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宇宙暦435年9月19日 2256時

                    宇宙暦435年9月19日 2256時


1週間の訓練期間を終えようやく、正規の初任務5日目が後1時間ちょっとで終わる。

そんな今まで通り隠密航行中のアストレア談話室の一角。


「カロン大尉、護衛艦2隻の調子はどう?」


「今のところ問題ない、まぁもっとも細かい不具合や調整は新造艦には付き物だから楽観はできんがの」


この1週間と5日、護衛艦の故障修理や不具合の調整に追われろくに訓練出来なかったのは痛かった。

まず合流と訓練の初日。

受領してからすぐに動作確認していた1番艦の右舷後部対空宙4連装ビームファランクスが1基、エネルギーケーブルの配線ミスで吹っ飛んだ。

設計ミスでもなんでもなく、艦を建造していた工作機械のプログラムミスにより射撃用と砲塔動作用のケーブル配線を間違えていたのが原因。

出力や精度などの差こそあれ、この手の武装は家庭用船舶にはデブリや隕石の破壊、民間船には加えて対宇宙海賊の為全宇宙船に付いている。

それがこんな初歩的なミスを犯すなんて「何やってんだ造船工廠の奴等やつらは・・・」とその時は思ったものだ。

で・・・その後丸1日半、吹っ飛んだ砲塔の修理と1番艦2番艦の全ビームファランクスの配線確認についやされカロン大尉は徹夜。

そして修理・配線確認と全動作確認の作業が終わり、さぁ訓練だ・・・と思った3日目、今度は2番艦の対ENフィールド発生装置が1基熱暴走で緊急停止した。

これは本来開いているべき排熱用のダクトが設計段階のミスで埋められたままになっていた事が原因。

ちょうどユニットとユニットの接合面で穴が開けられずに作製され気付かれぬまま建造・・・と。

護衛艦の設計図を見直し、不具合箇所かしょを特定してからの穴開けと・・・丸々2日もこれに消えたのだ。

そして最大の問題となったのが、艦の姿勢制御や出入港時の徐行に使われる重力制御装置が1基・・・とんでもない事に作りかけだったのだ。

これは姿勢制御系の動作確認時に反応の悪さというか一定の動作をする時ある程度の人間なら確実に不審に思う程動きが悪く、ある程度以上だったカロン大尉が寝る間を惜しんでその原因を探してくれたからこそ発覚した。

これには皆唖然となったし俺は閉口した。

多分、工期の関係で誤魔化されたんだろう・・・が態々わざわざ『ちゃんと動いてますよーメンテいらないですよー』と報告する偽装工作まで!されていた。


「・・・、何かってからでは遅いからなぁ」


大きな問題でこの3つ、メンテナンスドアが開かないだとか砲塔旋回の同期がとれてなくて微妙にずれてたりとか・・・そんな小さな問題はそれこそ四六時中と言ってもいい程だった。

もうここまで問題だらけだと余計な勘繰かんぐりせざるをえない。

何か目的があってこの護衛艦なのだろう・・・と。

そして何でこんな事になったとなげく。

あぁ、エリシア少佐に今までは心の中で思っていた皮肉を遠回しながら本人にぶつける程度には、自分の身の上をなげいた。


「・・・なぁカロン大尉」


「何じゃ艦長?」


「新開発の軍艦ってこんなもん?」


「そうじゃなぁ・・・わしも新造艦に乗ったのはアストレアが初めてじゃからなんとも言えんが少しばかり不具合が多すぎると思うぞぃ」


「だよねぇ・・・民間輸送船の艦長やってた時に何度か知り合いの新造船見せてもらったり乗せてもらった事あるけど、ここまで酷い新造船はなかった」


疲れた様に言ったその言葉にカロン大尉も共感したのか・・・いや絶対しただろう疲れた顔でタメ息を吐いている。

実際今まで働きめだったからな・・・


「・・・しかも、偽装工作や隠蔽工作の嵐」


「そうじゃな・・・」


その言葉で俺の言いたい事にふと気付いたのだろう、一瞬カロン大尉も表情をけわしくした。


「・・・国境まで後2日、それまでに使い物に出来るかな?」


「全力を尽くす、としか言えんの・・・」


「おー!当たったっ!!」


俺達二人が苦悩してるそば暢気のんきにゲームしてるティエナ少尉をうらめしく思ったのは仕方ないと思う・・・。

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