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オタクですがなにか?  作者: 夏目 涼
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第1話

オタク。

日本で誕生した呼称。

元来はアニメ・ゲーム・漫画など、嗜好性の強い趣味や玩具の愛好者の一部が二人称として「お宅」と呼び合っていたことを揶揄する意味から誕生した術語。




教室で見ていた辞書を静かに閉じる。


私は、山田 千代。顔も体型も平均的なパッとしない平凡な中学3年生。

ただ人と違うと言えば、自他ともに認める“オタク”だということだ。

私は、漫画・アニメ・ゲームが大好きだ。学校なんかそっちのけで家でずっと没頭していたいがそんなこと親が許さない。高校受験も控えているので尚更大好きなことに時間をかけれないことに悩んでいた。


「千代!帰ろうよ」

「陽菜・・・」


声をかけてきたのは、親友の五十嵐 陽菜。幼稚園からの幼馴染だ。陽菜もオタクとまではいかないが、漫画・アニメ・ゲーム好きだ。オススメの情報を交換したり、漫画やゲームを貸し借りしたりする。


私たちは学校を出て家に向かって歩く。


「なんだか元気ない?趣味の時間が足りないからかな?」

「わかってるんじゃん。漫画もゲームもアニメもない人生なんて生きてる意味ないんだよね」

「まぁ、そう言わないで。高校受験は人生を左右するよ〜?どこ行くかもう決めたの?」

「ん〜・・・趣味を邪魔されないならどこでもいい」

「そんなので決めていいの?!」

「だって〜・・・」


たわいもない話をしながら陽菜と帰る日常。

そんな日が私は気に入っていた。でもその生活も今年で最後。高校は陽菜と違う学校に通うことになる。

陽菜は医者になることが夢だ。私とは違い、ちゃんとした目標がある。だから医大への合格率の高い、頭のいい学校に行くことに決めている。

私は夢もなく、頭も運動神経も平均的。部活もしてないし、他人に自慢できる取り柄なんてない。


「まだ3年生になったばかりだけど、ちゃんと考えないと」

「うん・・・」


私のことを心配してくれているのはわかる。

でも、将来の夢が何もない私には“自分の将来”という道は見えなかった。






「ただいま〜」

「おかえり」


家に着き、リビングに行くと母親が夜ご飯の準備をしていた。

匂いから想像するとカレーだろう。


「お兄ちゃん、野球の試合が近くて部活で遅くなるって。お父さん帰ってきたらご飯にするから先に宿題しなさいよ」

「はーい」


母親に返事をしながら重い足取りで自分の部屋に向かう。

カバンを勉強机に置き、服を部屋着に着替える。


「はぁ〜、勉強なんて・・・お互いに受験生は辛いねぇ」


私は、部屋に貼ってあるポスターに向かって話しかける。

最近ハマっている漫画『魔導士学園ヴァース』。魔法を勉強する学園ストーリーの漫画だ。その中でも、主人公のライバル、モリスが私のお気に入りだ。この漫画のストーリーも今、試験の話になっているのだ。

好きなキャラクターも頑張っているのだ。私も頑張らなくては。



「モリスも頑張ってるし、私も頑張るか〜!」



とりあえず宿題をカバンから取り出し、気合を入れて机に座った。




『頑張ってね』

「ん?」


なんだかモリスの声で声援が聞こえた気がした。

いよいよ、私の頭もおかしくなってきたのかもしれない。

でも、応援してくれる空耳なら全然歓迎だが。

ポスターを見るが、特に変わった様子もない。


「よーし!気を取り直してっと」



私は顔を軽く叩き、机に向かって宿題に取り掛かった。






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