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薬物

久しいな


「何が世界三大ギャングだよ。めちゃくちゃ弱いじゃん」

 ヒカルの宣戦布告により開始したギャング対転生人の抗争は、開始早々ヒカルが圧勝している。街中に屈強な男たちの悲鳴が響き渡るという、異常な状態を引き起こしていた。


 始まったのは街の人々が出歩かなくなった頃合い。ヒカルが街の中を適当に散歩していた所に、複数人の魔法攻撃での奇襲により開戦した。彼は初めて魔法攻撃というものを喰らったが、悪人が繰り出した魔法は殆ど効かなかった。彼の能力上の仕様のため仕方のないのだが、あまりにも弱いため残念だったようだ。


 地面を大きく抉るほどの威力だったにも関わらず、彼は無傷だった。対してギャングたちはヒカルの一撃であっけなく殺られた。軽くビンタすれば首がきゅるきゅる回る。ちょっと胸を押せば手型の窪みができた。本気で殴ってみれば、そこから破裂した。ヒカルのチート能力《正義執行》は、敵が悪であればあるほど、殺傷力が増す。悪の代名詞とも言えるギャングには効果抜群だ。


 絶命は何とか免れた下っ端からアジトの場所を聞き出し、只今向かっている。魔力がこもった拳で殴られようが、剣で斬られようが、魔弾で撃たれようが、全くもって平気だった。近距離で攻撃を仕掛けてきた奴は、適当に手で弾けば終わるため楽だ。

 正義の味方ヒカルがアジトへ向かうために歩いた道には死体が置かれていった。


「テミス、この世界に銃ってないのか。さっきの魔弾じゃなく、鉛玉飛ばす現実世界でもあるやつ」

「あるにはあるよ。でも魔法使った方が圧倒的に強いから、使う人殆どいないよ。この世界の武器は魔物を倒せるか否かの基準で製造されるから、作ってる人もいないし」

「対人戦は想定してないのか」

「鉛玉飛ばすより、魔力で作った弾を飛ばす。そもそも魔力を込めて殴った方が無料だし威力あるし」


 そんな会話をしながらもヒカルは次々とギャングたちを殺めていく。目的地に近づいた頃には、もう敵を見ずに適当に殺していった。テミスの話では、何回か幹部も殺していたようだが、特に他の下っ端と何も変わらなかった。


「ここか? でかい建物があるけど。てかビルかこれ」

「そう、ここがフィルフリーのアジト、『フィールウォール・ビル』だよ。この世界で唯一のビルさ。転生人がこの世界の住民にビルの存在を教えてから、それを初めて建造させたのがフィルフリーなの。出来たてほやほやだよ。多分これから主要都市なんかでは、昔ながらの城ではなく、ビルを作る所も他に出てくると思う」


 今までファンタジー感あふれる異世界の建物だったのに、急にビルという現実味がある建物が出てきて萎えるヒカル。誰かは知らんが余計な文化を持ち込んだ事に憤おる。ヒカル的には中世欧州な世界観の、ゲームに出てくるような建物で統一して欲しかった。


「異世界でビルはないだろ。世界観がごっちゃごっちゃだ。誰だよ教えた転生人、空気読めよ」

「壊してもいいんだよ」

「僕の能力は無機物には非力だろうが」

「そうだった」


 異世界でビルに入るという、何とも言えない違和感を感じながら中に足を踏み入れる。すると、扉を開いた瞬間、大量の魔弾での集中砲火がヒカルを襲った。

待ち構えていた者達による一斉掃射。息継ぎする間もなく魔弾を浴びせられたヒカルも、流石にダメージを負ったようだ。全身を軽く火傷した程度の痛みが走る。


「いった······」

 痛みには慣れてる。火傷なんかいじめ時代にこれ以上の重症を味わった。こんなもの、火遊びで軽く事故った程度でしかない。慣れてはいるが、痛いのは嫌いだ。痛かったからヒカルは怒る。広いロビーには、総勢数百人のギャングがいる。全員殺そうと思った。その怒りはすぐに行動に起こす。端から襲って行った。怒ったから走った。走りながら目につく奴を全員殴り、叩き、蹴った。


 ギャングたちが魔弾銃のリロードを終え、反撃を開始した頃には、既にロビーにいた者達は半壊。逃げ惑うギャングたち。

「逃がすわけないだろ悪人共がァ!」


 逃げ惑う者達にヒカルの攻撃が届く寸前。階段を降りてくる強者のオーラを感じた。ヒカルには魔力の探知を出来る能力もあるのだが、まだ使いこなせず、感覚はあやふやだ。そんなヒカルにすらも、はっきりと伝わる濃い魔力。確信する。いま階段を下りてきている奴がボスだと。足が見えてきた。もうすぐ姿がはっきり見える。


