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姫王伝  作者: 鈴神楽
12/17

勝手に世界の命運を賭ける姫

 飛び起きるヤーリテ。

「まさか、こんな事が本当に起こるのか?」

 困惑するヤーリテだったが、覚悟を決める。

「万が一にもこれが実現する事があったら駄目だ」

 立ち上がるヤーリテであった。



 マジックス王国の第一王子、ユーシャの寝室。

『兄貴、起きろ』

 その声に目を覚ますユーシャ。

 そして、自分の枕元に立つヤーリテを見て、苦笑する。

「態々幻覚を作らなくても夢で良かったのでは、ないか?」

 それに対して幻のヤーリテが答える。

『万が一にも夢だと思われて動きが遅くなったら面倒だから。今回のことは、今すぐに行動を起こさなければ間に合わなくなる可能性がある』

 それを聞いてユーシャが真剣な顔になる。

「お前がなりふり構わない事態とは、ただ事じゃないな?」

 幻のヤーリテが頷き、自分の見た予知夢の内容を伝える。

「馬鹿な男だ。しかし、実行されたら確かに大変な事になる。解った、こちらも最大限に尽力する」

 それを聞いて幻のヤーリテが姿を消す。

 ユーシャが立ち上がると、部屋の外に待機している兵士に告げる。

「緊急事態だ、即座に召集をかけろ」

 こうしてこの世界を守るための動きが始まった。



 あわただしく動くオバ王国の仮王宮の調理室では、闘志狼が言う。

『良いのですか?』

 すると夜食を作っていたユアがいう。

「出来る所までやらせてあげましょう。多分、自分達の力がどの程度の物か知る必要があるでしょうから」

『了解しました』

 闘志狼がそう答え、沈黙するのであった。


 三日後、マジックスの領地のある領主の居城をマジックスとオバ王国の連合軍が囲む異常事態に発展していた。

 その領土の領主、メリケ=C=コーラが爪を齧りながらいう。

「どうしてだ! どうして、ここまで本格的な鎮圧が行われるのだ!」

 それに対して、側近が慌てて進言する。

「ここは、直にでも開城し、我が領土に何の疑いが無い事を証明するのが最善かと思われます」

 メリケは、爪を噛み切りいう。

「そうだな、もしかしたら、隠蔽しきれるかもしれない。我々が何をしているのかなど知られているわけが無いのだからな」

 その時、この世界では、珍しい、現代風の女性物ブランド物を思わせるスーツを着た女性が現れていう。

「その可能性は、低いわね。特にここの王子様の魔法は、厄介だわ」

 それを聞いてメリケが怒鳴る。

「何が厄介だというのだ! 所詮は、ただの炎、どんなに強力であろうが、この私の召喚魔法の方が上だ!」

 女性は、苦笑する。

「残念だけど、そんな単純なものでは、無いわ。それにお姫様の方も、聞いていたより数段面倒な魔法みたいだしね。強力なドラゴンといい、よくこれだけの魔法を神々が見逃してるものね」

 メリケが苛立ちを籠めて怒鳴る。

「とにかく、こうなった以上、時間が足りない! ここは、一度開城して、やり過ごすしか手が無いのだ!」

 それに対して女性が言う。

「時間を短縮すれば良いのよ。この城の人間を全部生贄にすれば、十分に間に合うわ」

 それを聞いて側近達が驚く。

「何を馬鹿な事をいっているのだ! 領主様、やはりこの妖しい女のいう事は、信用できません! 今すぐ契約を破棄すべきです!」

 それに対して女性が言う。

「私も貴方の力を認める。でもね、この世界の人達は、どうなのかしら? 最高の魔法の使い手、それは、マジックスの王族。それで良いの?」

 メリケが自分の噛み痕だらけの爪を見て言う。

「城の者を生贄にしたら間に合うのだな?」

 女性が笑みを浮かべる。

「間違いないわ。この私、コンダクターの幹部の一人、トップサービスウーマンの言葉に嘘は、無いわよ。貴方は、宣言するだけで良いわ、世界壊しの魔王、バルバルスの召喚の為、この城の住人を生贄にすると」

