2色の英雄
ある英雄の話をしよう。時は遡り1000年前、緑が多く争いもなかった時代、"楽園"の時代だ。楽園時代の中盤には人間の中に魔術を扱う人間、魔術師が多く増えていた。その中の一人、あらゆる属性の魔術を使うことのできる天才、アランという男がいた。アランはあらゆる魔術を使い、楽園へ貢献していった。
ある日、アランはある儀式書を発見した。それは悪魔召喚術。この世界と悪魔の住む世界を繋ぎ、こちらの世界に呼ぶ儀式だ。悪魔を召喚した場合、悪魔がこちらを認めればどんな願いも叶うと描かれていた。だが、これは全くのデタラメだった。召喚された悪魔はアランを糸屑をとるように瞬時に殺害した。自由になった悪魔は世界で思う存分暴れていった。周囲の人間は殺され、緑も悪魔の影響で禍々しく侵されていく。動物は悪魔の魔力を得て魔物となるしまつだ。
そんな中、悪魔に対抗すべく一人の青年が立ち上がった。その男は剣で悪魔を切り裂き、悪魔を撃退した。悪魔は逃げ帰るかのように自ら悪魔の世界へ撤退していった。その後、男は長きに渡り英雄と崇められ、二色の瞳だったことから『オッドアイズヒーロー』として語り継がれていった。誰もこの男の罪を知らないまま。
ある場所に絶対に足を踏み入れてはいけないと言われている森があった。その森に入ると必ず迷い、死体として見つかることから「迷死の森」と呼ばれる奇妙な森があった。その森に向かう途中にある教会にさらに奇妙な神父がいた。迷死の森の前に立つ教会は、近づけば近づくほど不気味さを増していき、近づける雰囲気ではない。森に入らせない対策であったのかもしれない。そこにいる神父は何年も、何十年も人にあってない。ある日、そこに一人の訪問者が現れた。黒い服に身を隠し、黒いフードで顔は見えない。男か女かはわからない。だが、その訪問者は神父以上の不気味さを感じる。訪問者は神父を見たがすぐに祈りの場へと足を運ぶ。訪問者は祈り始め何かを呟いている。普段何にも関心を示さない神父は非常に訪問者に興味が湧いた。訪問者が来るのもかなり久しく、そして自分とおそらく同じ側の人間。そのような雰囲気、そしてその言葉を確かに神父聞いていた。
「君はおもしろいことを祈るな」
神父には歓喜の心が溢れていた。この人間は確実に自分と同類の人間。決して他人には理解されない、危険な存在。それゆえに、興味を惹かれる。
「最高だよ、君。もう一度聞かせてはくれないか?」
神父はもう一度、その人間の決して望んではいけない祈りを……決意を聞いた。訪問者ははっきりと最悪な決意を口にした。
「私は、この世界を破壊する……」
その後、この教会と神父を見た者はいないという。