表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

地獄の三丁目には中古ショップがある

作者: 高杉祥一

 地獄の三丁目には中古ショップがある。

 そこで扱われているのは、現世での居場所――人生であった。店内の棚には今生きている人々のポートレイトと簡単なプロフィールが並んでおり、亡者はそれを買い取るとその人物に成り代わって現実に生き返ることができるという仕組みだ。

「生きている間に魂が空っぽになっちゃう人が結構いるんですよねー」

 仕入れ人の見習い死神は重たげに鎌を担いで苦笑する。鎌はまだ一度も使った様子が無い新品同様のものだ。

「ですんでうちの店で扱ってるのにキズモノは一切ございませんよ」

 店主の悪魔は店のカウンターで角を磨きながらそう説明する。

「一から生き返って生きていくのに比べたら、ある程度立場がある分楽に生きられるんじゃないか!?」

「上手く行けば生まれつきじゃどうにもならない上流階級入りだってできるかもしれないぜ!」

「地獄に落ちたけど金持ちに転生して一発逆転!?」

 亡者達は口々にそう言って、目をぎらつかせて棚の間を行き来する。

 好物件はまるで垂らされた蜘蛛の糸のように奪い合いになり、そして時折争いを遠巻きに見てほくそ笑んだ者が、掘り出し物を買って現世へと上がっていった。

 生まれ変わるべく地獄で試練を受けている亡者達もこの店は気になるのか、店の前の通りからチラチラと覗き込む視線は絶えない。しかしある日、生まれ変わりを間近に控えた亡者が、閉店準備をする仕入れの死神に訊ねる。

「ここはいつ来ても商品が減っていないように見えるんですが……」

 すると鎌をシャッターに引っかけて下ろす死神は振り向いて笑う。

「いつも言っていますが、生きている間に魂がすり減ってしまうようなやつがうちの取扱品目ですからね」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