気づく
いつからだろうか。夕日が街を悲しげに包みこむのを一望できるこの場所を見つけ出したのは。あのとき私は夕日だったのかもしれない。
そんなことを考えながらベンチにただただ座っていた。誰が座るわけでもないのに左には人一人分座るスペースを開けながら。それが日課となっていた。
それにしても。それにしてもモヤモヤは大きくなるばかりだ。謎の転校生、レン。コツコツとレンガを積み上げるように二人の距離は離れて行っている気がした。といっても会って1日目だ。何をそこまで考えているのだろうか。
「やめやめー。」
めんどくさいことはとりあえず放置しよう。それが自分らしい。考えるのは何も今である必要はない。高校生活はまだまだ長いんだし、じっくり考えればいいじゃん。
立ち上がって背伸びを一つ。
「やっぱりここにいたんだな」
後ろから声が近づいてくる。1日にしてもう聞き慣れた声、あいつだ。もう突然出てきても驚かないレベルだ。仕方なく振り返ってやったさ。
「ストーカーですかぁ」
私はモヤモヤを少し嫌味として解消したかった。だが次の一言で吹っ切れた。
「まあ、そんなところだよね。だって7回目だもん。」
・・・・・・あ。やばい。話についていけないやつだこれ。そっか、こいつ頭が逝かれてたんだな。ヤバい奴だ、これ以上詮索しなくていいや。
「とか思ってるんだろ?分かってるよ。全部、全部。」
「きも」
2文字に全てをかけた。全ての思いをひらがな2文字で。
「本当なんなの、あってまだ1日も経ってないのになんなの、本当なんなの、」
焦りすぎて語彙力が無さ過ぎる。もとからか。
「じゃあヒント。2つの秘密が鍵を握ってる。だけどその秘密を知ってしまったらまたふりだし。もう暗いし送って行くよ。」
2つの秘密ってなんだろう。それとふりだしってなに。双六したいのかな。でもサイコロないしできない・・・・・・。
「送って行くけど?」
2つの鍵、2つの鍵。物理的な鍵?それともキーワードみたいな感じ?どっちだろう。物理的な鍵だったらなに?家の鍵?
「ちょ帰るぞ」
左手のぬくもり。レンの香り。ここの風景。
「あ、
初めてじゃない。
これ。」