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オタクですがなにか?  作者: 夏目 涼
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第6話

放課後になり、モリスに学校の案内をするために教室を出る。

廊下を歩いているだけでみんなからジロジロ見られる。もちろん私を見ているわけじゃない。隣のモリスだ。


「えーっと、3年生の教室があるここは新館の3階ね。3年生の教室と理科室、図書室・・・あとは情報処理室があるかな」

「情報処理室?」

「えっとね・・・パソコンが使える部屋なんだけど・・・パソコンも向こうの世界になかったよね?」

「無いな」


そりゃ、自転車とか自動車がない世界でパソコンなんてあるはずないよね。


「とりあえず行ってみる?」

「頼む」


情報処理室に入ると何人か生徒がパソコンを使用していた。

この学校では個人にアカウントが与えられ、放課後18時までは学校のパソコンが自由に使えるのだ。

勉強で使うもよし、受験する高校を調べるのに使うのもよし、趣味のことを調べるのに使うもよし。

インターネットの使用制限は少しあるものの、割と自由に使わせてもらえるのだ。


私とモリスはあまり周りに人がいない場所に座る。


あっちの世界とかこっちの世界とか話してるの聞かれると中二病かよって思われちゃうもんね。モリスが!私は周りからも認められてるから全然いいんだけど。


「へー・・・これがパソコンか」

「そう。使ってみる?」


私は1台のパソコンの電源を立ち上げる。

モリスは興味津々に私の行動を凝視している。


そんなに見られると恥ずかしいんだけど・・・。


パソコンの電源が立ち上がるとパスワード入力の画面が出てくる。


そういえばこっちの言葉通じるけど書いたり読めたりするんだろうか。


「モリス・・・こっちの言葉は通じるとして、文字とかは読めるの?」


私は他の生徒に聞こえないようにモリスに近づいて小声で聞く。

モリスも空気を読んで私に合わせて小声で答える。


「なんでだか分からないが、喋れるし聞き取れるし書けるし読める」

「そう・・・なんだ。そういえば私も向こうの世界の時はそうだったな」


あ、そういえば、モリスに聞きたいことがあったんだ。


「そういえば私って、向こうの世界にも存在するの?」


モリスはパソコンを凝視していた視線を私に移す。


「俺のクラスメイトでいるぞ。そいつの名前も”チヨ”だ」


同じ人物がどっちの世界にも存在するのだろうか?

こっちの世界にもモリスと同じ人物がいてたまたまこのタイミングで転校してきたところに向こうのモリスが憑依したとか?


「なんだか不思議・・・」

「ちなみに向こうのチヨは俺の幼馴染だぞ」

「え?」


真面目な顔をしてモリスは私の顔を見る。


モリスと私が幼馴染?


なんて萌えるシュチュエーション!!!!!

羨ましすぎる!向こうの私!!!!


悶絶しそうになるのを我慢しながら自分のアカウントでパソコンに入る。



「・・・俺の誕生日と名前?」


不意にモリスが呟く。

私はビクッと身体を硬らせる。


気を抜いていた。

今まで周りにはマド学とかモリスのこと全く知らない人たちだったから気付かれなかったけど、今は本人が隣にいるんだった。


「えっと・・・・これは私のアカウントのパスワードで・・・アカウントっていうのは〜・・・・」


私は恥ずかしくて話を逸らそうとする。


真っ直ぐで純粋な目をするモリスに見つめられると私の心臓がもたない!!!


「・・・アカウント設定と説明は今度先生にしてもらうとして~・・・これがインターネット」


私は検索ページを開いて見せる。

モリスはイマイチよくわかっていない。


「インターネット???」

「そう。ここに打ち込めば大体のことは調べられるんだよ。正しい情報かは自分で見極めないといけないけど、本を片っ端から引っ張り出して調べるよりはるかに楽!」

「ふーん」

「何か気になることとかあったりする?」

「そうだな・・・向こうの世界のこととか調べても出てこないのか?」

「向こうの世界のことは出てくるっちゃ出てくるけど・・・衝撃受けると思うよ」

「衝撃?」


私は、カタカタとキーボードで”魔導士学園ヴァース”と入力する。


チラリとモリスの顔を見るが真剣にパソコン画面を見ている。

私は、決心して検索ボタンを押した。


「え!?」


私の驚きの声が情報処理室に響き渡る。

周りの生徒がジロリとこちらを睨む。


口を押さえ周りの人たちに軽く会釈して再びモニターを見る。


”魔導士学園ヴァース連載休止”


その文字がトップに上がっていた。


なんで?作者さんに何かあったの??病気とか???


