表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたと音楽を紡ぎたい  作者: Kanade
1/1

あなたとピアノを弾きたい①

まっすぐで少し不器用な女子の恋愛物語です。

「・・・私は先輩のことが好きです。付き合ってください。」


 二人しかいない物置部屋で私は憧れの先輩に告白をした。知り合ってから半年しか経っていない。正直、びっくりされるだろうなと思っていたが、案外そうでもなかった。先輩は一瞬、目を見開いたがすぐにいつもの表情に戻って私に現実を見せた。

「今は付き合うとか考えていないよ。申し訳ない。」


「じゃ、じゃあ卒業されてからは・・・」


「そんな先のことまで保証できないから無理だね。気持ちは嬉しいよありがとう。これからも先輩後輩としてよろしくね。」


 あまりにもあっけなく振られた。優しい人だから情けをかけて付き合ってくれるかもって思っていた昨日の自分を殴りたくなった。今の私じゃ、あの人の隣に立てない。そもそもあの人の隣に立てる人はいないのかもしれない。だって、あの人は音楽を愛し、音楽に愛されているから。私なんかとは違う世界を生きている。私みたいに音楽に執着して音楽に見放されていない。ああ、こう考えると私って汚い存在だな。


 どれくらい時間が経ったか分からないが外を見たら綺麗な夕焼けが世界を包んでいた。綺麗な夕焼けだなと思ったと同時に先輩と一緒に見たいと思った。けど、この部屋には私しかいない。だって独り暮らしの女子大生の部屋だもの。誰かいたら家族か不法侵入者だ。先輩に告白して振られて、とりあえず部屋を出て・・・そこからの記憶が無い。だが何かしらの手段を使って家にまで帰ったことは確かだ。時計は五時を指していた。もうそろそろ晩御飯を作る準備をしなきゃ。そう思って私はスマホを手に取りお気に入りのプレイリストを流そうとした。すると私の記憶が飛んでいる間にたくさんの通知がスマホに届いていた。すべて親友の美知佳からだった。


「結衣!先輩からなんていわれた?」

「無言でサークル直帰するなんて珍しい・・・話はいつでも聞くからね」


そこから五件の不在着信があった。どうやら先輩に告白してから周りの人間が心配してしまうような状態になって帰宅をしていたみたいだ。自分でも驚くぐらい何も覚えていない。お酒を飲んで酔っ払っていたらまだしも、先輩に告白してから今、目が覚めるまでの記憶がほとんどない。どこかで倒れたところを誰かに運ばれたのかなと馬鹿げたことを考えたが、仮に道端で倒れていたら今頃、病院にいるだろうし、この部屋には私以外の生き物はなにもいない。自分の足で帰ったことは確かだが、記憶は無い。美知佳は今、すごく心配しているだろうが、返信は後にしよう。今は外界から離れていたい。理由はわからないけど。

 お気に入りのプレイリストを再生して台所に行った。ふと、二枚の写真が目に入った。今年の夏のサークル合宿のときの写真だ。二日間みっちり練習して最終日三日目にサークルの人全員の前で演奏をした。みんなが演奏し終わった後の集合写真と憧れの先輩とのツーショット写真が飾れていた。いつも見ている写真なのに今日は涙が溢れてくる。こんなに泣いたのは大学の合格発表以来だ。今日は変な日だな。記憶力が良い方なのに先輩に告白してから目覚めるまでの記憶が残っていないし、滅多に泣かないのに写真を見るだけで泣いてしまう。

 そうだ。私は先輩に振られた。そして、自暴自棄になりながらサークルの部屋を後にした。だから美知佳もたくさんの連絡を送ってきた。やっとバラバラに存在していた事実が一つに繋がった。そしてまた一つ分かったことがあった。


 私は先輩に振られた。それでもなお、先輩が大好きでまた告白したいと思っている。


 その思いを認識してまた涙が出てきた。あまりにも早すぎた。もっと慎重になるべきだった。もっと先輩と話したいし、一緒に音楽したいのに自分からその道を閉ざしてしまった。私は何をしたんだ。あまりにも未熟なことをした、それだけしか分からない。

 多分何もせずに一晩中泣いていたのだろう。気づいたら部屋の中に光が差し込んでいた。

「あ、朝になっちゃった。」

 夜どうし泣いていたから疲れているが、このとき見た朝日は初日の出なんかよりもずっと綺麗だった。先輩がよく弾く曲のミュージックビデオの空の色に似ている。あ、また先輩のことを考えちゃった。

「やっぱり好きだな。」

もっと成長して大人になってもう一度告白したい。もしかしたらまた振られるけど。でも、私にはそんなことはもうできない。一度渡そうとしたプレゼントをもう一度渡そうとはできない。


ああ、私は愚かだな。感情が動く方にしか動けない。周りを見れない。もう一度言いたい。「好き」だと。嫌な顔をされても拒まれても言いたい。でも、そんなことはできない。簡単に諦められないからせめて私が大学を卒業するまでは私の想いを全てあなたに捧げる。そうでもないとこの恋は報われない。



初めて書いた作品です。なかなか思うように書ききれていない部分もありますが、これからも温かい気持ちで閲覧していただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