表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

組織

一週間ほど空いてすまんの


 キャベイラ合衆国、首都ネオヨッカ。近年急成長中の都市である。他の街よりもまず人口が桁違いだ。普通の街の人口が四万程に対し、この街は十五万人を超えている。ネオヨッカは来る者は拒まない。性別も、年齢も、身分も、種族でさえも関係ない。規則を守れば生活ができる。だがこの街の規則を定めているのは、世界三大ギャングの内の一つ、『フィルフリー』


 フィルフリーが定めている規則を守れば住民は安全に暮らせることが出来る。定期的にショバ代を払い、必要以上に正義感に囚われない。これがこの街を生きる上で重要なことだ。フィルフリーが治めているため治安はむしろ良い方だ。


 この街の男達の選択肢は三つある。一つは鍛冶屋や食事屋、雑貨屋等の店で働くか。一つは街を魔物の手から守る冒険者となるか。それともう一つはフィルフリーに所属するかだ。本来ならば犯罪を取り締まるのはその街の冒険者が行うが、この街の犯罪に関する権限は全てフィルフリーが持っている。



 少年バドズはこの街で生まれ、この街で育った。彼は生まれた時から父親がおらず、母親も彼が十歳になると何処かへ消えていった。

 信じられる者は誰もいなかった。死にかけの子供を養ってあげるお人好しはこの街で生きていけない。魔法を習うための学校も行けなかった。魔力の扱いも全て独学だ。


 彼が子供の頃はこの街も他の街同様に、治安維持及び警察的役割をしてきたのはHQ(ハロークエストズ)所属の冒険者たちだった。この街の冒険者たちは強い。命懸けで未開の地を開拓していくからだ。常に玉砕覚悟で人々のために戦っている。


 だが戦場を生き抜いてきた強者ほど、自己中心的考えが強くなる。他人を思いやらない。自分さえ生きていればそれでよくなる。そんな冒険者たちは街の外では戦うが、内部に関しては無関心だった。そうすれば当然犯罪数も多くなってゆく。


 殺人強盗だけでなく、違法魔具・魔薬物の流通が特に酷かった。ネオヨッカは手が付けられない状態にまで悪い方に進んで行った。通常ならば冒険者たちの強さと比例して、街は発展してゆくものだが、衰退をし続けた。


 バドズは別にこの街を救ってやろうと思い、立ち上がったわけでは無い。あくまで己の利益のため、生きるためにギャング組織フィルフリーを作り上げた。


 最初は犯罪や魔物被害によって親を失った子供たちを束ねた。子供と言えど、魔力の扱いようによっては凶暴な大人も殺せる。何も持たずに生まれたように思えた彼だが、彼は人をまとめる才能があった。言葉には覚悟が、行動には勇気があった。


 剣が腹部に複数本貫通したまま、何食わぬ顔で標的の心臓に、魔力を纏わせたナイフを突き刺したのは十五歳のときだ。後にその標的が、行方をくらましていた実の父親だと知ったが、どうでもよかった。


 街中の実力者たち全員を一度に敵に回さないように、違法魔道具・魔薬物を格安で売りつけるなど“消したら困る存在”になるように努力した。コネクションを何より大事にした。違法物の調達は製造場所から命懸けで盗んできていた。追っ手は複数人で囲い殺した。彼はやがて違法物取り扱いの絶対的王となる。



 違法の魔道具・魔薬物は使用すれば、大幅に身体を強化し、精神を高揚させる代物。その強化の程は正統の強化魔法の比ではない。だが使用量しだいでは致死的負担がかかり、運が悪ければ命を落とす。


 昔は違法でも何でもない、自己責任の問題だった。が、過去に一つの大国がそれにより壊滅したため、国際的に禁止された。使用が見つかれば収容所行き。収容所から帰ってきた者はいない。


 流通が酷い時は、国連を守る最強の戦闘集団UNKがやって来て街ごと焼かれる。転生人がこの世界に来るようになってからは、違法物の製造場所の一斉殲滅も行われ、使用者は大幅に減った。


