表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

あの木いつか燃やしてやる

「うわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


「やめてえええええええええええええええ!!!!!!!!!」


「来ないでえええええええええええええ!!!!!!!!」


「おおおおおおお落ち着いて!!!わわわわわ私達ならこんなやつら敵ではありませんんんんんんんん!!!」


「ならお前がやれえええええ!!!!!」


今、俺達は、

目を疑いたくなるほどの大猪の大軍に追いかけられている。

なぜこんな事態に陥っているかというと・・・


話は少し前に遡る。


◇◇◇


世界に大災厄が起きるとき

女神は世界から勇者と呼ばれる人間を選ぶ

その人間は女神から祝福を与えられ

人間の限界を超えた力を得る


この世界中に語り継がれる有名な物語だ。


しかし、大災厄など訪れたのは途方もないほど昔のことであり、もはや物語は伝説としてお伽話となっている。


そんな中、人々は平和に暮らし、穏やかな日々を送っていた。


この俺、ツバサもその中の1人である。


「ツバサー!そろそろ開演だから休んでいいぞー!」


俺を呼ぶのは一つ上の兄、カケルだ。

兄弟家族は皆黒髪でどこぞの国の出身の証らしい。

俺の家は家族みんなで各地を回り旅芸人をして生計を立てている。いわゆるサーカス団だ。


「わかったー!」


全員が一丸となって披露する技や演技は代々受け継がれて洗練されており、この世界でウチの家族はちょっとした有名人となっている。

立ち寄る町や村、どこに行っても満員御礼だ。


俺の家族はみんなそれぞれ役割ごとに出演している。

舞台に立たないのは俺だけだ。

チケットの売り子の仕事が終わった俺は休憩がてら散歩をすることにした。

今いる村の近くには森林浴にうってつけの木漏れ日が心地よい森があるのだ。


「俺もみんなと一緒に舞台に立ちたいなぁ」


なんで俺が1人だけ舞台に立てないのか

その理由はこの世界のシステムにある。


この世界にはステータスとスキルというものがある。

ステータスには自らの身体的な能力が示され

スキルは技能が可視化したものである。


俺の一族にはみんなサーカスに関連したスキルが発現している。

先程の兄には【飛翔】これは空を飛ぶ、一族の中でも稀に見る珍しいスキルが発現した。

他にも、【魔獣使い】【火炎操作】【豪腕】などなど…

戦うことに秀でた冒険者や傭兵、騎士などの職業の人達が羨む珍しいスキルが結構出るのだ。


そう。

俺にもスキルが発現している。


「はぁ。これさえなければ俺だって…」


ステータス画面を見ると溜息が出る。



[ステータス]ツバサ Lv5 芸人見習い


体力 15

守力 10

魔力 3

速力 12

運力 1


スキル

【不運】【不器用】【剣術初心者】



【不運】と【不器用】

この2つのスキルのせいで、演技の練習をしてもなかなか習得できず、せっかく覚えても不運なアクシデントに見舞われ、舞台をめちゃくちゃにしてしまうのだ。

よって、いつまで経ってもチケットの売り子なわけで。


一応これでも珍しいレアスキルの2つだ。

だが、例えレアスキルでも必ずしも使えるとは限らない。


ちなみに、スキルは技能を身につければ後付けもできる。

舞台に立てない俺は、せめて開演中に魔物からの襲撃を防ごうと思い、剣を覚えた。

…【不器用】のせいで時間はかかったが。


剣の練習をしているうちにステータスが成長した。

一般的な成人男性でステータスはオール10程度だ。

そこらの一般人には負けることはおそらくない。


しかし、俺は家族みんなと舞台に立ちたいのだ。

叶わぬ夢と分かっていても。

ステータスが上がっても意味はない。


「…そろそろ帰るか。」


森に到着し、物思いに耽っていたところで太陽が傾き始めているのに気がついた。

