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姫王伝  作者: 鈴神楽
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勝手に休戦を進める姫

 レッケス帝国は、空前の危機に陥っていた。

 オバ王国の攻略失敗、ラオウ皇子の死亡、それに伴う貴族達の反乱。

 そして、今まで防衛を中心だった筈のマジックスの進軍がレッケス帝国を終末に導こうとしていた。



 数日前のマジックス王宮。

「国王陛下、どうか侵攻をお認め下さい」

 ユーシャの言葉にマジックス国王、ヨークスは、気が進まない顔をしていた。

「しかし、マジックスは、侵攻せぬ国としていままで過ごしてきたのだぞ? それを私の代で変えるというのは……」

 歯切れが悪いヨークスにユーシャが真剣な顔をして言う。

「それでは、ヤーがどうなっても構わないのですか?」

 その言葉にヨークスが真剣な顔になる。

「そろそろ、遊びを切り上げさせて、王宮に連れ戻すべきだな」

「それでは、遅すぎます!」

 ユーシャの強い言葉にヨークスが驚く。

「何を焦っておる。ヤーとて、自分の命が危なくなれば、王宮に戻ってこよう。今回の事で、理解しただろう」

 ユーシャは、首を横に振る。

「ヤーは、私達が思っている以上にオバ王国にこだわりを持っています。今回も最後の最後まで、オバ王国を護ろうと死力を尽くしていました。悠長な事を言っていたら、ヤーが死ぬ事になります」

「それは、ならぬ! 仕方あるない、帝国にこれ以上のオバ王国の侵攻を止めさせるのだ」

 ヨークスの言葉にユーシャが頭を下げる。

「拝命いたしました。このユーシャ=SF=マジックス。見事、奴らの魔の手からヤーを護って見せます」

 こうして、国王から、帝国への進軍を容認さえたユーシャであった。



 ユーシャが執務室に戻るとマジックスの将軍の一人、ダーガが待っていた。

「帝国内での内乱は、こちらの指示通りに進んでいます」

 それを聞いてユーシャが微笑を浮かべる。

「馬鹿な連中だ。先を読めず、簡単に反乱を起こす者達を私が重宝すると思っているのだからな」

 高位の文官、クリが言う。

「それでは、その者達との密約は、破棄するのですか?」

 ユーシャが満面の笑みを浮かべて言う。

「約束は、守り、今より広大な領地を与えるつもりだ。しかしな、何故帝国がこうも侵攻を続けているか知っているだろう? あの国は、土地に恵まれていない。それでも必死に農作物を作っている為、土地がやせ衰えている。そんな領地だけを与える。後は、本人達の努力しだいだな」

 クリが苦笑する。

「目先の餌に食いつく馬鹿な貴族が、どうにか出来る訳がありません。どうせ無茶な税を強制し、餓死や反乱を増発させるだけです」

 ユーシャが頷く。

「そう、その後、我々がその貴族を粛清し、多少の税を落せば国民は、実質増税すら気付かないだろう」

 ダーガが感嘆する。

「流石は、ユーシャ殿下、先の先までお読みの見事な戦略です」

 ユーシャが立ち上がり告げる。

「これは、第一歩でしかない。この大陸を征するのは、この私だ!」

 こうして、ユーシャが覇道を駆け出すのであった。



 オバ王国の宮殿、戦後復興の処理に忙殺されていたヤーリテの元にブレーダがやってくる。

「マジックスの軍隊が帝国の中央まで侵攻したみたいだ」

 その報告を聞いてシースが舌打ちする。

「今まで、どんなに主張しても認められなかった侵攻がどうして今になって!」

 それに対して、ジェネが答える。

「簡単だ、姫王様の安全をたてに国王陛下を丸め込んだのだ」

 それを聞いてリンが悔しげに言う。

「侵攻が一段落するまで見逃していたのに、それを今更!」

 そんな中、ヤーリテが言う。

「リン、すまないけど、国内の事は、任せてるわよ」

 それを聞いてリンが驚く。

「どうするのですか?」

 リンの言葉にヤーリテが言う。

「このまま帝国が落ちれば、兄貴の思惑通りになる。そうなったらもう止まらない。それを回避する手段を打つ」

「どうやってだ? この国には、もはや戦力は、ない。マジックス王国と帝国が戦っている以上、残りの戦力は、ベニス連邦のみ。しかし、ベニス連邦が間違っても帝国に協力するとは、思えない」

