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アパートに住んでいる

作者: 等々

この夏に急遽仕事の関係で都内に住むことになった。

住む期間は2~3年、社宅や寮は満室なので自分で住むところを探さなくてはならなく成りました。

まあ、その分の手当てを出してくれるというのでよしとしましょう。


荷物もそんなにないし寝に帰るだけになりそうなので、できるだけ安い部屋を借りたいと思い色々な不動産を見て回った。


不動産屋さんと話すとき、こんな条件で探してもらえるよう頼みました。


「ーー線の駅に近いかーー駅の近くがいいです。

徒歩で15分以内

お風呂はユニットでもいいです、最悪なくても構いません。

安ければ何でもいいのでお願いします」


ーー線が使える駅が近い物件は空きが少ないのか扱ってる不動産がなかなか見つからなかった。


私は大手の不動産から個人経営の不動産に狙いを変え片っ端から話を訪ねていきました。


そのおかげでようやく望んだ物件を紹介してもらえた。なんと月一万で風呂トイレ別、家具も備え付けだという。

アパートは六部屋あり上と下に三部屋づつ

自分の紹介された部屋は階段を上がって一番手前の部屋だ。


こんな旨い話があるものかと驚いたものだ。


詳しく聞くとやはりというかなんというか事故物件というやつでここで、何人かなくなった方がいるらしい。

その上入居された方は大抵二週間もたず逃げるように引っ越しをしてしまうとのこと。


私はこの手の話が大好物で、話を聞きながら色々な怪談を思い出していた。


ひとまず大家さんを紹介してもらい一緒に事故物件を見に行く。


小綺麗ではあるのに重苦しい雰囲気をまとっていていかにも『出るぞ』といったアパートだ。


大家さんについてアパートの敷地に入る、二階の窓から男の子がこちらを覗き混んでいるのに気づき笑って手を振ってあげる。


ピシャリと音を立てて窓を閉め奥へ引っ込んでしまった。


そのまま大家さんについて二階に上がる。

段数を数えながら階段を上る。


1, ,2.3,4,,,,,,,,,,,,,,,,11,12,13


階段は予想していた通り十三階段


魔の十三階段は有名な話だろうか?

まあ、その話ははぶくとしてこれで入居者が二週間持たない理由は予測がついた。


1日づつ近づいてくる系の怪談なのだろう。

夜中に階段を上る足音が聞こえる。それが一日づつ上がってくる段数が増えていき14日目で部屋のなかに入ってくるというオチだ。



芸人さんが怖い話を語る番組で似たような話があった。

たしか語り手の知り合いの話で、自分と同じように安いアパートを探していた主役はおすすめしないと言われたアパートに入居した。

主役の前の入居者は最終的に窒息死していて、日に日に近づく足音に耐えられなくなった主役はついに引っ越す決断をし、念のためお守りやお札を買い漁り友達と引っ越す準備を進めていたが、疲れのためか眠ってしまい14日目を迎えた。

押し寄せる足音、買ったお守りを人間では不可能なくらい押し硬められ喉に詰められて危うく死にかけた怪談だった。


そのあと大家さんと一緒に部屋を見て周り不動産に戻って契約することとなった。


こういった物件に一度住んでみたかったことと敷金礼金も大した額ではなかったこと。

会社から数万ほどの手当てがつくこともあり、いざとなれば引っ越すことを念頭にいれて契約することにした。


猶予は二週間、怪談きいてこうすればよいのではないだろうか?

こうしていれば助かったのではないか?

など策を二週間のうちに試していこうと思う。


そうだ、最後にこれだけは聞いておこう。


「すみません、あのアパートに自分以外の入居者さんてどれくらいいますか?」





電気・水道・ガスの契約をすませ実家に預けていた荷物を送ってもらうよう連絡する。

荷物が届くまでに何日かかかるそうなのでその間は坐古寝になりそうだ。


そのまま寝るには少し埃っぽいので掃除をすることにする、そのためにもまずは必要なものを買いにいこう。



ぞうきん、バケツ、洗剤、歯ブラシ、塩、酒、線香、小皿、コップ、花、お弁当、お菓子



こんなところだろうか?


試してみたかったことを早速試していこう。


まずはアパートの方に挨拶だ。


「今日引っ越してきました、ーー号室のーーです。よろしくおねがいします。」


ノックをし、声をかけ、花と線香と酒を置き手を合わせることを5度繰り返す。

子供が覗いていた窓にはお菓子をはさんでおいた。


なぜこんなことをするか?

