勝手に建国祭に出る姫
「レッケス帝国の建国祭ねー」
ヤーリテは、帝国から送られてきた招待状をヒラヒラさせながら言う。
「出席をするべきでは、無いと思われます」
リンの言葉に、ヤーリテが真剣な顔で言う。
「その発言の根拠は?」
リンが想定外の質問に沈黙する中、ジェネが即答する。
「オバ王国は、マジックスと協定を結んでいて、そのマジックスと敵対関係にあります」
ヤーリテが頷く。
「そうだね。問題は、それが、断る十分な理由になるか。マジックスからもお義理のお祝いの言葉が届けられるしね」
ブレーダが肩をすくめて言う。
「よくある、政治的な対応だな。それでうちらは、どうするんだ?」
リンが慌てて言う。
「それでしたら、私が、代わりに行かさせてもらいます」
ヤーリテが首を横に振る。
「ここは、あちきが行くよ」
こうしてヤーリテがマジックスと長年、敵対関係にあるレッケス帝国に向かう事になった。
その夜、ジェネは、一人でヤーリテの寝室に来ていた。
「何を企んでいる?」
ヤーリテが言う。
「皇帝ファイアーノ=F=レッケスと兄貴と熾烈な争いをする筈だったラオウ=P=レッケスを直接見てみたかったからだ」
それを聞いてジェネが言う。
「あれは、生まれてきた時代が悪かった。ユーシャ殿下が居なければ、十分に覇王になれる器だった」
「兄貴の器は、それを越すって事?」
ヤーリテの言葉にジェネが頷く。
「そうだ。そして、姫王の登場で、時代の流れが大幅に変更をよぎなくされた」
「結局あちきは、会わないと駄目だな」
ヤーリテの言葉にジェネが言う。
「止まらなくなるぞ?」
ヤーリテが頷く。
「だろうね。一気に時代が流れる可能性がある。それでも、会っておかなければいけない。そうしなければ兄貴との対決が出来ない」
ジェネが悲しそうに言う。
「悲しい結末になる可能性が高いぞ」
ヤーリテが遠くを見ながら言う。
「それでも、やらないと……」
言葉にしないヤーリテの気持ちを察し、ジェネが言う。
「私は、姫王の盾としてこの命を懸けます」
ヤーリテが辛そうな顔で言う。
「その言葉、確かに受け取りました」
「やっぱり兵士が多いな?」
ヤーリテのお供として来たブレーダにヤーリテが頷く。
「レッケス帝国は、完璧な軍事国家。国を栄えさせるのは、領土の拡大だと疑って居ないからね」
それを聞いてシースが言う。
「それが故に、マジックスやベニス連邦に何度と無く侵攻を行っています」
ヤーリテは、シースを指差して言う。
「それを何度も打ち返しているのは、この元マジックスの騎士さん達なんだよ」
それに苦笑するシース。
「それでもそれを支えていられるのは、王族の強力な魔法です」
ヤーリテが王城を見上げ言う。
「だからこそ、レッケス帝国の連中は、マジックスの王族を毛嫌いしている。それなのにあちきに招待状を送ってきた。何かあると思って良いだろうね」
レッケス王城に入城するヤーリテ達であった。
式典の前に、ヤーリテは、用意された部屋に驚く。
「シース、どう見る?」
ヤーリテの言葉にブレーダが言う。
「随分と豪華な部屋だが、問題があるのか?」
それを聞いてシースが眉を顰めて言う。
「この豪華さは、まるで敵国の姫君を人質紛いの婚姻を結ぶ為のそれだ」
ヤーリテが苦笑する。
「そっちで来たか」
そして、騎士が伝令に来る。
「ヤーリテ殿下、皇帝陛下が御呼びです」
シースが不機嫌そうにするが、ヤーリテが頷く。
「解った、案内して」
こうして、ヤーリテは、レッケス皇帝との対面に向かう。
「よく来た。我が、レッケスの皇帝、ファイアーノ=F=レッケスだ」
ヤーリテは、礼儀正しく会釈をして返礼する。
「ご招待に感謝します。あちきが、オバ王国国王、ヤーリテ=DM=マジックスです」
それを聞いて玉座に座るファイアーノの傍に立っていた、強い意志を持つ目を持った男、ラオウ=P=レッケスが言う。
「マジックスの姫が新しい国の国王ですか?」
「はい。そして、オバ王国は、マジックスと軍事協定を結んでいます」
ヤーリテの答えにファイアーノがつまらなそうに言う。
「解っている。お前の下に居る、ジェネ将軍には、何度も我が侵攻を邪魔されている」
謁見の間に緊張が走る中、ラオウが言う。
「そんな状況で貴殿を招待した理由は、簡単だ。私の后になれ。そうすれば、更なる権力が手に入るぞ?」
ブレーダが驚くが、ヤーリテもシースも驚いていない。
ヤーリテは、笑顔で答える。
「残念ですが、あちきは、自分が王で居る事を選びます」
それを聞いてラオウが言う。