 ジェネの言葉にヤーリテが笑みを浮かべる。

「当然だね。でもね、ベニス連邦もそうそう安全な訳じゃない」

 そこにポンがやってくる。

「姫王様。例の話が商人達によって、ベニス連邦に流れ始めました」

 驚いた顔をするリン達にヤーリテが言う。

「大戦の中、マジックスに商人達を逃がしたでしょ? その時に細工をした。あとは、あちきが直接動いて、ベニス連邦の上の連中の重たいけつを蹴り上げるだけ」

 こうしてヤーリテも行動を開始した。



 約一ヵ月後、マジックス王国と帝国との戦いは、マジックス王国有利に進み、遂に帝国の首都まで進軍をすませていた。

「このまま行けば、一週間以内には、帝国は、我らの物になりましょう」

 ダーガの報告にユーシャが満足そうに頷く中、伝令兵が息を切らしてやってきた。

「大変です! 本国から、リリン将軍が参りました!」

 その一言に緊張が走る。

「このタイミングでやってくる理由がない筈だ?」

 思案するダーガにユーシャが言う。

「父が帝国への本格的な侵攻に二の足を踏んだのだろう。きっと、領土の一部と引き換えに休戦するようにという話を持ってきたのだろう」

 余裕を崩さないユーシャであったが、リリンと共に現れた者を見て、戸惑う。

「この度の素晴らしきご活躍、このリリン、ただただ、賞賛するしかございません」

 形式的な言葉にユーシャが作り笑顔で答える。

「リリン将軍にそういって貰えるとは、私も嬉しく思う。それより、どうして、そこにヤーが、オバ王国国王が居るのだ?」

 リリンと一緒にやって来たヤーリテが答える。

「もちろん、休戦の為の条約提携の為の第三者の代表としてやってきました」

 ダーガが言う。

「帝国がヤーリテ殿下を第三者と認めるか、疑問ですが?」

 それに対してヤーリテが答える。

「あちきは、第三者の代表と言った筈ですけど?」

 それを聞いてユーシャの頭が高速で回転し始める中、ダーガが質問を続ける。

「しかし、休戦については、国王陛下もお認めの事なのでしょうか?」

 リリンが頷く。

「はい、文官のクリ殿が、強固に反対されておりましたが、最終的には、国王陛下の判断に同意していただけました」

 ユーシャは、取り繕うのを止めた。

「どうやってベニス連邦を落した? お前は、ベニス連邦を含む第三者の代表として国王陛下と交渉したのだろう?」

 それに驚きの表情を隠せないダーガ。

「まさか、ベニス連邦にとっても帝国は、邪魔な存在、それをどうして庇ったのですか!」

 ヤーリテが答える。

「簡単ですよ、マジックス王国内部で密かに動いていた富国強兵の動きを商人達がベニス連邦に伝えていた。詰り、帝国が落ちれば、次は、ベニス連邦だと気付いたって事です」

 リリンが複雑な表情でユーシャ達を見る。

「ユーシャ殿下、その動きについては、本国に帰ってから、私にも詳細な説明をお願いいたします」

 ユーシャは、拳を握り締めて言う。

「私の判断ミスだ。帝国の侵攻でオバ王国が落ちると予測して、お前がオバ王国の国王としてベニス連邦を動かす可能性に対処していなかった」

 ヤーリテが頷く。

「最後の最後まで軍を派遣しなかった事も、オバ王国とマジックス王国の関係が万全の物でない証明になった」

 無言で睨み合うヤーリテとユーシャ、そして諦めたようにユーシャが言う。

「今回は、引こう。しかし、私の覇道は、まだ終わっていない」

 ヤーリテが俯き言う。

「どうしても止められないの?」

 ユーシャは、強く頷き、リリンを見る。

「交渉の方は、任せた。今回の進軍の費用は、確実に回収しろ」

 リリンが頭を下げる。

「マジックス王国に損失をださせません」

 こうして、ユーシャによる帝国侵攻は、中断された。



 第三者としてのヤーリテとマジックス王国代表のリリンが皇帝陛下、ファイアーノ=F=レッケスと休戦交渉を行う事になった。

「そちらの要求は、全て飲もう。この戦いが我々の負けだという事を認められないほど老いたつもりは、ないのでな」

 リリンが頭を下げる。

「それでは、このヨークス=GS=マジックス陛下の署名が入った休戦条約書にサインをお願いいたします」

 ファイアーノは、直にサインを書き、国印を捺す。

 それを見届けたヤーリテが言う。

「オバ王国の国王であり、ベニス連邦を含む今回の休戦の仲介を行った国々の代表、ヤーリテ=DD=マジックスがこの休戦条約の成立を確認しました」

 周りから安堵の息が漏れる中、強い意思を宿らせたファイアーノが言う。

「我々は、決して大陸征服を諦めたわけでは、ない。内部を粛清し、再びお前達に挑むときが来る事を忘れるな!」

 リリンが正面からその言葉を受け止めて言う。

「ヨークス陛下に今の言葉を伝えさせていただきます」

 こうして休戦が成立したのであった。



 マジックス王国の王宮のユーシャの私室。

 内乱に失敗して逃げてきた帝国貴族達が自分の魂を燃やす様を見るユーシャにシャイが声をかける。

「やはり、今のままでは、覇道を目指すのは、無理なのでは?」

 その言葉にユーシャが頷く。

「今回の事で痛感した。どんな小国であろうと国王になったヤーと違い、どんなに権力を持とうと王子でしかない私では、出来る事の限界があると」

 シャイが言う。

「それでは、その様に進めて宜しいでしょうか?」

 ユーシャが頷くとシャイは、行動を開始した。

「もう、これで後戻りは、出来なくなったな」

 そして、ユーシャは、手に持っていたワインと共に僅かに残っていた躊躇いを飲み込むであった。

最後にユーシャが言っていましたが、国王とそれ以外では、出来る事に差があります。

だからこそ、ヤーリテは、国王である事を望みました。

その拘りと前回の踏ん張りが今回の逆転劇を引き寄せました。

次は、遂にユーシャがその本性をさらけ出す。

そして、ユーシャとヤーリテの間に絶対に戻せない地割れが生まれる。

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