どんどん進みます
朝の日課を終わらせ(飯やら魔法を使って職業レベルを上げること)、学園に向かった。昨日と違い教室で勉強をしようと思う。理由は単純。図書室では本に集中しすぎて遅れそうになるからだ。図書室から本を借りることも思い付いたんだが借りるまでの手続きが面倒だった。やることもないので勉強をしてはいるが。
「あ、あの」
ん?なんだ?
誰か俺に話しかけてきたので見てみると中学生くらいのネコミミ女の子がいた。青い髪に赤い目、ショートカットの美少女だ。
「何か用か?」
確か同じクラスの…………名前は忘れた。つーか、教えてもらっていない。
「えっと、その」
話を聞くと、どうやらパーティーを組んでいた女子達は男子パーティーと合同になったらしい。パーティーは6人までしか組めないので、一番弱かったこの子が外された訳だ。この子は僧侶なんだが回復させる機会がほとんどなく、戦力外とみなされたそうだ。俺はクラスやつらアホじゃねって思ったよ。1階層だから相手が弱いだけだ。2階層、3階層と続けば回復要員の大切さが分かる。他のやつらは剣士と魔法使いしかいない。攻撃力特化パーティーだな。
「それで?」
悪いが俺はソロでやっていくつもりだ。一緒にやろうと言われても困る。そういうニュアンスを込めて言ったんだが伝わらなかった。
「わ、私とパーティーを組んでください!」
「すまん。他を当たってくれ」
即答した。俺はNOと言える人間だ。それにパーティーを組めば俺の特異性がバレる。すぐにレベルが上がるんだから怪しまれるだろう。
「お、お願いします!家族を楽にしたくてこの学園に入学したんです!私だけじゃ絶対に無理です!お願いします!」
うぐっ。こういう時、美少女って得だな。力になってあげたいって思う。だが、それなら他のクラスからでもいいんじゃないか?別のクラスと組んでも大丈夫だし。
「そういう事情なら他のクラスでもいいんじゃないか?」
「…他のクラス方はすでに3階層まで進んでいるんです。私は足手まといですから、すぐにパーティーを解消されてしまいます」
あー、そっか。確かに足手まといになるな。
「それもそうだな。だが、俺も2階層まで進んでいるが?」
「え!?そうなんですか!?」
おお。驚いてる、驚いてる。
「え、その、あの、ど、どうしよう。もう一人で行くしか………っ」
そうだな。俺も一人なんだ。頑張れよ!応援はしておく。とはいえ、さすがに可哀想だな。少し助言しとくか。
「………スケルトンは回復魔法で一撃で倒せる。スケルトン狙いで戦ってみたらどうだ?」
そう。俺も知らなかった。ゲーム時代では回復魔法を相手にかけることなんて出来なかったから、この世界の本を見て初めて知ったのだ。しかも、これ、あまり知られていない。
「ええ!?か、回復魔法でスケルトン倒せるんですか!?」
「ああ。あまり知られていないけどな。他のモンスターは回復するだけだからスケルトンだけな」
「ほ、本当に倒せるんですね?」
信じたい。でも嘘かもしれない。そんな顔してるな。でもマジだ。
「本当だ」
俺は無駄に自信満々に答える。不安がらせないように。
「ッッッ!ありがとうございます!頑張ってみます!」
「ああ。頑張れよ」
女の子が直角になるほど頭を下げてきた。でも、笑顔になってたから良いだろう。
「お前ら!席に着けぇ!」
バレル先生が来たな。
「あのお名前は?」
そういえば名乗ってなかったな。
「祐司だ。さ、早く席に着け。先生に目をつけられるぞ」
「はい!………ユージさん」
女の子はいつも座っている席に向かっていった。
「よし!さっそく、行くか」
授業が終わり飯を食ったあと、ダンジョンの入り口に来た。俺は水晶玉に手をかざし、2階層に移動した。
見渡すかぎりの草原。ここのボスは1階層のボスと違い、この草原を歩き回っている。ボスに出会うのは完全に運だ。ちなみにここはウルフが徘徊している。名前から分かると思うが狼だ。
「出てきたな」
俺の前に3体のウルフが現れた。って、
「待て待て待て!さすがに3体はちょっと」
襲いかかってきたぞ!
