第4話
えーっと・・・さっきまで夢で一緒だったモリスが今目の前にいるんですけど。
どういうこと?
なんでモリスがここにいるの?私の家に?ってかこっちの世界に???
私の頭は、いきなり現れた目の前の人物の登場に混乱する。
少し落ち着い状況整理する為に、リビングのソファーにモリスと並んで座る。
何から話せばいいのか・・・。
モリスもいきなりの出来事みたいで戸惑っている。
「ここはどこなんだ?見覚えのない場所なんだが・・・」
そりゃそうだ。私が向こうの世界に行くのとは違う。モリスはこっちの世界のことは全く知らないんだから。
「しかし、なんでお前もここにいるんだ?お前も一緒にここに来てしまったのか?」
モリスは心配そうな顔を私に向けている。
私を巻き込んでしまったのかと心配してくれているみたいだ。
そういえば、さっきの夢では私はモリスのクラスメイトのようだったし。多分、マド学にも私と同じ顔のキャラがいたんだろう。超モブだと思うけど。
「巻き込んでしまったのは私の方なのかも・・・。ここ、私の家なの。私もなにがどうなってるのか分からないんだけど・・・確かなのはこの世界は魔術士学園ヴァースとは別の世界ってことだけかな」
私は自分が知る情報をモリスに説明した。
ちゃんと説明できてるか分からないし、モリスが信じてくれるか分からないけど。私も混乱してるし、まだ夢だと疑ってる。
「・・・・」
私の話を聴きながらモリスは考え込む。
やっぱり急にこんなこと話しても理解できないよね。いくら冷静沈着で頭のいいモリスでも混乱して慌ててしまうんじゃ・・・。
「なんとなく理解した。元の世界に戻る方法が今は分からないし、とりあえずこの世界で生活するしかないか。しかし俺はこの世界のことを知らなすぎる。まずは知ることからだな。色々教えてくれるか?」
真っ直ぐ私の目を見てモリスは頼む。
モリスから私にお願いされるなんて!!私の今後の幸せ全部持ってかれてるんじゃないんか。いや、それでもいい!
しかし、モリスの適応はや!状況理解してこの世界のことを知ろうとこの30分ほどで普通思うかね。私の方がテンパってるわ。自分の世界なのに。
・・・でも、ってことはよ?モリスがこの世界にしばらくいるってことよね?モリスには悪いかもしれないけどそれは正直めっちゃ嬉しい!
「もちろん大丈夫。私の知ってることは全部教えるよ」
モリスの気持ちを考えると喜んでいられないのだがつい口元が緩んでしまう。
私の夢が叶ったのだから。
とりあえず夜も遅いので、明日の学校に向けて私は部屋に戻った。モリスはリビングのソファーでとりあえず寝てもらうことにした。
明日の朝、家族になんて説明したらいいのか・・・。
でも、もしかしたらここまでが全部夢で朝になったらモリスが家からいなくなってるかもしれない・・・。
色々な不安を胸に私はベッドに横になりゆっくり目を閉じた。
朝になった。モリスのことが気になって二度寝なんて出来ず、いつもより早めに起きて学校へ行く準備をする。
モリスはいるだろうか。やっぱり夢だったとか・・・。でも、モリスが居たらいたでこの状況はどうやって親に説明したらいいのだろうか。
「おはよ」
学校へ行く準備を終わらせて、ドキドキしながらリビングに向かった。両親と兄がリビングにいた。
「おはよ。随分早いのね。いつもギリギリなのに」
クスクスと笑いながら朝食の準備をする毋。
モリスは普通にリビングのソファーに座っていた。
家族はモリスがここにいることに違和感を持っている様子はない。
モリスの方を見るとモリスと目が合った。
彼もどういう状況なのか把握できていないようで首を傾げている。
「えっと・・・お母さん。この人は・・・」
私は恐る恐る聞いてみる。
私にしか見えてないとかじゃないよね?
「え?・・・あぁ!紹介してなかったわね。この子は私の友達の子で護澄くんよ。昔、よく家に遊びにきてた洋子さん・・・覚えてないかしら。洋子さんのご主人が海外に転勤になったらしくて、洋子さんはついていくらしいんだけど、護澄くん中学3年生でしょ?せめて中学校は日本の学校で卒業させたいって。それでうちでしばらく預かることになったのよ。昨日、千代に紹介しようとしたんだけど制服のままぐっすり寝てたから起こさないでいたのよ。あ、それで今日からあなたと同じ学校に通うから一緒に登校して道教えてあげてね」
「え・・・う、うん、わかった」
とりあえず、モリスがここにいても不審じゃない理由がわかった。
私はモリスの側に行き、
「私、千代っていうのよろしくね」
とりあえず初対面のように挨拶をした。
「護澄です。よろしく」
モリスも空気を読んで自己紹介してくれた。
お兄ちゃんも私に続いてモリスに近づいてきて自己紹介していた。お兄ちゃんの顔がキラキラしている。弟が欲しいって言っていたから嬉しいのだろう。普段あんなに優しくないくせに・・・。
私は和気藹々と話している2人をそのままにして、私は朝食を食べることにした。
陽菜以外と登校するのはいつぶりだろうか。
今日から1人で登下校しないといけないと思っていたから少しありがたいけど。
しかも、あのモリスとだし。
・・・でも、まだ現実だと思えない。私の隣にモリスがいて一緒に登校している。しかも、一緒の家で暮らすことになるなんて・・・。
「この世界では魔法は使わないんだな。しかも、奇妙な乗り物を乗っている人もいる。なんなんだ?あれは」
自転車や自動車が珍しいのだろう。確かに向こうの世界は魔法でなんでも出来るからこういうモノは必要ないのだろう。私は、カバンに入れていた国語辞典を取り出し、パラパラとめくる。
「あれは自転車。乗員の運転操作により人力で駆動され走行する車両、または前輪と後輪の車輪を有し、一つまたは複数のサドルを備え、ペダル上の乗員の脚力で推進される車両。あれが自動車で、原動機を内蔵して車輪により陸上を自力で走行し。人やものを運び、あるいは各種の作業を行う機械の総称」
これが中学3年生の会話なのか・・・。コミュ症にも程があるわ!
心の中で自分にツッコミを入れる。
でも、完璧主義のモリスに変なこと教えられないし教えたくない。なんでも聞いてって言った手前知らないとかは言えないし。こんな質問じゃなく、もっと難しい質問とか聞かれたらどうしよう。
「あ、ありがと。分かりやすい説明だったよ」
「ど、どういたしまして」
変な質問が出ないうちにと、私はモリスを足速に学校へと連れていった。