 それを聞いて、メリケが告げた。

「誓う! 我が王道の為に、この城の者の全ての命をバルバロスに捧げる事を!」

 その次の瞬間、城内の全ての命が食われる事になった。



「命が収束しはじめている」

 ユーシャのメリケの居城を睨み告げた時、上空にBBBが現れ、その背中に乗っていたヤーリテが言う。

「兄貴、乗って。時間が本格的にないから、あちきらだけで突入する」

 それを聞いてユーシャの従っている将軍ダガーが言う。

「殿下、単独での突入は、危険です。せめて我々が行くべきでしょう」

 それに対してユーシャが首を横に振る。

「残念だが、ここから先の事態にお前らでは、足で纏いだ。行くぞ、シャイ」

「はい」

 ユーシャの言葉に答え、その秘書、シャイもBBBの背に乗る。

 そして、BBBが言う。

『SSB、お前も感じるか?』

 本当に珍しい事にBBBが緊張した声で告げてきた。

 シャイが頷く。

「ええ、これは、とんでもない奴が呼び出されようとしている。本格的にこちらの世界に来る前に押し返さなければ、この世界が飲み込まれるわ」

『派手に行くぞ!』

 BBBの放ったブレスが、メリケの居城に大穴を開ける。

 突入したBBB達の前には、一人の女性と、その後ろで腰を抜かしているメリケが居た。

「凄い力ね?」

 軽い口調で言うトップサービスウーマンにシャイが飛び掛る。

「貴女は、危険です。排除します!」

 シャイの手がドラゴンのそれに変化し、トップサービスウーマンに振り下ろされる。

 しかし、その手は、あっさり受け止められた。

「もう少し、時間が必要なのよね。その間、相手してあげる」

 即座に完全に龍の姿に変化するシャイ、SSBが先ほどのBBBのブレスの数倍の威力を持つ光のブレスを放つ。

 だが、トップサービスウーマンは、それすらも片手で受け止める。

『こっちもだ!』

 BBBが手加減無しの黒き破壊のブレスを放つ。

「あらあら、凄いわね」

 トップサービスウーマンは、もう一方の手を上げてそれを受け止めてしまう。

「最強のドラゴン二体のブレスを同時に受け止めるなんて、神様クラスの力をもっているのか?」

 流石に動揺するヤーリテと違い、ユーシャが力を絞り込み告げる。

「例え神とて、私の術は、有効の筈だ!」

『スプリットファイア!』

 トップサービスウーマンの体から炎が上がる。

「なるほどね、魂そのものに干渉して、そのエネルギーを炎に転化する。凄い能力だけど、貴方程度が燃やせる量では、私の魂を燃やしつくすのは、百年かかっても無理ね」

 魂が炎に変換されているのに平然としているトップサービスウーマン。

「まだだ! まだこれからだ!」

 ユーシャの叫びに応え、トップサービスウーマンの体から燃え上がる炎は、大きくなるが、それだけであった。

「あちきの力も食らえ!」

 ヤーリテが打ち出す幻覚がトップサービスウーマンを覆う。

 彼女の視界に無数のBBBとSSBが現れ、一斉にブレスを放つ。

 それを見て高笑いをあげるトップサービスウーマン。

「お馬鹿さん。どんなに凄い幻覚でも、それら全てを超える力の前には、無力なのよ」

 全てのBBBとSSBが消滅し、同時に吹き飛ばされるヤーリテ。

「ヤー!」

 ユーシャが慌てて駆け寄る。

 幻覚が消えて、本当のBBBとSSBも吹き飛ばされていた。

「時間が来たみたいね。教えておいてあげる。ここに現れる私のもう一人のお客様は、私より強いの。前に居た世界を壊しちゃってね、取り敢えずこっちの世界に来る事になったの。まあこの世界もどれだけ保つのかしら?」

 トップサービスウーマンの言葉にメリケが驚く。

「そんな話は、聞いていないぞ!」

 それに対してトップサービスウーマンがあっさり頷く。

「はい。私も言っていませんから。貴方との契約では、この世界の誰も勝てない存在を呼び出し、この世界に王にする事。その契約は、守りますが、この世界自体が無くならないとは、一言も言っていませんよ」

