ハッキング
僕はあの後まっすぐに自分の執務室に戻った。
僕に相談もせずに話を進めていたことに僕は怒りを覚えた。それに、何故イルニ国を侵略するようなことになったのか理解できなかった。そして、あのケリー少将の鋭い眼光が僕の秘密を知っているように見えてしょうがなかった。…はぁ、気分転換をしよう。
机の上にのせておいた書類やパソコンをどかし、机の横にあるスイッチを押した。キュイーンと音を立てながら机がタッチパネルに変わる。僕は溜まっていた通知に目を通しているうちに、1つ懐かしい人からメッセージが届いていることに気付いた。
ポチッとボタンを押すと、相手を呼び出し中、という画面が表示される。そう待たずに相手の顔がパネルに表示された。
「久しぶりじゃの、アシュトン。」
「元気でしたか?おばあ様。」
「おかげ様でぴんぴんしとる。」
「そう、なら良かった。」
僕はおばあ様に笑って見せた。
「…そうじゃった、アシュトンに聞きたいことがあってのう。」
「なんです?」
そう僕が促すとおばあ様はもったいぶるように咳を1つした。
「こほん、まぁ、とある情報筋から聞いたことじゃがのう、三大国がイルニを侵略しようとしているってのは本当かね?」
「……あの、おばあ様?そのとある情報筋というのは、皇子のパソコンとかいう名前の方だったりします?」
「…そういう名前じゃったかも知れんのう。けど、ひとまずそこはおいといてじゃのう」
…置いとくわけがない。というより、一体皇子のパソコンのセキリュティはどうなっているのだろう。何故こんなに簡単におばあ様がハッキングできるようなものを王は皇子に与えたのだろうか。
「はぁ、またハッキングしたんですか?」
また頭痛がぶり返してきたかもしれない。
「そうじゃ。」
誤魔化すこともせずに胸を張るおばあ様は僕に褒めて欲しいのだろう。…一体何処の誰が自分の仕えている主のパソコンをハッキングした輩を褒めるんだか。まぁ、止めない僕にも責任はあるけど。
「…はぁ、分かりました。で、質問の答えですが僕に黙秘権というものはあるのでしょうか?」
「ある訳がなかろう?そもそも、お前は何故官僚になったのじゃ。」
「…本当ですよ。」
ぼそり、と僕は答えた。えっ、とおばあ様が耳に手を当てて聞いてくるのから、精一杯叫んで差し上げたら、酷い孫じゃのう、と恨めしそうに言われたが、聞こえないふりをした。何故、主のパソコンをハッキングした奴に優しくしなければいけないんだ。
「…やることは分かっておるな?アシュトン。」
「えぇ。」
僕が頷くのを見て満足したらしい。おばあ様はいきなり通信を切った。今日何度目か分からない溜息を吐きながら僕はパネルの電源を切った。
そして、壁に向かって、隠しておいたピストルで撃った。
多分また1時間後に次話を投稿すると思います。




