ちょうどいい雨
ちょうどいい。
晴れでもなく、曇りでもなく、
土砂降りでもない、雨模様。
傘を差して、ターミナルへの歩道を
ゆっくりと歩いてゆく。
約束の時間には、まだ間があるから。
交差点の角にある地下街への階段で、
Nは待っている。
先月、話したきりだから、
どんな様子か、あれこれと
尋ねてしまうだろう。
週末にあるライブのこと、
調子が悪いと言っていた
体のこと、
それに、仕事の具合とか。
Nとは、長いつき合いだ。
ただ、しょっちゅう会う
わけじゃないから、
二人の密度は濃くない。
人との出逢いや、つき合いは、
さらりとしていながらも、
大切になることがある。
何かの弾みで、ずっとそばで
過ごすことになるかもしれない。
ちょうどいい雨模様は、
傘を差して歩ける。
ゆっくりと歩きながら、
Nのことを考えた。
傘の中で、ゆっくりと。