 メリケが叫ぶ。

「騙したな!」

 トップサービスウーマンが心外そうに告げる。

「そんな、私は、何一つ嘘をついていませんし、少し考えれば解ることですよ、この世界の誰も勝てない存在を呼び出したら、それを止める力を持つ者が居ないって事に」

 愕然とするメリケにユーシャが叫ぶ。

「馬鹿が、直に召喚を止めろ!」

 その言葉にメリケが慌てるが、トップサービスウーマンが近づき言う。

「そんな事をして良いのですか? 貴方は、世界壊しの魔王、バルバロスを召喚の為、臣下の命まで捧げた、もう後戻りが出来ないのですよ? 貴方に残された道は、バルバロス様がこの世界を壊しきるまでの間、この世界の王で居ることのみ。もしかしたら、貴方の命があるうちは、この世界も保つかもしれませんよ」

「騙されるな! 世界壊しの魔王が来たら最後、この世界なんて一年も保たない!」

 ヤーリテが意識を取り戻して叫ぶが、メリケが叫ぶ。

「五月蝿い! もう手遅れなのだ! 良いだろう、この世界もくれてやる! だが、私は、この世界最強にて最後の王となる!」

 その目からは、もはや正気の色が無かった。

 そして、空間が砕かれ、一人の老人が現れた。

「これが、本当に世界壊しの魔王なのか?」

 驚くメリケだったが、トップサービスウーマンが膝をついて頭を下げる。

「お疲れ様でした。つきましては、約定の方は、よろしいでしょうか?」

 老人が頷く。

『よかろう。まずは、外の虫を排除しよう』

 老人が手を振った直後、ユーシャが振り返り愕然とした。

 マジックスとオバの連合軍が居た筈の場所には、空間の皹が生まれ、如何なる抵抗も無視して、連合軍を飲み込んだ。

 ヤーリテが叫ぶ。

「BBB、全力の一発を食らわして!」

『解っている!』

 BBBが叫び、全ての力を振り絞ってブレスを吐き出す。

 しかし、老人は、避けもしない。

 直撃を食らっても微動にもしない。

 ユーシャが老人に駆け寄り叫ぶ。

「SSB、その命を捧げろ!」

 SSBが頷き、人の姿に戻ると老人に抱きつく。

『ドラゴンスプリットファイアブレイク』

 ユーシャの魔法でSSBの魂が一気に炎と化し、爆発した。

 SSBの、最強クラスのドラゴンの魂を使った、この世界で最強の攻撃が老人に直撃した。

 しかし、炎が消えた後には、平然と立つ老人、世界壊しの魔王、バルバロスが立っていた。

『次は、どうする?』

 呆然としていたメリケがその言葉が自分に言われた事に気付き言う。

「どういう意味だ?」

 バルバロスが面倒そうに言う。

『私に相応しい世界に移るまでは、ここに居る必要があるのだ。それまでは、お前が必要なのだ、お前が邪魔だと思っているやつがいるならその間に言えば全て壊してやろう』

 メリケが歓喜した。

「やっぱり、私は、神に選ばれた存在だ! まずは、そこの二人だ! その後は、マジックス国王だ!」

 バルバロスがつまらなそうにヤーリテとユーシャを見る。

『多少は、他と違う虫みたいだが、所詮は、虫けら、一匹ずつ潰すのも面倒だ』

 ユーシャは、悔しそうにし、ヤーリテも死を覚悟した。

 そんな中、靴音が聞こえてきた。

「あら、こんな時に来客? まあ、誰が来ても関係ないでしょうけどね」

 トップサービスウーマンが余裕の態度で、自分達の後方にあった為、無事だったドアを開けた。

 そして、その姿を見た時、硬直した。

「嘘……」

 そのまま動かないトップサービスウーマンの横をゆっくり歩いてきた侍女が子供の狼と通り過ぎる。

「ユア、来てくれたの?」

 ヤーリテが呆然とした顔で言うと、ユーシャが悔しそうに言う。

「お前は、神の分身みたいだが、分身の力であの魔王に勝てるのか?」

 それに対してユアが自分の小指を見せて言う。

