罪を背負った「女神」・・・「黒の一族」、「遠い過去の過ち」。
デビルゲーマー沙羅までが倒されてしまい、
残る刺客は唯1人となる・・・。
最後の刺客は最も卑劣で強大な力を持っていた・・・。
そんな中・・・キリは・・・。
「デビルゲーマー沙羅・・・あっさりと・・・。
こんなにもいともたやすく皆やられてしまうものですの・・・?!
貴方の手配した下僕は全てこんなものばかりねっ?!」
手を上げて老婆を引っ叩こうとするダーク・エリー・・・。
が、その腕を老婆はまるで超能力の様な奇妙な力で
捻じ伏せる・・・。
ダーク・エリーは腕を上げたまま動けないでいたが
「まあ?よろしくってよ?!まだ・・・刺客が残っていた筈だわ?!」
この老婆には勝てない・・・と判断したダーク・エリーは大人しく
身を引くとばかりに負けを認める様にそう誤魔化す・・・。
「・・・幼稚な絵本作家・・・悪魔の貞子・・・でしたっけね?
その名の通り「幼稚な手段」でも何でもいいから早く目障りな奴等を
どうにかして頂戴な?!ふふふっ!!」
「・・・そう・・・私は・・・。悪魔の貞子・・・ですから・・・。
「幼稚」な物しか「書けない」から・・・。だから・・・。
その様な手段しか選べない・・・。だから・・・。」
苛ついたダーク・エリーは怒鳴りつけた。
「ぶつぶつ五月蠅いっ!!早くどうにかしなさいよっ!!」
「・・・・・・はい・・・・・・・。分かりました・・・。」
老婆は意味深に嗤いながらこう続けた・・・。
「ダーク・エリー様・・・。「あの者」・・・「悪魔の貞子」なら、
今までの様に簡単にはいかないと思われますぞえ・・・?ヒッヒッヒッ・・・。」
「ふん・・・。どうせ。今までの刺客同様大したことは出来なさそうよ?」
呆れているのかどこか諦めた様にどうでもよさげに吐き捨てた。
「私は・・・悪魔・・・。「貞子」だから・・・。悪魔なの・・・。」
そうぶつぶつ言いながら狂った様にスケッチブックに鉛筆で何かを
殴り描いていた・・・。
その頃・・・。
宇宙空間に捕らえられていたのは・・・。
美しい金と銀の髪の毛をした「月の国」の生き残りである
「キリ」であった・・・。
宇宙空間の歪みにある様な牢屋に幽閉されていたのだ・・・。
「私を・・・どうするつもりだ・・・。お前・・・。
何を考えている・・・?」
疲れているのか手首を鎖で繋がれた状態でもう何日も経っていた様で、
いつもの元気さも明るさも勝ち気さも何もなく力なく相手に問う。
「僕は、ずっと貴方に興味があった・・・。月の国の女神・・・。
どうして・・・貴方は、「僕らの一族」を恨んでいる・・・?」
鉄格子に近づき話しかけるのは・・・。
あの時、銀河の海で出会っていた「あの黒髪の男」であった・・・。
「お前たちのせいで・・・私の国は滅んだ・・・幾度も・・・
幾度も・・・。恨まない筈がないだろう・・・!!」
歯ぎしりして最後の方には強い口調で噛みつくように言い放つ。
「僕らを恨むのは筋違いだよ・・・?何故なら・・・僕はもう・・・
ずっと「知っているから」ね。「真実が何かを」・・・。」
「?!!」
すっと近づいてキリの髪に触れる男・・・。
「君が滅ぼしたんだよね・・・?あの時・・・。」
「!!!・・・貴様・・・!!!何を知っている・・・?!!」
すっと、今度は髪の毛を離す・・・。
冷たい瞳でキリを見つめ続ける・・・。
「君の口から出来れば「本当の真実」を聞かせてほしい・・・。」
キリは男を睨み付けていた・・・。
歯ぎしりしすぎて唇から血が少し流れている。
「折角の美しい顔が台無しだ・・・。そんなことをレディーがしては・・・」
「黙れっ!!私に触れるなっ!!!お前に何が・・・!!
何がわかると言うのだっ!!!何が・・・。私の何を・・・。」
がくんっと力が抜けて意識を失うキリ・・・。
「・・・女に手荒な真似をするのは・・・俺でも嫌なものだな・・・。
ましてや・・・こんなにも美しい女に・・・。」
キリは疲労からか意識が飛んでいた・・・。
男の名は「アキト」という・・・。
昔に月の国を滅ぼしたと云われる遠い名もなき小さな星の・・・
「黒の一族」と呼ばれる古くからの一族の末裔であった・・・。
「確かに君の言う通り・・・俺たちの星の一族は幾度も月を
占領しようと侵略した・・・。だが、最終的に「滅ぼすまで」に手を下してはいない・・・。
そろそろ・・・「本当の事」を口にしてはどうだろうかな?
・・・まあ・・・今は気絶しているから口もきけないが・・・。」
遠い目で牢屋の窓から見える星々の数々を眺めていた・・・。
キリの意識・・・。
過去の記憶が・・・少しずつ・・・彼女の脳内で再生される。
「キリ!」
走ってくる若い男性・・・。
キリのかつての恋人の・・・「セツナ」の姿・・・。
笑顔だった・・・。いつも・・・笑顔だった・・・。
幸せそうな2人・・・いつしか・・・。2人の間には
「子供」が出来てしまっていた・・・。
「・・・こんなことは許されてはいけない・・・。
俺が・・・君を・・・不幸にしてしまった・・・。
この国では「縁を結んで貰った」者同士でしか・・・、
「子供」を儲けることは許されない・・・。だから・・・。
わかるよな・・・?俺が言いたい事が・・・。君なら・・・。
わかるよな・・・?」
キリは・・・涙ながらに「子供」を「堕胎」させる様に
相手の男である「セツナ」に・・・そう言われたのだ・・・。
キリは何も言わなかった・・・。
堕ろしたという嘘をついて、母親のサキに匿われながら・・・
ひそやかに「子供」を産んでしまっていた・・・。
「ユイト・・・セツナ・・・リク・・・お母様・・・。すまない・・・。」
小さなうわごとを口にするキリ・・・。
その様子をずっと見ている「アキト」という「黒の一族」の男・・・。
「何がそこまで・・・君を苦しめる・・・?何を・・・。」
苦々しい顔で・・・だが憐れむかの様に・・・ただ見ていた・・・。
キリの頭の中では鮮明に・・・、実の妹のリクの微笑みが映っていた。
「お姉様っ!」
「すまない・・・。」
キリは夢の中でも罪の記憶に苛まれながら涙を流していた・・・。
徐々に過去の記憶が蘇りつつあるキリ・・・。
哀しい過去はこれだけでは終わらないのであった・・・。
キリの過去が一番の話の本筋の元となります・・・。
ラストに向かい、着々と話を進めていきたいです・・・。