「お前の企みぐらい解っている。お前の兄、ユーシャへの牽制、違うか?」
ヤーリテが笑顔を崩さず言う。
「何を根拠にその様な事を?」
ラオウが肩をすくめて言う。
「ユーシャの野望に気付いていないのは、呑気なマジックス国王だけだ。マジックス国内でも富国強兵の動きが激しく、周囲の国にもじっくりとその魔の手が伸びている。それに対抗できるのは、レッケス帝国のみ!」
ラオウの強い視線を正面から受け止めてヤーリテが言う。
「あちきがオバ王国の国王であるうちには、兄貴は、暴走させません」
睨み合う二人。
そして、ファイアーノが言う。
「お前は、あくまでレッケスに下るつもりは、ないと言うのだな?」
ヤーリテが頷くとファイアーノが告げる。
「ならば、覚悟するが良い。次の侵攻は、お前達、オバ王国なる」
ラオウが笑みを浮かべて言う。
「最後のチャンスだ。私の后となり、共に世界を手にしないか?」
ヤーリテが首を横に振る。
「あちきは、あちきの王道を進みます」
そして、背を向けるヤーリテ。
その行く手を阻もうとする兵士達。
シースが決死の覚悟で剣を構えるが、ラオウが言う。
「行かせろ。招待状を送った相手を武力で、確保したなど、恥さらしな真似が出来ないからな」
ヤーリテが振り返り頭を下げる。
「レッケスの皆様が誇り高きお方で良かった」
ファイアーノが告げる。
「しかし、建国祭が終わった後、お前の国への侵攻を開始する」
ヤーリテが頷く。
「その開戦通告確かに受け取りました」
そして、ヤーリテは、建国祭が始まる前にレッケスを出て、オバ王国に戻る事になった。
「それでは、レッケス帝国と全面対決ですか?」
国に戻ったヤーリテの報告にリンが驚く。
「とんでもない事態になったな」
ポンも動揺する中、ジェネは、冷静に告げる。
「準備は、整っている。いつでも防戦は、可能だ」
ヤーリテが頷く。
「最優先は、街道の安全。危険区域の農民には、一時避難通知して」
そんな開戦への動きの中、途中、ヤーリテ達と別れマジックスに向かったシースが帰ってきた。
「大変です!」
その言葉にヤーリテとジェネが苦々しい顔をする中、シースが続ける。
「マジックの兵は、自国領土の防衛を最優先し、オバ王国への出兵は、無いとの事です」
リンが慌てる。
「馬鹿な、何の為の軍事協定だと思ってるのだ!」
ヤーリテが首を横に振る。
「帝国は、直接、オバ王国を攻められない、その為にマジックスの領土を通る。そこの周囲の防衛を優先するって事になれば建前が立つんだよ」
その言葉にブレーダが言う。
「まさか、マジックスは、オバ王国を見捨てるつもりか!」
ジェネが苦笑する。
「マジックスにしてみれば、オバ王国も目の上のたんこぶだ。帝国とぶつかりあい、消耗するというなら十分に選択に適う手だろう」
リンが唾を飲み込み言う。
「それでも、ジェネ将軍を失うのは、マジックスにとっても大きな痛手の筈です」
ヤーリテが頷く。
「失えばね。でも、マジックスは、ジェネだったら、勝てないまでも負けないと思っている。マジックス、兄貴のシナリオでは、オバ王国を帝国に奪わせ、ベニス連邦の危機感を煽り、一気に帝国を滅ぼす展開に向かいたいはず。その為にも戦力は、出来るだけ失いたくないんだよ。当然、オバ王国失ったジェネ達も取り込むつもり」
シースが言う。
「詰り、ユーシャ殿下は、オバ王国を犠牲にしてでも、一気に帝国との関係を解決させるつもりなのですか?」
ヤーリテが首を横に振る。
ブレーダがいらだちながら言う。
「じゃあ、どういう意味なんだよ!」
ヤーリテが言う。
「大陸制覇。帝国を飲み込み、そのままベニス連邦を配下に治め、残った国々をマジックスの組み込む」
あまりにも壮大な話に返す言葉が無い一堂の中、ジェネが言う。
「ユーシャ殿下は、その為に、ずっと力を蓄えていた。一度はじまれば、止まらないぞ」
困惑したブレーダが言う。
「もしも、そんな事になったら、どうなるんだよ?」
ポンが汗を拭いながら言う。
「間違いなく戦乱になる。そして、おびただしい量の血が流れるだろう」
青褪める一同にヤーリテが宣言。
「それを防げるのは、あちき達だけ。ここで帝国を防ぎきれば、流れは、変えられる。オバ王国がある限り、マジックスの、兄貴の覇道への道は、始まらない。絶対に負けないよ!」
強く頷く一同であった。
ここに来て、一気に動き出しました。
帝国の動き、そしてそれに合わせる様に動くユーシャ。
遂に公になるユーシャの覇道。
次から帝国からの激しい侵攻。
それに打ち勝つことができるのだろうか?