それはこのアパートには自分以外住んでいなかったからだ。


粗品を揃えるために入居者の人数を聞いたところ誰も住んでいないことを大家さんに教えてもらった。


お隣へのクレームを大家さんに相談したら「隣には誰もすんでいない」なんてオチの怪談のネタバレをしてしまったようだ。


少しもったいなかっただろうか、まあ、なんにせよ無駄に粗品を買うことにならずにすんだのだから得ではあるだろう。


だけれど、他の部屋に何かがいるのは間違いない、なので供養をして恩を売っておくことにしたのだ。


霊から身を守ってくれるのは神様だったり仏様だったり守護霊だったり、つまり同じ霊的ななにかだ。


霊は煙を食べるというし

酒も清める効果があるしお供えとしても鉄板

花も供養には欠かせない

お菓子はなんとなくだ


供養のために花を手向ける理由で

『あの世への生き方がわからなくなってしまった霊が枯れて出た花の魂を目印にあの世へいけるようにするために飾る』

って考えを個人的に気に入っている。

伐られて飾られてあとは枯れるのをまつだけの花が、枯れることさえ意味があるのだというようなこの解釈が好きなのだ。


供養という名の賄賂を送ったところで次にすることに取りかかろう。


住む部屋に不浄なものがたまっていたり先に住人の幽霊でもいたらたまらないので部屋を清めることにする。


清める方法の一つ、掃除だ。部屋のなかはもちろん、ベランダから玄関先までざっくりと掃除をすませ日の光を部屋の中に入れる。


掃除が一段落する頃には日がずいぶんと傾いていていた。


自分はあわてて買ってきた小皿に盛り塩をし、

階段の登り口と降り口を塞ぐように両端に一つ、

部屋の四方に1つずつ、

アパートを囲うように四方に一つずつ置いていった。


塩には清めの力があり、それを使って囲い境界をつけることで結界をはる。

怪談話でも登場するごくごくありふれた霊への対処法だ。


気を付けなければいけないのは、この結界出入りをできなくするだけなのではいられてからでは意味がないのだ。

掃除して清浄にしてからと思って後回しにしたせいで危うく夜になるところだった。


1日目はこれくらいにして部屋に戻り晩御飯を食べて早めに寝ることにする。

盛り塩はちゃんと効くのかそもそも本当に幽霊は出るのか、、、と異変があることを期待しつつブランケットをかぶりその日は寝た。



その夜、異変に気づき目を覚ます。


ジャリ、ジャリ、ジャリ


「いるな」


階段の近くをうろうろと歩き回る気配、、、

砂利を踏む音がきこえるということは階段には入っていない。


盛り塩がきちんと役目を果たしていることにひとまず安心した。

安心ついでに写真に納めておこう。

直接目を合わせると呪われそうな気がしたので窓の隙間からカメラだけを出して写真を何枚か撮った。


そこにはボサボサの黒髪に目と口が塗りつぶされたように黒い、人のようななにかが写っていてこちらを憎らしそうに睨み付けていた。


まさか初日から完全に対策されているとは夢にも思っていなかっただろうとほくそ笑み、気分を良くして二度寝しました。


朝になり様子を見るために家を出ると玄関先に昨日供えたお菓子の袋が置いてあった。

「律儀だな」と、となりの部屋に目をやると窓の格子ごしに男の子と目が合いました。

男の子は慌てたように引っ込み窓を閉めてしまいました。


照れ屋さんかな(´ω`*)


一先ずお供え物を見て回ると二階の二部屋は変わりなく昨日置いた状態で、酒が少し減っていたものの少量なのでおそらく蒸発したのだと思う。

差し込んだお菓子以外変化はなかった。

対して一階はというと、、、花は萎れ酒は無くなりコップにヒビまではいっていました。

食い荒らされたという印象を受けるような無惨な状態で置かれていて、下の階の人たちとは仲良くなれそうもないことがはっきりした。


次は盛り塩の様子を見てみる。

アパート全体を囲ったものに変化はなく、部屋に置いたものも特に変化は見られなかった。

だが一階の階段口に置いた塩は盛り塩の山の先が黒ずんでいた。


こんな風に塩が黒ずむことなんて見たことがない。

けれど『八勺様』などの怪談ではきいたことがある現象だ。


八勺様のお話は謎の存在『八勺様』にみいられた少年が生きて夜を越すために盛り塩で結界をはった小屋のなかで一人夜を越すというもので、その間絶対に小屋を開けてはいけないといわれるのだが、知り合いの声に化けた八勺様に騙され小屋の扉を開けてしまう。