とりあえず、最初に来たウルフは直情的に襲いかかったので避けた。そこにもう1体のウルフが向かってきたが避けられそうになかったので膝でウルフの顎を思い切り当てる。
―ボキッ
いい音鳴ったな。顎の骨が砕けたっぽいな。ウルフは地面に倒れた。
「<パワー>、<ディフェンス>!」
俺は魔法をかけたところにウルフが襲いかかって来る。そこで倒れているウルフを蹴りあげて襲いかかるウルフに当てた。もう1体のウルフが俺の腕に噛みつき、引きちぎろうとしてくる。
「はぁっ!」
俺は短い掛け声をしながらウルフの頭を全力で殴る。するとウルフは光の粒子になって消えた。
―ポーン
これであと2体。そこで勝てないと悟ったのか、1体は逃げ出した。これで残り1体。最後の1体は顎と胴体の骨が砕けて動けなくなったウルフだ。俺は苦しまないよう首の骨を折る。すると光の粒子になって消えていった。
―ポーン
「痛っ。素手で戦うのにも限界かな」
傷はそこまで酷くないが、痛いものは痛い。
剣でも用意するか?買うと高くなりそうだから1階層のボスから剣を取ろうかな?
俺は光の粒子になって消えたウルフがいたところに行く。そこには牙があった。どのダンジョンでもそうだが、1階層は光の粒子になって消えるだけでアイテムを落とさない。だが、2階層からはアイテムが出るようになるのだ。今、落ちているのはウルフの牙だ。他にもウルフの爪、ウルフの目、ウルフの肉、ウルフの宝玉など出てくる。ちなみに宝玉が出る可能性はかなり低い。1000体に1体くらいの確率で出る。ボスでも出てくるがそれはかなり低い。多分、宝くじで1等を当てることよりもな。
今回はウルフの牙と爪だな。
「それにしてもレベルがどんどん上がるな。もっと上げていくか!」
ステータスを確認するとレベルが10になっていた。面白いくらい上がる。経験値十倍さまさまだな。
俺は1階層に戻り、もう一度ボスに挑んだ。剣が欲しかったため。
ボブゴブリン戦は見事に勝利。まぁ、レベルが6で圧勝できるくらいだから無傷で勝った。俺は剣を手に要れ、2階層でウルフに挑んだ。
「<パワー>、<ディフェンス>!」
今度は4体いたが、問題ない。
―ポーン
これは職業レベルが上がった音だな。
俺は剣を手にウルフ達に向かって突っ込んだ。力任せにウルフの胴体に剣を振る。
―ゴキッ
変な音は鳴ったが問題なく胴体は斬れ、光の粒子になった。ウルフ達は一斉に襲いかかるが剣を地面に刺し、拳でウルフの頭を砕き、他のウルフの攻撃は避けた。その直後、刺した剣を抜きウルフを斬る。最後の1体は逃げ出したが、剣を投げて殺した。
―ポーン
危ないところはあったが問題なく倒せた。この調子でどんどん倒していこう!
……………
…………………………
……………………………………………………
「そろそろ帰るか」
あれからウルフを狩って狩って狩って狩りまくった。今日の成果がこれだ。
ウルフ 34体
ハイウルフ 1体
ついでにボスも倒していた。少し大きめのウルフだったのでボスだとは思わなかったのだ。まぁ、これで3階層にも行けるようになった。
そしてレベルは17まで上がった。このレベルは6階層まではレベル上げなくても問題ないくらいだ。
俺は換金所に行き、ウルフのアイテムを売りさばいた。その結果、今の所持金は16039Gになった。昨日の10倍以上儲けたよ!実はウルフを倒したときに宝玉が出たのだ!
宝玉は倒したモンスターのスキルを得ることができるアイテムだ。ウルフの宝玉ならウルフのスキルを、ゴブリンの宝玉ならゴブリンのスキルを、こんな感じになる。
今回の場合、スキルを得るよりもお金が欲しかったので売った。欲しいものもあったしな。
購買に行き、欲しかったもの、アイテムボックス(1000個まで入る)を10000で購入した。どうしても欲しかったんだ!30個しか入らないアイテムボックスしか持っていなかったしな。
「おい!聞いたか、あの話!」
「なんだよ。何かあったのか?」
「ああ。また一つ階層が上がったらしいぞ。しかも、ソロでだ!」
「嘘だろ!さすがにあのボスは…………いや、もしかしてボスを単独撃破したのはあの?」
「お前の考えている通り、あのブレイズ家の才女、リーファ様だ!」
「やっぱそうか。数多の剣の天才が出るブレイズ家の中でも特にその才能が高いリーファ様しか思いつかないぞ。一年で3階層のボスをソロで倒せるやつは」
「だよな。俺達にも少しでいいからその才能を分けてほしいぜ!」
べた褒めだな。リーファ・ブレイズ。しかし、4階層に到達したか。あそこは3階層と同じような場所だが罠が幾つかある場所だ。気をつけないと死ぬぞ?いや、主人公が出てくる時までは生きてるから心配ないか。
俺は寮に戻り、飯を食ったあと、自分の部屋で寝た。