春が香る
晴れ。空はまだ、冬特有のぼやぼやした青に染まっている。
透き通った氷は溶け、固くこわばっていた草本は、優しくほぐされ、汗をかいている。
水底を覗いてみれば、光の格子が、うねり、重なり、なんだか捉えどころのない、おかしな色彩を放っている。水面に目を移してみれば、照りつけた日の光が、美しく水面を煌めかせ、網膜を焼いた。
川辺に座り込む。暖かな日差しが、心を包み、時折吹き付ける冷たい風が、適度に意識を覚醒させる。
草木が風に揺れ、水が静かに流れる、遠くで車が走り去る。冬の空気は、とても澄んでいて――
牧歌的に、平らかに、時間がただ、流れる。
ふと、草木が青々と茂り、獣が、鳥が、魚が、昆虫が、思い思いに闊歩する。そんな、生き物たちのパレードが待ち遠しくなった。
微かに春が香る。
春は、もう近い。