すると盛り塩がジュッ!と音を立ててみるみる黒くなり結界が破られて襲われる。

ざっくりいうとこんな話、逃げ切ったパターンもあるみたいだがこの話はいま関係ないな。


なので黒くなってしまった盛り塩はとっとと取り替えることにする。

取り替える瞬間をついて入られても困るので先に新しく盛り塩してから黒ずんだ方を捨てる。

勿体ない気がしないでもないが怨念が染み付いていそうなので再利用はしたくない。


面白いことを思いついた。

買い出しついでに家の近辺を巡ってみた。

思いのほか時間がかかり帰ってきたのは昼過ぎだった。


根本を解決するためにお寺にいって札をもらい、こちらを狙うアレを供養するために花と酒、菓子に果物、線香を供える。少し豪華にしてみた。

また、うろちょろしていた場所に酒を振りかけたり塩を撒いて清めておく。

そして買い足した小皿を階段の各段に並べ盛り塩をする。

これが今朝思いついた面白いことである。

盛り塩の多重結界w、なにも要所にしかおいてはいけないルールがあるわけでもないので13階段すべてに設置してみた。


ほかの入居者がいなくて助かった、普通に迷惑だし下手したら通報されそうだ、、、


また隣の窓にお菓子を差し込み部屋に戻る。


三時頃に荷物が届き荷ほどきをすませ、出勤の準備を進める。


そうこうしているうちに日もすっかり沈んでしまったので手早く晩飯を食べ早めに眠る。


明日はどうなっていることやら


少し楽しみにしつつ眠りについた。



二日目の夜、また異変に気づき目を覚ます。


ジャリ!ジャリ!ジャリ!

ジャッ!ジャッ!


昨日よりも荒い足音を響かせている。

どうやら塩と酒をまいて盛り塩を増やしたことにご立腹のようだ。

効果有りっと、これから塩と酒をまくのが日課になりそうだ。


酒もったいないな、スプレーにでもつめるか?

そうだ、ファブリーズで除霊できるか試してみよう。


新しく試したいことをメモしたところで再び眠りにつく。


そういえば、異変を感じてから足音が聞こえなくなるのは2時から3時の間だった。

いわゆる丑三つ時、もし残業で帰るのがこの時間帯になりそうだったら会社で寝ることにしよう。


朝起きて、身支度を整え家を出る。

昨日と同じくお菓子の袋が玄関先に置いてあった。

美味しかったかな?ほっこりしつつごみを片付け現状を確認する。


階段前の盛り塩は昨日よりも若干黒ずんだ部分が多くなっていた、ので手早く交換する。

これより上の盛り塩は変化なく綺麗なままだったので現状維持。


お供え物はというと何度も踏みつけにしたのだろう、花もコップもお菓子もぐちゃぐちゃに潰されていた。


「勿体ないことをするなよ」


ムカッ腹立がたったので辺り一体に塩をまき、酒をふりかけ、ファブリーズをしておいた。


ふんす!


多少気がはれたのでそのまま出社する。


ふとアパートを見ると男の子が窓の隙間から小さく手をふっているのがみえた。


ほっこりした、次はオレンジジュースをプラスして供えよう。


こちらも小さく手をふりかえし「いってきます」と呟いて会社に向かった。



夜の九時、会社から帰宅している。

まあ、残業が当たり前の職場だと事前にわかっていたのでどうということはない。


勤務時間と仕事内容はブラックだが、きちんと残業代だけは出るので妥協すべきだろう。


帰りつく頃には十時をまわってしまうだろうな。


弁当と忘れずにオレンジジュースとお菓子を買って帰宅する。


一応警戒しながらアパートの敷地にはいる。

まだアレは活動していないようだ。


部屋に入る前に隣にジュースを注いだコップとお菓子を置き、声をかける。


「ただいま、お菓子とジュース、家ノ前に置いておくからな。

ゴミは玄関にかかってる袋にいれといてくれ」


寝ているかもしれないのでそっとささやき、レジ袋を自分の玄関にかけて家にはいった。


帰ってからはいつもと同じように晩飯を食べて風呂にはいって早々に眠る。


三日目の夜

外から呻き声が聞こえる。


う~う~う~


どことなく苦しそうに感じた、写真を撮ると階段の入り口にすがるような格好の初日に撮ったナニカが写っていた。


確実に弱っている!ファブリーズで弱っているw!?

直接ファブれば退治できるんじゃないだろうか!?


