廻る
辺りはもう暗くなっていた。なんだか夢で見たような風景だった。桜の木も察していたのであろうかザワザワと揺れる。
そんな遠くない過去、同じような場所で同じような景色で同じような匂いの夢を見ていた。でもその夢はハッピーエンドじゃなく・・・・・・。
「いた」
突然レンが止まるものだから肩をぶつけてしまった。けど今そんなことは気にならない。その夢の続きが目の前にあったからだ。
影のような何かが私たちを包みこもうとする。思わず1歩、2歩と後ずさりする。だが影はものすごいスピードで迫ってきていた。
「ちょっと走るよ」
レンは私の手をもう一度強く握ってもといた場所の方へ走り出した。
「ねぇ・・・・・・あれ・・・・・・ハァ・・・なに・・・・・・」
私の声は風のざわめきに溶けて消えた。桜の花びらを踏みしめながら走ったが、とうとうもといた場所についてしまい、逃げ場を失ってしまった。
「ねぇ・・・・・・どうするの・・・・・・」
私は膝に片手を置きもう一方の手はレンに振動を送っていた。レンは私の方を見て涙を交えた笑顔でこう言った。
「ごめん、また守れなかったさん・・・・・・」
あんまりレンがかっこよく見えたからついつい聞き返してしまった。
「どういうこと?レ」
そして、1ヶ月、3ヶ月、1年、ずっとこの夢が終わることは無かった。