 大幅に減っただけで現在も流通は続いている。特にこの街、ネオヨッカでは違法物はフィルフリーが管理している。よって外部からの圧力も受けず、減少はない。ボスであるバドズが三十歳を超えた頃には、フィルフリーはUNKや、転生人ですら迂闊に手を出せない巨大組織になっていた。


 フィルフリーには二つの武器がある。まず一つは戦闘員の違法物による強化。敵を寄せつけない強さを持っている。そしてもう一つが、組織が持つコネクションだ。腕っ節の実力だけでどうにかなる物じゃない。


 転生人にとっては、戦闘員はどうとでもなる。どう凡人を強化しようがチートの方が強い。だが問題は二つ目の武器、コネクション。フィルフリーがどこまで繋がっているか不明だからだ。もしかしたら魔王やUNK、はたまた他の転生人まで敵になるかもしれない。いくらチートでも、世界を相手にするには厳しいものがある。


 それにフィルフリーは完全な悪の組織かと聞かれれば一概にそうとは言えない。組織にとって邪魔であれば凶悪な魔物討伐を請け負い、街の治安を乱す犯罪者にがいれば裁きを与える。それに違法物は決して、何も知らないカタギには売りつけない。ボスであるバドズの信念だ。


 バドズは若くして世界を牛耳る闇の王でもあるが、街中では空腹の子供たちに、腹いっぱいの食料を与えるおじさんでもある。未来ある子供たちに、自分のような思いはさせたくないのが、彼にとっての一番の願いだ。


 9月 30日

 悪が管理している街に、正義の味方がやって来た。



「本当に色んな奴がいるな」

「ネオヨッカだからね。民間人、冒険者、宗教家、貴族、魔法学者、亜人種、ギャング。誰でもいるよ」


 ヒカルはネオヨッカの街を散策していた。彼の目的はこの街を支配しているギャング組織の壊滅だが、とにかく今は腹が減った。今日泊まる宿も探さねければならない。だが残念な事にワープ代を払ったせいで残金3000Gだ。


「この街は貧困者には優しい街だから3000Gあれば数日は暮らせると思うから安心してね。寝床は裏路地だけど」

「それは嫌だな。治安が悪そうだ。スリにあってしまう」

「盗まれる物持ってないでしょ」

「エルフから貰った服がある」


 ヒカルの所持品はそれだけだ。


「それに、この街は見た目ほど治安悪くないよ。ギャング組織のフィルフリーが見張ってるからね」

「犯罪集団が正義の味方気取りか。気に食わんな」

「そうなんだよ。違法な魔具とか魔薬を売り捌いたり、民間人から金を巻き上げてる癖に、いい奴ら気取りしてるんだよ」


 

 街を歩いていると一つの施設に目がいった。その建物に鎧と武器を携えた男達が出入りしている。中からは陽気で力強い男たちの笑い声が、離れた場所まで聞こえてきている。


「あれはなんだ」

「あそこはハロークエストズだよ。通称HQね。この世界の冒険者たちはあそこでクエストを受注し、魔物を討伐してお金を稼いでる。この世界の男の王道的な生き方だね。女の子の冒険者もいるけど」


 ヒカルはHQに興味を示したようだ。現実世界でファンタジーが好きだった少年が、ゲームと同じ様な施設を目の前にして興奮しないわけがない。


「しばらくはあそこでお金を稼ごうかな」

「いやいや、さっき悪意なしゴーレムに惨敗したでしょ」

 ヒカルのチート能力は完全に相手依存のため、条件を満たさなければ非常に非力である。


「悪人を懲らしめてお金が貰えたりしないのか」

「HQでたまに危険人物の確保のクエストもあるにはあるけど、相当珍しいし何よりこの街の悪人はフィルフリーが裁いてるから」


 その時、明らかに堅気でない者がHQに複数入っていった。それによりHQ内から聞こえていた先ほどまでの賑わいは静まりかえる。


「さっきのって、もしかしてあれか」

「うん。間違いなくフィルフリーの奴らだね」

「何をしに行ったんだ」

「ショバ代の徴収かな」

「庶民から金を巻き上げるとは許せんな。ゆくぞ」


 ヒカルはわくわく顔でHQに向かう。

説明ばかりですまんの

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