プロローグ
漆黒の夜空に幾つもの光の曲線が踊っていた。
何時もは、柔らかい灯りを与えてくれる月や星空も今は厚く黒い雲に覆われている。
不意に、一筋の稲妻が地に落ちた。
辺りには湿り気を含んだ生暖かい風が強く吹き、それを合図にしたように次々と光の矢が轟音とともに大地に飲み込まれていく。
大自然の猛威の中にあっては、矮小な生物などは息を殺して身を潜めるほかなく、そこには奇妙な静寂があった。
そんな状況で小さな変化があったのは山々の麓にある深い森の中からっだった。
先程の落雷を受けたのだろうか所々に焦げ跡と亀裂がある木の根元から緑色の光が漏れている。
木の根や蔦によって埋もれるようにあったその物体は、まるで石棺のようでもあり成人の男性がちょうど一人入れる位の大きさだった。
先程から明滅しているのはその一部からで、そこにはこう表示してあった。
起動を開始します・・・・・・
脳・人格データのコピーを開始・・・・・・・・・・・・・・・・・エラー
通信によるデータの更新・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エラー
緊急システム稼働による強制起動開始します
強制起動完了
直ちに自己消滅プログラムに移行します
どれ位時がたったのだろうか、石棺からの光の明滅が消えるのと同時にその蓋は鈍い音とともに開いた。
その中にいたのは
人の赤子だった。