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姫王伝  作者: 鈴神楽
3/17

勝手に町を活性化させる姫

 ゴルゴック山を耕す農民が居た。

 汗水垂らして、まだまだろくに作物が育たない土地に鍬をたてる。

 実りなど見えない、辛い作業を馬鹿正直にやる人々。

 そこに、バラバラの装備をした男達がやって来る。

「農民の皆さん、無駄な努力をご苦労さん」

 先頭の男が馬鹿に仕切った顔で声を掛けてきた。

 農民達の纏めている男が前に出る。

「あのー、警備団の御方が、この様な所にどんなご用向きですだか?」

 そう、男達は、ヤーリテが作った国の金で雇われた、臨時警備団であった。

「何、警備さ」

 その笑みに農民達は、怯える。

 彼等は、経験で知っているのである。

 目の前に居る人間が自分達を摂取する者だと。

 纏め役の男は、その気持ちを必死に隠し、頭を下げる。

「大変助かってるだ」

 それを聞いて警備団のリーダーが言う。

「そうだ、少ない給金で、守ってやっているんだ、当然、お前達からも礼が必要だと思わないか?」

 想像したとおりの答えに纏め役の男が出来るだけ相手を刺激しないように言う。

「本当に申し訳ないが、まだまだ作物も摂れねーだ。とても警備団の皆様に出せるような物は、無いんだ」

 それに対して警備団のリーダーが言う。

「嘘を言うじゃない! 知ってるんだぞ、開拓農民には、あの我侭姫から支度金が支払われているってな。それを出せば良いんだよ!」

 慌てる纏め役。

「あれは、農作物が育つまでの我々の生活費だ。なければ飢え死にするだ!」

 警備団のリーダーが剣を抜いて言う。

「黙りやがれ! ここで死にたいのか!」

「知ってる? この国でそういう暴力行為すると、あちきの一存で重労働の罰則を与えられるんだよ」

 その声に警備団が振り返ると、そこには、ヤーリテが居た。

「何で、こんな所に!」

 驚く警備団を無視してヤーリテは、農民達が耕している土を触り言う。

「まだまだ硬いな。予想以上に収穫が遅れそうだね。支度金は、増額出来ないけど、最低限の食料の支給は、やるから、ピンチになったら言う事」

 纏め役の男は、慌てて頭を下げる。

「こんな、おら達の為に……。頑張るだ!」

 涙を流す農民達に背を向けてヤーリテが警備団に笑顔を向ける。

「さてと、自分達が何をしたか解ってる?」

 リーダーは、怒鳴る。

「あんなはした金でまともに働けるかよ!」

 肩を竦めるヤーリテ。

「あのね、仕事内容も給金も最初から、伝えてあっただろ? 嫌だったら辞めろよ」

 完全に投げやりな言葉にリーダーの男が剣を振り上げる。

「何も知らないガキが!」

「馬鹿、止めろ!」

 周りの警備団のメンバーが止めようとするが、リーダーの剣は、振り下ろされた。

 しかし、その剣は、地面に突き刺さるだけだった。

「反逆罪だ」

 いつの間にかに警備団のリーダーの後ろに回っていたヤーリテが唱える。

『我が魔法名、DDの元に、汝の過去の幻を与えん。過去体幻カコタイゲン

 次の瞬間、リーダーの男は、悲鳴をあげる。

「止めろ! 俺にそんな趣味は、ねえ!」

 暴れまくるリーダーを見て警備団員が言う。

「何を為さったのですか?」

 畏怖を籠めて尋ねるとヤーリテが淡々と答える。

「その男が過去に女性に行った行為を自分で体験させてるだけだよ」

 青褪める団員達にヤーリテが釘を刺す。

「あんたらは、どうする? 選択肢は、二つ。真面目に仕事を続けるか、罰を受けて仕事を辞めるか?」

「真面目に仕事をさせてもらいます!」

 慌てて言う団員。

 そして、ヤーリテが言う。

「そうそう、来月の減俸は、覚悟してね」

 うめき続けるリーダーを見ては、とうてい逆らえない団員達であった。



 三つの街道の交差点にある新しい町、ポンの酒場にヤーリテが到着する。

「あちきの分は、残ってるよな!」

 ブレーダが裂きイカを齧りながら。

「残ってるが、何をしてたんだ? リンが見て欲しい書類が有ったのにって騒いでたぞ」

 ヤーリテは、最後の一本の焼き鳥を食べながら言う。

