残酷な堕天使と成り果てた「少女」
シリアス展開が徐々に、でもしかし残酷なまでに続きます。
今回から少しずつギャグ展開が抑え気味になりますが、
気を落とさず読み進めていってくださいませ。
倒れて気絶していた小松澤エリナちゃん。
遠のく意識の中で「声」が聞こえていた。
「お嬢ちゃんは「救世主」に選ばれた。
「魔法少女」として他の類を見ない程の最大の
「魔力」を持つ偉大なる「救世主」・・・。
「ロスト・タイムゼロ・ダークエンジェル」。
お嬢ちゃんのこれからの「真の名前」を授けよう・・・。
最高の称号を持つ「宇宙一の魔女」の名だよ?」
「・・・かっこいいですけれど、私のイメージとは
違いますわ・・・?私はもっと・・・こう・・・、
可憐な・・・それでいて素敵な名前がいいです・・・。
それに「魔法少女」ではなく「魔女」だなんて・・・。
恐ろしい気がして・・・。それに・・・。私には・・・
「魔法少女」なんて名乗れる資格がないです・・・。」
夢の中の様な世界でうわごとの様に絶え絶えに言葉を返す。
「自信がないんじゃね?お嬢ちゃんの中にはそんなにも
素晴らしい魔女の要素が満ち溢れているのに・・・。」
倒れる前に幻の様に現れていた老婆の妖精がエリナちゃんに
まるでそう、悪い誘いに導くかのように問いかけた。
「・・・・・・・・・・・。」
エリナちゃんは何も言えずに沈黙してしまう。
(自信がない・・・。そうなのでしょうか・・・?
だって私には「何もない」・・・。今までもずっとそう・・・。)
「怖がることはないさ。何。この「老婆」めの手をお取りよ。」
暗示にかける様に手を伸ばす老婆の妖精・・・。
小さかった妖精の姿は段々と大きくなっていき、
まるで人間ほどのサイズになっていく。
催眠に罹った様な目になるエリナちゃんは手を伸ばし、
老婆の手にそっと触れた・・・。触れてしまった・・・。
すると、ペンダントが禍々しく光り出し、
紫色の渦の様な異様な霧に包まれたエリナちゃんは・・・。
目を覚ますと「薄紫色の髪の毛に染まり、黒いドレスを身に纏った
20歳ぐらいの若い女性の姿」になっていた。
「・・・わたし・・・は・・・?」
慌てて鏡を見るエリナちゃん。
カシャーン!と手鏡を床に落とす。
「わ・・・わたし・・・私は一体・・・。
何者の姿に・・・?記憶が・・・混濁して・・・。」
「その姿になれたね?お嬢ちゃん・・・。いや。
「ロスト・タイムゼロ・ダークエンジェル」様。」
夢から覚めても現れてくる老婆の妖精・・・。
「・・・そんな悪趣味な名前じゃありませんわ・・・?
私を誰だとお思いですの?私は私の好きな名前を自分でつけますわ?
「ダーク・エリー」。今からこれが私の「真の名前」ですわ・・・。ふふふ。」
今までの純粋で無垢で可憐だった筈の小学生のエリナちゃんとは
思えない程の口ぶりでまるで高飛車な魔女の様に嘲笑う。
「おやおや。目覚めたばかりとはいえどもちゃんと魔女として
「覚醒」したということかの?もうそんなに口答えができる程に。」
「おだまりよ。老婆めが。そんな事よりも私が「真の魔女」だと
言うのならば「忠実な下僕」の一人もいないのはどういうことかしら?
「魔女」は高らかに高みの見物をするものでしょうに?」
「生意気な小娘だねぇ。ちゃんと「部下」はいるよ?
あんたの「忠実な下僕」。既にこちらに配置しておるよ。
おいで、お前たち!!」
シュンッ!と一陣の風が吹き、どこからともなく
数人の若い男女が現れる。
「第一の配下。「デビルゲーマー沙羅」ここに参りました。」
第一の部下と名乗るのは黒髪で前髪が長く隠れていて目がよく見えない
ゴシック調の服を着てぬいぐるみを持ちもう片方の手に一昔前のテレビゲーム機を
抱えている、異様な雰囲気の痩せた少女。
「第二の配下。「サタンの末裔 戦慄の紅」ここに。」
第二の部下は一見どこにでもいそうな普通に見える男子高校生。
ただ、目つきは鋭くポケットにナイフの様な鋭利な刃物を隠し持っていて、
ずっとカチャカチャと鳴らしてはニヤニヤと気味悪く笑っている。
「第三の配下。「幼稚な絵本作家 悪魔の貞子・・・参りました。」
第三の部下は、地味で太った大人しそう女に見えるが一番敵に回すと
厄介そうな「呪い」でも人にかけてそうな雰囲気の「自称絵本作家」だ。
「ふうん?まあまあ悪趣味な下僕ばかり揃えてくれたじゃないの?