そろそろ帰らないと舞台が終わってしまう。


歩き始めて数分。


「そんなに深くまで入ってきた気はなかったんだが…」


森に入ってすぐの場所で森林浴をしていたつもりが、思っていたより奥まで来てしまっていたようだ。

なかなか森から出ない。

さらには草木まで激しく生い茂ってきており、徐々に視界も悪くなる。


「うわっ眩しっ––––––」


一瞬暗がりに慣れていた目が光に慣れていく。

茂る草木をかき分けて進んだ先には、淡く緑に光る直径100メートルはある大木がそびえていた。


「なんだこりゃあ…」


開いた口が塞がらないとはこのことで、俺は目の前の事実に困惑していた。

確かに森の中には入ったがこんな大木があれば森の外からでも分かる。


明らかに異常。夢ではないことは分かるが…


『よく来た。選ばれし者よ』


「なっ…!!!」


どこからか話しかけられた。

頭の中に直接響いてくるようだ。


「誰だ!姿を表せ!」


惚けていた思考を警戒のために引き戻す。


『落ち着くのだツバサよ。我は汝に危害を加えるつもりはない。ふむ、この方が話しやすかろうか。』


なんでこいつは俺の名前を?

警戒は解かず疑問を浮かべていると、目の前の大木が光始めた。

光は辺りに広がり、徐々に収束すると俺の前に人の形を作り出し、やがて光は収まる。

白い羽が生えた10歳くらいの金髪の幼女がそこにいた。


『やぁ。選ばれし勇者よ。ようこそ世界樹の森へ☆』


…ノリ軽いな。


『実はな。今世界が大変なことになっておるのだ☆』


どうやらこの羽の生えた幼女はこの世界樹と呼ばれる大木の女神らしい。

女神は世界に危機が訪れると勇者を選び力を与える。

誰でも知ってる有名な物語通りだ。

本当にあったのか。


「なら俺は力を貰えるのか?」

『そうじゃい☆』


…だから軽いな。


『さらに!今回はひじょーに!過去類を見ないほど大きな災厄が世界を襲う!よって!今回与えられる力も過去の勇者とは比にならないくらい大きなものとなるだろう☆』


「おお…!俺の人生17年の幸運が今ここに…!俺の人生はここからスタートだぁ!!!」


今まで不運だったのは、きっとこのときのために違いない。

神は俺を見放さなかった。


『だが、一度勇者になってしまえば災厄と戦わねばならぬ。数多の苦難も待っておろう。お主にその覚悟はあるか?☆』


確かに。しがない旅芸人として生きてきた人生。

誰かを救うことなどできるのだろうか。

否!!もう何もできない人生なんてこりごりだ!


「俺は力が欲しい…災厄が訪れて家族が危険に晒されているときに何もできないのは嫌だ!


俺は!世界のために災厄と戦う!」


『よく言った☆ では、お主に世界最強の力を授けよう☆ この力で世界を救ってくれ☆』


女神が両手を広げると、優しい光が俺を包んでいく。

体の中に入ってくる。心地良い。


俺の中に、光が収まる。


『どうじゃ?勇者になった気分は?☆』


「力が…湧いてくる。今なら誰にも負ける気がしない!」


『そうじゃろうそうじゃろう☆ 今回は特別サービス!基礎ステータス100倍!成長補正!成長限界突破!さらに習得スキルは全て最高ランクに!エクストラスキルまでついて、ジャ○ネットタ○タもビックリなのじゃ☆』


「おお…まじか…」

『さっそく自分のステータスを見てみると良いぞ☆』


「今更だが、少し半信半疑な気持ちもあったけどこの感覚はガチだな…。」


ではお言葉に甘えて…

ステータスオープン!


[ステータス]ツバサ Lv5 勇者


体力 1500

守力 1000

魔力 300

速力 1200

運力 100


スキル

【超不運[極]】【超不器用[極]】【剣聖】【Lv成長率倍加】【限界突破】【超回復EX】【不屈の心EX】


「待て待て待て待て

おかしいだろこれえええええええええええ!!!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