宇宙暦435年9月6日 2347時
宇宙暦435年9月6日 2347時
あれから5日。
全く何事もなく平穏無事に、後ワープ2回残り14時間程で第1宇宙艦隊司令部に着く宙域まで来た。
新造艦故のハード・ソフト両面のトラブルがあるもの、として気を張っていただけに喜んでいい事なのに肩透かしを食らった気分だ。
因みに既にブランシュ星系には入っており、改めてエリシア少佐の親の権力を思い知る事になった。
そして、あの日の内に訓練日程を作って持ってきたこの星系の領主の娘であるエリシア少佐の口数も減っていた。
なんだかなぁと思ったそんな時だ。
―総員配置!識別不能艦数隻接近中!くりかえす、総員配置!識別不能艦数隻接近中!―
自室でようやくMF-01とAAS-01のマニュアル2冊だけになり、AAS-01のマニュアル概要を読み終えたところに警報が当直の一人だったエリシア少佐の声で発せられた。
「えー、公爵領で何やってんのっ」
ありえねーだろと愚痴をこぼしつつ艦橋に降りるとメインスクリーンに小さく映された艦影3隻。
「ステルスそのまま、パッシブセンサーであの3隻を洗えっ、副長、報告」
降りきるまでに5秒程かかるのでとりあえず、その間に出来る指示は出しておく。
「方位10時半下角13度、7級艦1隻と5級艦2隻の小部隊です、光学センサーで見る限り所属や艦名を確認できません」
それに肯いて答え、スクリーンを見つめるがまだ最大望遠画像の様で細かい所まで確認できない。
「まっすぐこっちに進路をとってるわね・・・」
そう、おかしいのはソレだ!
「ステルス効いてないのか?」
「正常作動してますー、偶然でしょうかぁ?」
いち早く駆けつけたティエナ少尉が自分のコンソールを見て報告する。
「ストレ、艦橋に入ります」
ストレが艦橋に来て姿を見て思い出す。
特級の軍事機密であるこの艦、いろんな所にバレない様にステルスは作動させっぱなしだ。
・・・ったのだがどういう訳か、あの3隻はこちらを真正面に捉え進路をとっている。
「「宇宙海賊か!?」
そうこうする内に、何気に息ピッタリのミランダ中尉とケリストラン少佐が走りこんで配置に着き。
「何なんだよったく」
「何事じゃ?」
アナハル大尉とカロン大尉が席に着き、キロン大尉が艦橋に現れた。
「ミランダ中尉進路変更10時半下角13度、3隻を真正面に捉えた後残りの距離を保って円周運動へ移行!」
「あいよっ」
ミランダ中尉に指示を出して様子を伺う。
あちらさんが偶然、こちらに向かう進路を取っていたのならこれで進路がズレていくはず。
「アナハル大尉DCS起動、まだFCSは立ち上げるな、相手の意思を確認してからだ」
「了ー解」
「あー!あっちの人達も進路変更、追随してきますー」
アナハル大尉に釘を刺して様子を伺うとティエナ少尉のちょっと、楽しそうな報告が来た。
「バレてるな」
「バレてますね・・・」
「FCS起動していいかい艦長さん?」
この忙しいのに面倒臭そうに確認してくるアナハル大尉にほんの少しムッとしているとカロン大尉の珍しい大声が聞こえてきた。
「ん?・・・!!おいティエナ少尉っ左舷中央の光学ステルス3基が稼動してないぞ!なにやっとるじゃっ!!」
「えーこっちのコンソールじゃ全基稼動してるって出てるよー?」
「なんじゃと!?」
「ミルト様、光学画像からブランシュ領の私兵艦隊所属艦と判明しました」
チッこんな時に不具合かっ・・・
その上最上級貴族にこの艦を捉えられるという失態、これで辞められないかな・・・いや逃げる間もなく死刑か・・・そう思ったが今の事態にはそれで納得できる。
「カロン大尉は可及的速やかに修復、ミランダ中尉出来るだけこっちの見えてる所を見せないよう微妙に進路ずらせ」
「了解じゃ」「あいよー」
「あ、艦長あっちの人達から通信ですー、それと主砲開きましたよー」
「通信か・・・開け、FCSは待機のまま、ミランダ中尉いつでも回避運動取れるよう準備もしておけ」
「あいよっ」「了ー解」
「ストレ、どこまで喋ってもいいのかな?」
指示を出した後でこちらが喋れる通信内容をストレに確認してみる。
「・・・こうなっては仕方ないですね、こちらが宇宙艦隊所属である事と極秘任務に就いているとだけお願いします」
「わかった、頑張ってみる・・・」
ほとんど何も言うなって事ね・・・orz
「艦長回線開くよー」
「・・・ん、どうぞー」
もう半ば投げやりだ、なるようにしかならんだろ・・・はぁ、鬱だ・・・