 ヒカルの推理は大当たり。ギャングたちは、その者をボスと呼び、その者に引き返すように言っている。だがボスは止まらない。階段を全て下り終わり、全貌を明らかにした。


「いいね。その傷だらけの顔、しぶい表情、ぶっとい煙草。それでこそギャングのボスって感じだ」

 異世界感というのは感じないが、そのボスはヒカルから見ても普通にかっこよかった。映画に出てきそうな風貌だ。俄然やる気が出る。


「お前か、調子に乗ってる転生人は」

「あんたがボスだね」

「あぁ。俺がフィルフリーの創始者にして頂点。バドズという者だ」


 バドズはロビーに転がる、仲間たちの痛々しい遺体の数々を見て、大きく溜め息をつき頭を抱えた。

「メルク、マナバ、グリーズ、タタニア······」

 何人かの名前を出し、被っていた黒のハットを脱帽し、目を瞑って黙祷した。


「ギャングのくせに仲間思いなんだな」

「――こいつらとは、ガキの頃からのダチだ······。盗みも殺しもこいつらがいたからやってこれた。······絶対に許さねぇ」

「ならかかって来いよ。仇を討ちたいんだろ? 敵は目の前にいるぞ。正義の味方を殺してみろよ」


「簡単には殺さねぇ。死ぬよりも辛い拷問を、死ぬ間際までやってから放置して殺してやる」

《魔血殺:"死ね"》

「やれるもんならやって見ろ」

《正義執行》


 誰からも教わることなく、生き残るために生み出した必殺の技。拳や蹴りを当てる瞬間にだけ、全身の魔力を一点集中させる高難度技術。バドズはこの魔血殺で、敵対していた奴らを自らの手で葬ってきた。

 格闘術と呼べるほど巧みな体捌きではない。ぶん殴って蹴り飛ばすだけである。単純な動きだが、速度や威力は洗練されたもの。一般冒険者では何もさせて貰えずに一方的に殺られる。


 ヒカルは戦闘力は上がるが動体視力はそのまま。気がついた時には、既に間合いにバドズが入っていた。

急いで拳を振るうが、ヒカルが一発殴る前にバドズに五発入れられる。頚椎、顔面、心臓、膝、金的。正確に人体の急所を突いてきた。バドズは特に防御もされなかったため勝った気でいた。もし反撃されようが、この程度の攻撃を避けられない輩の攻撃など効くわけがない。そう確信していた。


 だが、今まで数々の罪を犯していた悪人が正義の味方に勝てるものか。バドズが与えた五発は、若干傷みを感じるか感じないかほどの痛みでしかなかった。そしてヒカルの反撃。たった一撃。素人丸出しの大振りからのパンチ。――だが、一撃必殺である。


「ごぶァッ!!!」

 確かにバドズはヒカルの拳を直前までしっかりと見ていた。その上で、拳に纏ってる魔力量から鑑みて大したことはないと踏んでいた。片手でガードし、がら空きになった脇部にブローを叩き込む気でいた。だが実際はどうだろう。ガードした左腕は砕かれ、貫通。尚も拳は止まらずに、まるで粘土を割くように易々とバドズの胴体に穴を開けた。


「よし、一件落着だな」

「――そんな、バカな······! お前の魔力は大したことなかったはず!」

「僕はお前が悪人であればあるほど強くなる」

「くっ······!」

 死にゆく体のバドズ。だが、残った腕でポケットから何かを取り出した。袋だ。中にはパンパンの黒い粉が入っている。


「あ、薬物だ」

 ヒカルが呑気に構えていると、その袋を力づくで破いた。辺りに舞う黒い粉。ヒカルは吸わないように鼻と口を塞ぐ。バドズは残りの力を振り絞って、大きく息を吸い、その粉塵を大量に体に取り込んだ。


「ッ······!」

「いーけないんだ。違法な薬物吸ってるなんて、重罪だぞ」

「――はァッ!」

 なんと、黒い粉を取り込んだバドズの体がみるみる再生していく。胴体に空いた風穴は塞がり、砕かれた左腕は再生した。それどころか筋肉は膨張し、魔力量も増強する。


「――この俺が最後の最後に、ブツに頼る事になるとはな」

「すごいなこの世界のヤクって。体が治るのか。だが悲しいかな、罪を重ねた事で僕はもっと強くなってしまう」



実はそろそろ正義の味方が終わる。わっちの他の作品を見てくれればその理由が分かるかと

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