色々な考えが浮かぶ中、私はその記事をクリックする。





魔導士学園ヴァース連載休止


週刊少年スクワットで今人気連載中の魔導士学園ヴァースが連載休止になると発表があった。魔導士学園ヴァースは一色いっしきかえでさんが手がけている学園漫画で10代、20代を中心に人気だ。所属事務所からの詳細はまだ不明だが一色さんが今現在書ける状態ではないとのことだ。

病気なのかスランプなのかは詳細は不明だが人気の漫画なだけあって続きがしばらく読めなくなるのは残念だ。一刻も早く連載再開してほしいファンの声が多く届いている。



一色さんの身に何が?!

もしかしてモリスがここにいることに関係あるの??


モリスの方を見ると何やら考え込んでいるようだった。



「えっと・・・びっくりした?」

「・・・俺がいた世界って漫画の世界なのか?」

「うん・・・そう」

「それで俺がこの世界に来た途端に漫画が止まった・・・何か関係あるのか?」

「ど、どうだろう・・・たまたまなのかもしれないし」

「この原作者って人に会えないのか?」

「え?!それは難しいんじゃないかな・・・」


確かに原作者の一色さんに会えばこの状況の原因がわかるかもしれないし、あわよくば一色さんが現実でモリスに会うことで作成意欲が出てきたまた連載再開してくれるかもしれないけど。

まず、どこの誰なのかも分からないし。探しようがない・・・。週刊少年スクワットに問い合わせても中学生の言うことなんて信じないし会ってくれないだろう。


「とりあえず、この部屋はもういい?自分のアカウントを先生に貰ったら自由に使えるからその時にまた来よう。それまでに使いたかったら言って」

「わかった。ありがとう」


衝撃のこと満載なのにモリスは平然としている。


昨日から私の方が動揺しまくりだわ。


パソコンをログアウトして情報処理室から出る。


「次は下の階だね」


階段を降りて2階に行く。


「ここは2年生の教室と音楽室、技術室、視聴覚室があるよ」


2年生の教室の近くの階段で降りてきてしまった。ちょうど2年生がHR終わって帰っているところだった。


説明のために立っているだけでも目立つなぁ・・・。

3年生が移動授業でこの階にいてもジロジロ見られる。私は部活に入っていないから分からないが、自分の知っている先輩だと挨拶をしないといけなかったりするのだろう。


それに2年生にも噂は広まっているようでヒソヒソと「あの人が例の3年の転校生?」「めっちゃイケメンじゃない?」など声が聞こえてくる。


また取り囲まれる前に移動しなければ!!!モリスが若者に毒されるっっ!



「次、1階に行こうか」


私は慌ててそう言い、階段を降りようとすると1人の女の子がモリスに近づいてきた。


「先輩!」


その声に、私は振り向くが女の子の視線の先にはモリスしか映っていない。

モリスは気が付いていないのか、自分のことだと思っていないのか・・・構わず階段を降りようとする。


「ちょっと待って、モリス!」


私はついモリスを呼び止めてしまった。

振り向いてしまった手前、呼びかけた女子を無視して行くことも出来なかった。


私に話しかけてないのは100%わかるんだけどそれで無視したら変な噂立つだろうしな・・・。

しかもこの子・・・私の苦手な陽キャかつギャル!!!


軽く化粧をしていて、少し茶色がかった長い髪をポニーテールしている。キレイというよりは可愛い顔立ちをしている。


なんでモリスを呼び止めちゃったんだろう。

絶対この子、モリスを狙って話しかけてきたのわかっているのに・・・。


呼び止めてしまったことを後悔しながら振り向いてしまった私も悪いと言い聞かせる。

モリスは私の呼び止めに気が付き、階段を降りようとしていたのをやめ、戻ってくる。


「どうした?」

「えーっと・・・この子が用事あるっぽいよ?」


あーーーーー

なんでこんなアシスタントしちゃってるんだろう。

最悪・・・。


「えっと・・・何?」


モリスが怪訝そうにギャルの女の子を見る。

女の子は顔を赤らめながら、


「私、2年の宇都宮うつのみや なぎって言います。一緒に写真いいですか?」

「えーっと・・・」


モリスは困った顔をしながら私を見る。


私を見ないで。

彼女でもなんでもないし、写真なんてだめって言える立場じゃない。

つーか、私も撮りたいわ。くそう・・・。


「・・・私が撮ってあげるよ」


気持ちとは裏腹に、自分からカメラマンを申し出る。本当は一緒に撮ってるところなんて見たくないのに・・・。

ギャル女子、凪の携帯を受けとって私は構える。


カシャっとシャターオンが流れると、2年の女子が一斉に集まってきた。


「私もお願いします!」

「次私!」


携帯を私に託してみんなモリスの横に立つ。

なんだが集合写真みたいになってるけど・・・。


女子15人くらいの集団に囲まれてモリスは固まってしまっていた。









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