「力は、本当の力の小指の先程も出ないんで、けっこう大変ですね」

 それを聞いてメリケが高笑いをあげる。

「小指の先程だと? 例え神の分身だと言っても、そんなちっぽけな力では、意味がなかろうが!」

 それに対して、トップサービスウーマンが震えながら言う。

「たかが小指の先程の力でも、どれだけの物かも想像がつかない」

 バルバロスが両手を振り上げる。

『滅びよ』

 全力で放たれた力と人の体ほどに大きくなった闘志狼がぶつかり合う。

『まだだ!』

 更に高まる力、余波だけで山がえぐれ、大地が消滅していく。

 それ程の力を受けているのが、闘志狼は、怯まない。

 それどころか、更に踏み込んでいく。

『馬鹿なこれ程の力が存在するのか?』

「どうなっているのだ! この世界の誰にも負けぬ力だと言っただろうが!」

 メリケの言葉に顔を真青にしたトップサービスウーマンが言う。

「あのお方に勝てる訳が無い」

 メリケが苛立ちを籠めて言う。

「あれが神だからか? 何者だというのだ!」

 トップサービスウーマンが恐れを籠めて告げる。

「神々の中でも最高峰の六つの極の神の一柱、戦いを司る絶対者、全ての神の中で最強なる存在、聖獣戦神、八百刃ヤオバ様」

 その解説が終わる前にバルバロスは、闘志狼に爪の前に打ち砕かれる。

「貴女にも色々聞かせてもらう事になるわよ」

 ユア、八百刃の分身の言葉にトップサービスウーマンが頷くしか出来ない。

「随分と大人しいな?」

 ユーシャの言葉にトップサービスウーマンが苦笑する。

「私なんかでは、逆らうなんて言葉が思い浮かぶ事すら出来ない存在なのよ」

 そしてユアが言う。

「さてと、このままだと色々面倒だから、無かった事にしておきますか」

 ユアは、バルバロスの欠片に手を当てて言う。

「ここにある力を有効に使わせてもらってね」

 ヤーリテとユーシャの意識があったのは、そこまでであった。



「どうするつもりだ!」

 ユーシャが飛び起きた時、そこは、彼の寝室であった。

「全てが夢だったのか?」

 その時、ヤーリテの幻が現れて言う。

『そういう事にされたみたい』

 それを聞いてユーシャが言う。

「どういうことだ?」

『ユアが居なくなった。そして、誰もユアの事を覚えていない。ただ、あの狼だけが、あちきのペットとして残っている。歴史その物が完全に書き換えられたみたい』

 ヤーリテの答えに唾を飲み込むユーシャ。

「随分ととんでもない存在だったのだな。そして、あの狼が残っているということは、あの約定もそのままと言う事か?」

 ヤーリテの幻が頷く。

『そして、今回の事は、あちき達の力など、自分の前では、無力だって事を教える為の物だったのかも』

 ユーシャにも反論の言葉が無かった。

 しかし、ユーシャが決意を籠めて言う。

「それでも、私は、覇道を進むのみ」

 ヤーリテが悲しそうな顔をしたが直に応える。

『あちきは、負けない』

 そういい残してヤーリテが消えていくのであった。

 ユーシャが鋭い目をして言う。

「神の前では、全てが無力だとしても、私は、足掻き続ける」



 同時刻、ヤーリテが闘志狼に言う。

「あちきは、神様に頼らない。神様の力ならどんな絶望すらも打ち砕かれるかもしれない。それでも、あちきは、自分の力で自分達の道を生み出したい」

 闘志狼は、何も答えない。

ユアが本気モードを見せて退場です。

洒落抜きでバランスブレイカーなので、こうしておきました。

こっからは、闘志狼は、ただ居るだけになります。

遂に何度か話題にあがった帝国が出てきます。

帝国がヤーリテとユーシャの争いにどう関わってくるのか?

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