18時間前
毎朝、大好きな白川君のための準備をするため早起きしている美香子。
美香子には、彼氏がいた。
ピピピ ピピッ
パシッ。6:00きっかり
勢いよくしばかれた黒いリングアラームは
サイドテーブルの上で役目を終えたようにこけている。
「フワァ~。今日もお仕事かぁ」
最近美香子は、早起きしている。
なんと言っても 朝、白川君が早いからだ。
9:20にはいるのだ。
母親も彼氏もお手上げの朝が弱い美香子が自発的に
かなり邪な理由で朝起きが得意になったことは
白川'sミラクルである。
まあ、7時半に起きれば9:20のラブリータイムには
十分間に合うのにあえて1時間も早くおきるのは
お風呂・メイク・洋服選びに真剣に取り組むためである。
自然でナチュラルに・・・
年を感じさせないようにするためなのである。(←ここ重要)
当の白川君はきっとこんなこと気づいてないんだろうなぁと
溜息をかるく漏らしながら、毎日のこの時間が、とてもいい
張り合いになって続いているので良しとしよう!と気もちを取り直す。
「みかぁ。お前こんな朝早かったっけ?」
マスカラを入念丁寧に塗りこんでいた美香は、ヒョッとびっくりした。
マスカラがはみ出て「もぅ!」と隆を睨んだ。
あっ。集中しすぎて隆の存在を忘れていた。
この人物は彼氏である。
ほぼ8年付き合ってる彼氏だ。
何だか落ち着くから長い付き合いになっている。
申し訳ないけど、完全にときめいてはいない。
セクシーな雰囲気にもならない。
長年連れ添った老夫婦のような付き合いをしている。
昨晩は、隆が飲みたいというから仕事の帰りに合流して、今に至る。
「いやぁ。朝方に変えた方がダイエットの効果が出やすいって・・・」
我ながら意味不明な弁解だと思いつつ、マスカラとるんなら下地
塗りなおさなきゃと次のことを考えていた。
「いいじゃん。ダイエットしなくてもぉ。やわらかいのがいいんだよぉ。」とEカップの美香子の胸を後ろからつかむ。
もぉうううう。準備が進まない!とイラッとしつつも
「お化粧中だから邪魔しないしない!」
やんわり手を払いのけた。
メイクを続行しながら、自分の中のもう一人のずるい自分が
隆とのぬるーい関係をキープしようとしていることにまた溜息がでた。
私なんでこんな大人になったのかな。
なぜ。この人だ!ってわかる人に先に会えなかったんだろう。
考えてもしょうがないことだと思いつつも
リップを指でぼかして、
よしっ!ナチュラル と頷いた。