いやいや、まてまて、はやる気持ちをおさえ冷静さを取り戻す。

こういう展開にダブるものが脳裏によぎる

ゾンビなどのパンデミックもの、妖怪などのホラーものにお馴染みの展開だ。


効果があるとわかり、ここぞとばかりに攻勢にでて相手を怒らせ手痛い反撃を受けたり

銃を手に入れ気を大きくした不良がゾンビに乱射して大群に囲まれて喰われたり、、、


ゾクリッ


もしここでファブリーズ片手に部屋からでればフィクションの二の舞になるだろう。

だが、本当に除霊仕切れるチャンスだとしたら勿体ない。

そう思ったのでこういう策を打ってみた。


「あっはっは!悪霊がファブリーズで弱ってるよwかっこわりぃwww」


出来る限り腹のたつ言い方で耳を済ませば聞こえる程度の音量で煽ってみた。


ガァァァァァァァァ!!!!!


怒りの咆哮が響いてきた、やっぱり全然元気だった。

ガッ!ガッ!ゲシッ!と蹴る音が聞こえるのできっと結界を壊そうと躍起になっているのだろう。


お供え物の事といい、この悪霊足癖が悪いな、幽霊で足なんてないはずなのに


なんてことをクツクツと、笑いながら考えているといつの間にか眠りに落ちていた。



あれからだいぶたった。

色々なことを試した。


四日目の朝に盛り塩結界の一段目が完全に黒くなり結界が破られてしまったのをきっかけに、《怒らせたので結界の破壊が早まった》のか《日に日に力が増すのか》の検証をしたり


検証の結果、日に日に結界を壊す速度は早まる。

挑発するとさらに早まる。

だが、酒や塩をまいておけば若干だがそのスピードは抑えられるという結果が得られた。


除霊を試みるために敷地内にあるだろう遺品や遺体を探してみたり


中古のCDプレイヤーを見つけたので階段先でお経をエンリピさせたり


トラップを張って直接ファブリーズを浴びせられないかがんばってみたり


残業が続き二日帰れなかった日に結界が四段分破壊されてたり、、、まあ、塩・酒・ファブリーズを過剰にまいてから設置し直したら一段目にアレが戻っていたのだが


まあ、色々だ、色々試してみた。


お隣さんにも知育菓子や指人形、折り紙、コマ、ぬいぐるみ、クレヨン、画用紙

帰りに祭りをやっていたのでわたあめとお面

色々なものを買い与えたりした。


折り紙をあげたときなんか、朝玄関によれよれになった折り鶴が置かれていた。


こんなにいい子なのになぜまだ成仏出来ていないんだろう?

育児放棄したお母さんを待ってたりしたのだとしたら悲しすぎる。

この二週間を乗り気ったらこっちに注力しよう。


そんなこんなで今は14日の夜だったりする。

怪談で当事者が生きているものは大体最終日に友達と行動を共にしている。


それに倣って引っ越し祝いもかねて東京住まいの旧友に声をかけて宅飲みをすることにした。


もうそろそろで深夜の二時、アレの現れる時間だ。

どんなに怒らせてもまだ結界は最大で四つまでしか破壊されていない。

『何があっても大丈夫』

その気の緩みが最悪の結果を招いた。


二時になる少し前、なんで塩を飾っているのかを聞かれ素直に魔よけの結界であることを話してしまった。


お酒も入っていたので正常な判断ができていなかったのだろう。

まるで怪談でも語るかのようにおどろおどろしく伝えてしまい、もうそろそろヤツの出る時間で今日が肝心の14日目であると語った。


すると友達は顔を青くしてすぐ帰るとおぼつかない足取りで帰ろうとする。


だいぶお酒も入っているし危ない、今からじゃあ電車もないしタクシーだって捕まるか怪しいぞ!


何度呼び止めても聞く耳をもってくれず帰ろうとする。


階段前で「あと一時間だけだから」と手を引っ張り説得を試みたが振り払われてしまった。


もうどうしようもない、仕方がないと階段を下りる友人に「気を付けろ」と声をかけようとしたその時


ずざざざざざ!


派手な音をたてて階段を滑り落ちてしまった!

幸い頭を打った様子はなく痛いとうめいている。


ーーーーニタリーーーー


誰かが笑った気がした


ほっとしたのもつかの間ーゾクリッーと体の芯から熱を抜かれたような悪寒が襲いその場で動けなくなってしまった。


階段の下でアレが友人を見下ろしているのが見える。

声がでない、体も動かず、目だけを見開きソレを見続けるしかできなかった。


だが、アレは友人になにもせず、くるりとこちらを見るとニタリと不気味な笑みを浮かべた。

初めて肉眼で見るその顔は、面に漆喰を塗りつけ目と口に穴を空けたようで

その穴はどこまでも深くどこまでも暗い、


一歩、、、一歩とこちらに近づいてくる!

