倒すべく、コアと共に時空移動マシンでデッド・オリオンの宇宙船ごと別の宇宙へ行き、時空移動マシンを破壊する事で、宇宙と地球の平和を守った。
地球へ帰る手段を無くし、ローザのもとへ帰れなくなったアリーヤは、自身を導く謎の声に疑問を持ちながらも、宇宙船を手に入れ、デッド・オリオンのような組織から宇宙を守り、救う事を決心する。
アリーヤは、デッド・オリオンなどの脅威から、人々や宇宙の平和を守るため、デッド・オリオンに対抗するレジスタンスの手がかりを探る。
これから、彼女を待ち受ける運命は……
レジスタンス組織・クレッセントの本拠地、 オウル・コロニーは惑星バミリオンの近くにある。
クレッセントの総帥・ジーンのもとへ、ある情報が届いた。
「ソドム星という惑星で、地球人5名がデッド・オリオンから逃走したようです」
その知らせを聞いたジーンは、ソドム星と、地球人5名の詳細を調べるよう、部下に命じた。
宇宙船の内部で、アリーヤはスマホのメールを見ていた。
「ピンクの光・指し示す場所に、きみは行くべきだ。そこにきっと、希望があるから。」
アリーヤは、エヴァルドという人物から来たメールを読み返した。その人物からメッセージが来たのはそれきりだ。
アリーヤはローザとエヴァルドという人物に、メッセージを送ったが、返事は来なかった。電話の通信環境が圏外であることは知っていたが、つい衝動に駆られてしまう。
「そりゃ来ないよね、宇宙だもん。3人とも、無事かなぁ……」
アリーヤは、ローザ、コア、そしてエヴァルドという人物が、無事であるかを知りたいようだ。コアとの連絡手段は無い。アリーヤは下を向いた。
「……悲しんだってしょうがない、前を向かなくちゃ!」
スコーピオン号の操縦室へ入ったアリーヤは、前方のモニターの一部が赤く点滅していることに気がついた。
「救難信号?」
アリーヤ達は救難信号が出ている宇宙へ向かった。
「おいおい、またかよ」
マイクが文句を言った。
眼の前の宇宙空間に、何か小さな鉄の塊が浮いている。周りに惑星らしきものは無い。
「救難信号はあの個体から出てる。収容しよう」
アリーヤは宇宙船を操作し、宇宙船下部に収納された2本のアームを使って、鉄の塊を引き寄せた。
……
「助けてくれてありがとう、わたしの名はチャーリーです!」
小さな鉄のかたまりから出てきたのは、言葉を話す宇宙スクワールだった。
宇宙スクワールはチャーリーと名乗る。
チャーリーは、こう説明した。
「先週、家族と共に宇宙旅行をしていたのですが、そこで事故があり、そのままはぐれてしまったんです。」
アリーヤは納得すると、チャーリーにたずねた。
「それで、家はどこなの?」
チャーリーは答えた。
「惑星ブルームにある、小さな家です。もしよろしければ、わたしを家まで案内して頂けないでしょうか……」
「分かった!チャーリーを家まで送るよ」
「何いってんだアリーヤ!そんな事してると、レジスタンスとの合流から遠ざかるぞ」
マイクが口をはさむ。
「でもチャーリーの事を放っておけない。チャーリーの家族も心配してるだろうし。」
「あきれたな。キミには人助けの精神がやどっているようだが、それが行き過ぎている。」
「人情深いと言ってよ。ところでチャーリー、家族さんの名前は?」
アリーヤはチャーリーに訊ねた。
「ウペンド・モヨと言います」
チャーリーの答えにアリーヤは驚いた。アリーヤは以前、ウペンド・モヨに助けてもらった事がある。
「その人なら知ってるよ!惑星ブルームに土地を持ってる人でしょ!」
「そうです!その人が私の家族です!」
「知り合いなのか?」
マイクが口をはさんだ。
「ついこの間、助けてもらったんだ!よーし、そうと決まれば今すぐ行こう!惑星ブルームへ、しゅっぱーつ!!」
アリーヤはスコーピオン号の進路を、惑星ブルームの方角へ向けた。
「ところでチャーリー、お腹すいてる?」
「はい、ペコペコです」
「丁度いいや、食事にしよう!リビングで待ってて!マイクさ、惑星ブルームへの道は知ってる?」
「あぁ」
「しばらく船の操縦、頼むね☆」
アリーヤは調理場へ向かった。
「さて、何を作りましょうか……」
一方、惑星ソドム付近の宇宙空間。
コルテスの部下、ジュリアは、デッド・オリオン基地から逃げ出した、7人の子どもの行方を探すよう命じられていた。
「ジュリア少佐!この星域には、我々以外の生体反応は見当たりません!」
ジュリアの部下が報告をした。
「もっとよく探せ」
「はっ」
彼女の部下は返事をした後、持ち場に戻った。
「もっと遠くへ逃げるんだ、子どもたち」
ジュリアは小さな声で、そうつぶやいた。
つづく
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