私の美学に反する醜悪さですわね?嫌味かしら?これは・・・。」
ムッとする3人の配下。だが顔にはなるべく出さない様に配慮はしているのか
誰一人として歯向かう者や反論する者はいなかった。
「いいですわ?行ってらっしゃいな?「敵」を皆倒すのよ?私の「敵」を・・・。」
「ラジャっすー。」と「戦慄の紅」が軽く返事をした。
他の2人は返事はしないものの軽く会釈をする。
「面白い見世物を見せて頂戴な・・・?退屈しない様に・・・。うふふ。」
エリナちゃんの部屋は歪んで異空間の中の様に空気が澱んでいた。
翌日。メールの返事がない事を心配した結兎がエリナちゃんの豪邸を
訪ねてきた。
もうクリスマスは過ぎ、26日になっていた。
「相変わらずの豪邸だからいまだに緊張するんだよなぁ・・・。」
ピンポーン。とチャイムを押す。
「元気になっててくれたらいいんだけど・・・。」
手には「結兎の母親の手作りクッキー(ただし、クリスマスだから
サンタとかトナカイとかいう可愛いクッキーではなく、結兎の母親が
大好きな若手ヴィジュアル系バンドマンの似顔絵風のクッキーである。
しかも微妙に似ているので器用なのか不器用なのかは謎だが味は
確からしい代物である。)と結兎が近所の花屋で買った小さな花束」を
持って、ドキドキしながら応答を待っていた。
「母さんの趣味はアレだけど、クッキーと花束・・・。
エリナちゃん喜んでくれたらいいなぁ・・・へへ。」
嬉しそうに少し照れ笑いする結兎・・・。
「よお。お前。何してんの?」
突然高校生に絡まれる様に話しかけられて驚く結兎。
「・・・え?!」
「ここは「どこ」だかご存じない?小学生の坊ちゃんよぉ?」
なんだか胸糞悪い感じがして無視しようとしていたが
いきなりその高校生・・・つまりは、「サタンの末裔 戦慄の紅」が
結兎を羽交い絞めにして襲い掛かってきた!!!
「っ?!!何すんっ・・・!!」
ジャキンッ!と目の前に鋭いナイフを突きつけられる。
驚きと恐怖で身動きが取れない結兎・・・。
それもそのはずである。相手は高校生。おまけに手には物騒なナイフ・・・。
「死にたくなきゃその手に持ってる「いーもん」くれよ?」
ニヤニヤと嫌な笑い方をしてからかってくる「戦慄の紅」。
怖くてたまらないが、ギリッと歯を食いしばり、「嫌だ!」と
歯向かう結兎。
「ああ?」憎たらし気に眉間にしわを寄せて結兎の髪の毛を
掴んで引っ張る「戦慄の紅」。
まさに「戦慄」である。
「何をしてらっしゃるの?!彼から手を離してくださいなっ!」
「エリナちゃんっ!!来ちゃ駄目だよっ!!危ないっ!!こいつっ!!」
エリナちゃんの姿を見て安心したいところだったが本気で危ない目に
遭っているので必死にこっちに来ないでくれとばかりに庇う。
「警察を呼びますわよっ?!」
「ちっ!!」
トンズラする様にその場から逃げる(フリをする)「戦慄の紅」。
「え・・・エリナちゃん・・・有難う・・・。ごめん・・・。
こんな情けないところ・・・。あ、エリナちゃん。これ・・・。
俺の母さんが作ってくれた・・・」言いかけたところでエリナちゃんが
突然言葉を遮った。
「弱いんですのね・・・?ユイト様は・・・。」
「・・・え・・・?」
びっくりする結兎は一瞬笑顔が固まる・・・。
「別に会いに来なくても構わなかったですのに・・・。ふう。
もううちに来ないでくださいませんこと?」
「あ・・・。め・・・迷惑だったの・・・かな・・・?ごめ・・・。」
涙ぐむ結兎は涙をぐっと堪えつつも笑顔で謝ろうとしていたが・・・。
「弱い人にはもう興味がございませんの・・・。それでは・・・。」
ギイイ・・・。バタン・・・。
鉄の門扉が閉じられてしまい、エリナちゃんの姿が見えなくなったのが
結兎にはショックだった・・・。
「弱い・・・のは・・・嫌なのか・・・。嫌われ?・・・え・・・?」
訳が分からない状態で混乱する結兎は涙ぐんで持っていた手荷物を
残念そうに持って帰った・・・。
「弱い・・・。ほんとに弱いですわね?本郷結兎は・・・。ふふふ?」
扉の向こうで嘲笑うエリナちゃんは・・・姿はいつものエリナちゃんでも
もう元の「いつもの純粋で優しい」少女ではなかった・・・。
大好きだった「天使の様な少女エリナちゃん」の変貌ぶりに
驚きとショックを隠せない主人公の結兎・・・。
だが本当に可哀想なのは結兎ではなく、悪魔の様な謎の老婆の手に
堕ちたエリナちゃんの方なのです・・・。
ここから暫く辛い展開が続きそうですが、主人公たちの持ち前の
明るさで何とか乗り越えさせますのでご安心を。
きっとラストはハッピーエンドにしてみせますので。
ラスト近辺は壮大な展開を予想してありますが途中でどこまで
ギャグ要素を入れたらいいのか匙加減に悩んでおります、正直。(苦笑)
まあ、多分大丈夫でしょう。
最後までお付き合いくだされば幸いです。