「農地の視察だよ。それにしても、警備団の採用基準をもう少し考えないと駄目かもね」

 それに対して、ワインを飲んでいた町の名になった町長にて、商売ギルドの纏め役、ポンが答える。

「あの金額では、まともな奴は、あつまりません。リン殿にいって、もう少し、給金をあげてもらったらどうですか?」

 麦酒を一気飲みしてからヤーリテが言う。

「あちきの国は、貧乏だから、そんなお金無いよ。暫くは、監視を強めて対応するしかないか」

 ブレーダが不思議そうな顔をする。

「金が無いって、俺を出し抜いて強奪した古代遺跡の財宝をコーネさんに換金してもらったんだろ?」

 遠い目をしてヤーリテが言う。

「あんなもん、とっくに無くなったよ」

 立ち上がるブレーダ。

「嘘だろ! 下手な国の年間予算くらいの価値は、あっただろう!」

 苦笑するポン。

「残念ですけど、新しい国を作るのは、下手な国の年間予算等では、とうてい足りないのですよ」

 頷きヤーリテが続ける。

「リンが色々やりくりしてくれてるけど、全然足りない。本音を言えば、もう少し開拓農民を誘致したいんだけどな」

 ブレーダが眉を顰める。

「前から思っていたんだが、どうして金を払ってまで農民を呼んで開墾させてるんだ? この国は、関税メインなんだろう?」

 ヤーリテは、ブレーダの皿から裂きイカを奪って言う。

「食料の自給率って言うのは、その国の力を意味してる。いくら関税頼りだからって、最低限の食糧自給が出来なければ、いざって時に飢え死にする事になるんだよ」

「山地に適した農産物を色々と集めてきてありますから、それを試してみてください」

 ポンの言葉にヤーリテが言う。

「何時も世話になってる」

 ポンが首を横に振る。

「逆です、既存ギルドの横行をストップして頂いたり、かなり助けてもらっています」

 ヤーリテが手を振る。

「それは、こっちの事情だよ。マジックスやベニスにあるギルドの値段体系をそのまま流用されたら、この国の旨みがなくなるから、多少手間が掛かってもこの国独自の値段体系を作る必要があったからね」

 ブレーダが二人の会話に疑問符を浮かべていると、その後からリンが現れて言う。

「うちの国は、物を流通させて、その時に発生する利益から関税をとっています。その利益が大きければ大きいほど、国に入る関税も多くなるのです。その為には、他国とやりとりするより、有利な料金体系を必要としていたのが本音ですね」

「遅かったね」

 ヤーリテの言葉に、机の上に書類を積み上げるリン。

「今日中にこの書類全てに目を通しておいてください」

 大きく溜息を吐くヤーリテであった。



 そんな建国の苦労をするヤーリテが王宮を出てから早、三ヶ月が過ぎようとしていた。

 そして、ある男が、マジックスの王宮に帰ってきた。

 王の間にその男、マジックスの三将軍の一人、ジェネ=S=フランが居た。

「ベニス連邦に侵略行為を行っていたレッケス帝国の撃退は、無事終了いたしました」

 頭を下げるジェネに、政治に関心が無いヨークス国王は、適当な態度で言う。

「うむ、ご苦労だった。褒美等は、大臣と相談してくれ」

 苦笑する一同。

 その中、王子のユーシャが言う。

「三ヶ月以上もの間、異国での戦闘、その苦労は、決して無駄に致しません。ジェネ将軍やその配下の者達には、十二分な褒美を授けられる事でしょう」

 まともな対応に周囲の人間が安堵の息を吐くが、問題のジェネは、褒美や国王の対応等、気にもならない様子であった。

「一つだけ確認させて頂けますでしょうか?」

「なんでしょうか?」

 ユーシャの言葉にジェネが強い目で問う。

「姫が独立したという話は、本当でしょうか?」

 一気に周囲の空気が重くなるなか、ジェネと同じ将軍職につく、女性、リリン=W=ランダが言う。

「姫は、あくまで王位に拘り、独立を願った。我々としても、大変困っているのが現状です」

 ユーシャも苦笑する。

「使者は、何人も送っているのですが、意思が強いみたいです」

 それを聞いてジェネが告げる。

「そういう事でしたら、遠征していた我が軍がゴルゴック山に攻め入りましょう。幸い、ベニス連邦側にも兵を残してあります。一気に攻め入れば、まともな抵抗もできないまま、鎮圧は、可能かと思われます」