一段一段迫ってくる!

さっきあいつが落ちたときに結界が壊れたのだ!


無事なのは!?必死に目を動かし


いち、、、にい、、、、さん


みっつ、、、、ダメだ!

アイツは昨日二つ結界を壊している。

ここじゃダメだ!

自分を殺す絶好の機会、ソレを逃すほどアレは甘くない!

確実にみっつ目も壊してここに来る!


ここではダメだ!


へや、、部屋だ!部屋にも結界は張ってある!


凍りついたように動かない体に必死に力を入れる。

うごけ!うごけ!うごけ!

すると徐々に熱がもどり手足が動く。


ずちゃ


体が力なく崩れる、うまくからだが動かない、体が歩き方はおろか立ち方まで忘れてしまったようだった。


思うように動かない手足を必死に動かし扉を目指す。

幸い扉は開けっ放しだ!

這いつくばってみっともなく手足を動かす。



ジュッ!



後ろから結界が壊れる音がする。


急げ!急げ!


自分の体に命令するようがむしゃらに手足を動かす。



ジュッ!



あとひとつ!あとちょっと!あとちょっとなんだ!


玄関まであと少し、このままなら間に合う!




ガシャーンッ!




激しい音をたてて扉が締まる。

カタカタと震える体をよじり後ろを向く、、、不気味な顔が見える。

張り付けたような笑みをさらに歪めて笑っている。


ーーーもうダメだ



ぎゅっと目をつぶり最後のときを覚悟する。




ジュッ




最後の結界がやぶられた、、、くそ、失敗した、油断した、くそぉ、くそぉ、くそぉ


後悔と未練と悔しさと恐怖が頭を埋める。






いつまでたっても襲われる気配がない、、、目を開けた瞬間アイツの空っぽな目がこちらを覗きこんでいるのではないか


恐怖を飲み込み、目をゆっくりと開ける。


目をあけるとそこには子供がたっていた。


お面をかぶり折り紙の剣を持ってアイツの前にたっていた。

両手を広げ守るように


アイツは怒ったような地団駄を踏みなにかを叫んでいる。


聞き取れない、意識が遠のいていっているのか、変に遠く聞こえる。


男の子は変わらず両手を広げどこうとはしなかった。

時折ダメだというふうに首をふっている。

空がいつの間にか白んできた。


朝だ。


光に照らされ、ヤツは水に墨をたらしたようにボヤけ、薄まり消えていった。

男の子はこちらを向くとすぅ、と消えてしまった。


お面をしているのに笑った気がした。


あれから一年がたった、まだあのアパートには住んでいる。

アレはあの夜から現れなくなった。

男の子も同じく姿を見せなくなった。

お菓子を置いてもジュースを置いてもなくなっていることはない。

ただ、時々折り紙の空袋がポストにいれてあった。

その度に新しい折り紙や折り紙の本をいれておいてやった。



お盆には初めて送り火を焚いた。



どうか、あの子がちゃんとあの世へ行けるように

ネタバレというか裏設定というか後日談?


折り紙を差し入れし続けた行動は少年が成仏するための伏線です。


千羽鶴を作って願掛けするのをイメージしていて場面だけ抜き出すとこんな感じ?


となりの部屋に入ると千羽の鶴がぶわっと舞い上がり、その中にあの子供と化け物が手を繋いで立っていた。

子供がこちらに気づいたのか振り返り手を振る。

それに気づいた化け物が合わせるようにこちらに振りむくと優しそうな笑みを浮かべた女性に変わり、ペコリとお辞儀をすると向き直り子供と一緒に光の方へ歩いて消えていってしまった。


っという風に成仏していただく予定でした。


ただそうなるとアレはなんだったか、の説明などをしなくてはいけなくなりすっと話を切ることが出来なかったため本文で終わらせました。(自分がだいぶ胸くそ悪い経緯を書きたくなかったのもありますけど)


ほんとは千羽鶴を折りきる前に主人公が会社の都合で引っ越すことになり、お隣に報告にいくと子供に泣かれてしまい必死に謝り「なんでもあげる」「また来るから」と説得するのですが泣き止んでくれず、気がつくと後ろにはまたあの化け物が、、、、

というバットエンドの分岐を考えていました。


言いたかったことも全部かいたので以上となります。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

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