3時間前
「はぁ~。ぁあああ終わった~。」
美香子は、窮屈で退屈なリスト作業の仕事が終わったところだ。
ななめ前に座っている白川君が「良かったですね」と笑みを浮かべる。
美香子は、白川君が気になって仕方ない。
どこか頼りなげない感じなのに仕事はちょっとテンパっててもしっかりギリでやり遂げる。
そんな仕事ぶりが、美香子のお気に入りポイントでもある。
仕事を手伝ってもらって接点を持つことも考えてはみたが、生粋の意地っ張りが功を奏し
年下の彼に頼るわけにはいかない、かっこ悪いじゃない・・・と関わりは持てずにいた。
そんなに関わりがないものだからさっきの笑みは、ちょっと美香子をうれしくさせた。
「おなか減ったなぁ」と呟いてみる。
「もうこんな時間ですもんね。先輩」
「そーだよね~。コンビニってのもなぁ。一杯ひっかけてスーッと眠りたいよ。」
(「じゃあちょっと行きますか。」を100分の1位期待して)言ってみた。
・・・
・・・無反応。
そうだよね。うんうん。そういうもんさ。
こんなおばさんと夜一杯飲みたいとかあるわけない!
でも言ってほしいな。一言。
白川君が一言言うだけでいいのだよ。
ちょっとだけね。1時間くらいなら付き合いますよとか。
たまには、先輩ともいいですねとか。
何にもなくったって(←なんかあることを期待しているおバカ)
おごっちゃうんだから!!!
先輩の頭の中はね。。。
カフェでお話してる自分と白川君とか
映画館で一緒に笑ってる姿とか
夜のスペインバルとかでちょっと砕けた話ができるようになってきて・・・
とか交流の数々の妄想で一杯なんだから!
女はね・・・単純で複雑なのよ!
と心で主張はしてみても、ふたりだけのオフィスで
彼が弾くキーボードの音だけがしている。
私は、ポーカーフェイス。
そんな「やっぱりいつも通りの今日」があと3時間位で
「やっぱりいつもどおりなんだろうなぁという明日」に向かっている。
「かーえろぉ」美香子は立ち上がった。