 慌てたのは、大臣の一人。

「ジェネ将軍、それは、少し強引では無かろうか? 姫にもしもの事があったらいかがするおつもりか?」

 そこにリリンが入ってくる。

「しかしながら、これ以上の勝手は、王国にも多大な影響があります。皆様の所にも、陳情があったのでは、ないのでしょうか?」

 意外にも、リリンは、マジックスが有する三将軍の中でも政治色が強く、国王派と呼ばれ、軍と大臣との折衝を行っている。

 その関係で、大臣達が、ヤーリテが作った街道の所為で儲けを損なった商人達から陳情を受けている事実も知っていたのだ。

 そして、リリンが国王の方を向いて言う。

「このままでは、陛下の威信にも関わります。ジェネに内乱鎮圧の許可をお与え下さい」

 ヨークスは、面倒そうな顔をしながら言う。

「しかし、ヤーにもしもの事があったら困るぞ」

 国王としての言葉では、なく単なる父親としての言葉に、誰もが呆れた。

「陛下。ジェネ将軍は、間違ってもヤーを傷つけたりしません。彼でしたら、無事にヤーを連れ帰ってくれるでしょう」

「そうか、お前がそういうのだったら、ジェネ、お前に任せた。無事にヤーを連れ帰ってまいれ」

 ヨークスの言葉に頭を下げるジェネ。



 ジェネは、王の間を出て、王宮の自分の執務室に移動する。

 そこには、小柄だが、確りとした体をした副官で、マジックスでも最強クラスの戦闘能力を誇る、ジェネ騎士団の団長、シース=E=ドランが居た。

「例の噂は、本当だったのか?」

 それに対してジェネが答える。

「本当だった。だから、討伐の許しを得ようとしたら、内乱鎮圧としての出兵となり、王子の口ぞえもあり、姫の無事と引き換えに許可された」

 大きく溜息を吐くシース。

「姫さんも、もう少し、まともな方法を考えて欲しかったな」

 そんなシースを無視して不機嫌そうに自分の椅子に座るジェネ。

 そこでドアがノックされる。

「入るわよ」

 入ってきたのは、リリンだった。

「リリン将軍、何か至急のご用件でしょうか?」

 シースの問いにリリンが頷く。

「内乱鎮圧の件の確認よ。ジェネ、解っていると思うけど、今度の件は、貴方の今後に関わって来るわ。ここで、下手に躊躇する事があったら、元々姫様よりだった貴方に対する評価は、かなり厳しい物になるわ」

 シースは、リリンにばれないように舌打ちし小声で呟く。

「やっぱり、そうなるか。実際に、ベニス連邦に兵を残し東西からの強襲の準備を提案された時は、俺も信じられなかったからな」

 そんな二人の意見にジェネが不機嫌そうに答える。

「あくまで敵となるのなら戦い、勝つだけだ。姫の性格もやり方も俺は、十全に知っている」

 固い意志にリリンは、安堵の表情を浮かべるが、シースは、首を傾げる。

「何かがおかしいぞ」



 ユーシャの私室。

 そこで、彼に仕える女性秘書官、シャイ=S=レスがユーシャに詳細な情報を伝える。

「予想に反し、姫の政策に対するわが国の損失は、軽微で、逆に物流の活性化による税率アップが予測されます」

 ユーシャは、暫く沈黙した後に言う。

「単なる我侭姫だったら、本人が望むとおり、王様ごっこをやらせても良かった。しかし、有能な王になると言うなら……」

 不穏な空気をはらみながら、大きな変革の時が迫りつつあった。

農民ってけっこう虐げられてますよね。

それと、何気にベニスが共和国から連邦に変わってたりします。

先に言っておきますが、将軍との戦いは、肩透かしになります。

そんで、第一ステップ終って感じになります。


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