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話す

事件とは突然起こるものだ。

「今日は転校生が来てます。」

はらね?言った通りでしょう?今朝学校にきた瞬間から事件のニオイがしていたのだよ。なぜなら、机がひとつ増えていたk


「初めまして、金城レンです。」


ざわつく教室が一瞬シン……となってまたざわついた。その中できっと私だけだろう、ゾッとしてしまった。何故か転校生のレンがこちらをじっと見つめていたからだ。なにか、モヤっとした感情が渦巻いた。


桜の花びらが校庭で舞い踊る。そのなかで二人だけ静かに立ち尽くし、見つめ合ってる感覚に陥った。なにを語るでもない、ただじっと。


「それじゃあ席はあそこです。」


先生が指さしたのは私の後ろの席だった。授業中校庭にある大きな三本の桜の木をぼーっと眺められるこの席が気に入っていたのだが、後ろに誰かがいるとそんなことも出来なくなってしまうな、とか思いながらレンが着席するのを待っていた。


この転校生はなんなんだろう。無愛想なわけではない。クラスの騒ぐのが大好きな連中の定番の質問攻めにも笑顔で答えている。ならば先ほどのモヤっとした感情はなんだったのだろう。敵意だろうか。


いや、そんなはずはない。なぜなら今日であったばかりだったからだ。じゃあなんだ、この感情は。超能力が使えるわk


「あの」


気づくとレンが目の前にいた。いや、自分が椅子の背もたれを正面にしてレンと向き合っていた。


「なんですか。」


レンは使い古した雑巾を見るような目で見ていた。


「な、なんでもない。」

なんだか急に恥ずかしくなってクルッとターンした。すると肩からちょんちょんと指をつつかれ振り向くとほっぺに人差し指が刺さった。


「!?」


突然のことで驚きを隠せない。レンの、人差し指が、私の、ほっぺに。レン、指、in、まいほっぺ。そのまま右手を開いて耳にもぞもぞと話しかけた。


「あんま話しかけんなよ?それとさっきみたいにがに股になっちゃいけないよ?」


「(^ω^)はぁい……は?」


顔を少し引いてレンの顔を見た。さっき通り笑顔だ。話しかけんなよって何?なんで他の人は普通に話できてるのに私はダメなの?

所要時間5秒。怒りがこみ上げる。


「あんた初対面なのに、なに、それ?話しかけんなだ?もっと話したいし、もっと知りたいことあるし!」




シーン




気づいて周りを見たときには皆が静かーにこちらを見ていた。ただ校庭の桜の木とレンだけがニコニコしていた。


いつの間にか立っていた体を取り敢えず椅子に座らせてみる。どーしよう。どう収集つけようか。なんて考えていたら、授業開始のチャイムが鳴り、皆席についてなんとか状況は打破された。


でも、なんだろう。もやもやがどんとん大きくなっていく。この転校生、やっぱり何者なんだろう。もう少し知る必要があるみたい。


授業中はずっとそのことを考えていた。おかげで英語の小テストは最悪だったが、すぐ放課後になった。


いつも通りあの子と帰ろうなんて思ってたらまた肩をちょんちょんとつつかれ振り向くと人差し指が刺さった。


「……なに。」


私の人を警戒する声にもニコニコした顔を見せる。何を考えてるのかさっぱり分からない。レンだった。


「一緒に帰ろうか」


「……はい?」


普段はヘッドフォンで大音量で音楽を聴いているせいか耳がとうとう腐ってしまったかと思った。信じられない。あんだけ自分からよってくんな的なオーラバンバン出してるのに一緒に帰ろうだ?


「何言ってんの、無理にk」


「拒否権は与えませんっ」


なんだこやつ。ひとの話を聞く気配が全くない。まあ、顔も悪くないし?言っちゃえばイケメンだし?一緒に帰ってやらないことも?ないけど的な?


普段通り靴箱に靴を戻す。普段通り校門を通り抜ける。ただいつもと違うのはレンがいることだけ。ただそれだけ。たったそれだけ。なのになんでだろう、少しドキドキする。これってまさかk


「でさ、さっきの話なんだけどさ。」


「たまには心の声にかぶせないでくださいおねがいs」


「説明をすると長くなるんだけど、やっぱりあんま話しかけないで欲しい。」


桜の木がザワザワと噂話をしている。きっとアイツふられたよ、男運無さすぎとだろう。


「さっきからなんなの、話しかけるなとか、一緒に帰ろうとか、人のことばかにしてんの?」


午前中叫んでしまって、騒がないという教訓を得ました、わたくし十七歳でございます。レンはうつむいてしまった。


「……。ごめん。」


レンはうつむいたまま顔を上げない。あ……。言い過ぎたか?これは怒るか?いやいや、怒られてもこっち悪くないし、逆ギレじゃん怒ったら。でも心がチクリと傷んだ。


しばらくして何かを決心したように顔をあげた。でもその顔を見て息を呑んでしまった。


「自分だって本当は話したい、もっともっと遊びたい、この前みたいに……。」


そこまでいいかけてレンはしまった、という表情をしてスタスタと歩いていってしまった。


「涙目だった……。」

しばらくこんなダラダラが続くかもしれないです。

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