宇宙暦435年8月31日 0800時
宇宙暦435年8月31日 0800時
「・・・当たった?」
けだるいいつも通りの朝、出勤前のひと時をボーっとすごしていた時ソレは来た。
「はい」
「本気と書いて「マジです」っすかぁ~・・・て、ぇ?」
「・・・ですから、この度軍の、特別懸賞制度の特別賞に、貴・方・様が、御当選されましたので、こうして私が、伺っているわけですよ」
『これでもか!』って程言葉を区切り強調して説明してくる少佐の襟章を付けた20代後半と見える女性。
聞く所によると統合作戦本部広報課課長補佐の肩書きを持つそうで・・・。
これまた中央から遠路遥々ようこそ・・・って!
「ぇ~と、俺・・・応募しましたっけ?そもそも貰っても・・・」
そう・・・当たったと言われても、そもそも応募した記憶が無いのだ。
軍の特別懸賞制度って言うのは人気の無い職業万年ナンバー1である軍人をどうにか確保する為に軍が始めた苦肉の策で、応募して当たった人に軍艦一隻あげますからその艦の艦長になって軍人してくださいね・・・って制度。
否認宇宙人や特定宇宙生物・宇宙海賊との戦闘、この一世紀の間に袂を別った3つの人類国家に対する防衛を主任務とする軍隊だが、職業別死亡率で常に三指を独占する(1位宇宙艦隊2位国境警備艦隊3位星系防衛軍)故に上記の通り人気が無い。
その軍隊の死亡率第1位をほぼずっと独占し続ける宇宙艦隊の艦一隻・・・を与えるのが特別懸賞制度。
余程クレイジーな性格をしてるか、金銭的窮地に立たされてる人でないと応募なんてまずしない。
それに俺は2光月(光の速度で2ヶ月)先が国境という辺境の寂れた星で営業する零細運輸会社と契約する一船長でしかないし、使ってる船だって親の遺産でとても首都星まで行ける代物でもない業務用1級船舶。
クレイジーな性格もしてないし貧乏である事は認めるがそこまで困窮してもない。
1級船舶っていうのは全長99mまでが家庭用船舶、その後は業務用(軍事用含む)で100m毎に1級から現在13級まである、つまり業務用船舶としては最も小さい船。
免許も200m級(以下2級)船舶を扱える2級船舶免許までしか持ってない。
軍艦は一番小さい哨戒艦でも3級からなのでつまり、貰っても乗れない売れない死ぬ危険有りのデメリット100%だ。
もし本当に私が当たったのだとしても辞退しかないだろ絶対。
「そうは言われましても、PC(※プライベートカードの略、DNAからお金から何まで全てこれ一枚なカード)を照合する限り貴方様で間違いないのです」
「んな事言われてもなぁ・・・イラナイし」
「ぁーもうっ、面倒なんでちょっと来てくださいっ」
「ちょ・ちょっとっ」
こうして俺は半分?いや殆ど拉致同然に、少佐の乗ってきた乗り物に押し込められた。