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第086話 先生の本気

 誰かが吹き飛ばされ、何軒もの家が崩れる。瓦礫と化した家の中から平然と立ち上がり、立ち向かって行く者が一人。

しかし、手も足も出ず、一方的に殴られている。

黒帝は確かに黒焦げになって倒れていたが、傷は既に回復していた。


「こんな雑魚で俺を倒せるとでも思っていたのか」

「破壊の殺戮者とは、言い伝えよりも厄介だな」


 今度は加速して包身体強化もしてから黒帝に襲い掛かったが、片手で止められ、掴まれた腕は引き千切られそうなほどに引っ張られ、地面に叩き付けた後、また投げ飛ばされた。これで何度目か覚えていられないほど。


「あのSランク……戦っているというか、一方的にやられてるようにしか見えないぞ」

「見えるって言うか、やられてるな……」


 挑んでいるのはベルディナンドで、影でこっそりとハニエルが回復しているのにはまだ気が付かれていない。

 そのハニエルがベルディナンドに囁く。


「強化も限界よ、これ以上は貴方が自分を制御できないわ」

「解ってる。先生ってすげぇな……」


 同意は言葉で示さず、態度でも示さず、治癒魔法と身体強化を掛ける。


「あんな奴、どうやって戦ったんだ?」

「見てないから知らないけど、先生に不可能は無い……多分」


 火球が飛んできたのに気が付いて、ベルディナンドがハニエルを抱えて回避したが、その火球が建物に直撃し、大爆発と、周囲に居た冒険者達を吹き飛ばした。

 悲鳴と怒号が響き渡る。

 聖職者達が回復魔法を掛けて助ける。

 冒険者が動けなくなった仲間を運んで逃げて行く。


「そんなところに居たのか」

「安心しろ、お前の相手はおr」


 言い切らぬうちに黒帝に拳で殴られ、一撃で沈められた。

 今度は治癒魔法が届かないところまで。

 あまりの出来事にハニエルは全く動けず、気が付いた時には恐怖で震えていた。


「おまえ、ちょっと普通の聖職者と違うな?」


 鋭い眼光を向けられ、ハニエルは身体が硬直した。

 怖い。

 怖い、恐い、コワい……。


「結界を張ったか、無駄な事を」


 腕を伸ばし、結界に触れると握り潰す。

 結界が音もなく崩れた。


「嘘でしょ……物理特化だったのに……」

「無駄な事だ」


 今度は違う結界を張ったが、これが失敗だった。

 再び握り潰そうとした時に、その違和感に気が付かれてしまったのだ。


「ぐっ……なんだこれは、まるで聖女ではないか」


 隠れていた護衛の冒険者が黒帝に襲い掛かる……フリをして助けようとしたが、それも無駄だった。接近したと同時に吹き飛ばされたのだ。

 周囲の建物ごと四方に吹き飛ばされ、一瞬にしてハニエルと黒帝の二人の周囲には何もなくなったのだから。


「これで吹き飛ばないのなら普通ではないのは確かだな」


 勇者とパーティを組んでいた時でもこれほどの恐怖は味わった事が無い。

 こんなのと先生は戦ったのかと思う余裕もなく、自分を助けてくれる誰かを本能的に求めてしまった。


「んべっ」


 目の前の黒帝がこけた。

 そりゃ、もう、凄い勢いで顔から行った。

 痛そう。


「ベルディナンドなら保護したので安心して良いですよ。治療しに行ってください」 


 声を聴いただけで姿は見えなかったが、間違いなく先生だ。

 あのローブも見覚えがある。

 物凄い安心感が身体を廻ると、身体が軽くなった。

 スッと立ち上がって走り出すと、黒帝も立ち上がって止めようと襲い掛かったが、横から蹴られて吹き飛ばされた。

 こうも簡単に蹴り飛ばせるとは思っていなかったので蹴った方が驚いている。


「良い一撃です」

「すごいねー」


 油断していただけではなく、横からの攻撃というのは誰でも弱い。


「おまえはっ?!」


 ダメージは全くなかったが、プライドは十分に傷付けただろう。

 そこには見覚えのある姿が……。


「ほ、骨……が、なんで生きているんだ?」

「死んでますけど、この通り生きています。あなただってもう回復しているじゃないですか。化物ですか?」

「お前のような奴に言われたくはない」


 うんうん。

 って、先生はなんで同意してるの。


「残念ですけど、被害が大きくなり過ぎていますのでご退場頂きます」


 一瞬にして間合いを詰めると、黒帝にパンチをお見舞いした。

 しかし、何も起きなかった。


「何をしている?」

「中るかどうか試したんです」


 いや、先生、今普通にパンチしたよね。

 骨のままだったよ?

 骨の手がそのまま黒帝の胸に当たってはいるのだが、ダメージどころか困惑しかない。これが怒りを買うような行動には至らず、逆に疑いをかける。


「今度は何をするつもりだ」


 骨を鷲掴みにするとそのまま崩れた。

 先生の身体も崩れた。

 身に纏うローブも脱げてしまい、先生は黒帝の視界から消えた。


「何処へ行った?!」


 周囲を捜す。

 キョロキョロと見回すが、先生を見付けられない。

 あまりにも滑稽なので笑ってしまった。


「アイツ、先生が見えないみたいねー」

「ねー、ぷーくすくす」


 うわっ、こっち睨んできた。

 って、先生の背中が見えた。


「この魔法、便利で良いですね。歩かなくて済みます」

「そーゆ―言い方できるのって先生だけだと思う」


 凄い眼光で睨んでくると、先生の身体が崩れて行く……けど、修復もしている。


「お前、気持ち悪い奴だな……」

「あなたに言われたくありません……」


 骨が俺に向かってくる。

 怒りも憎しみも感じない。

 恐ろしい存在とも思えない。

 なのに、なぜ、俺は震えているんだ?

 確かにあの一撃は俺にダメージを、痛みを思い出させた。

 だが、それで終わった。

 俺を倒す程の力は……無い。


「今度は節約して戦わせていただきますね……身体硬化!!」


 マリアの身体が、正確には骨が硬くなる。

 その強度はオリハルコンに匹敵する。


「砕いてやるっ!!」


 黒帝の腕が襲い掛かる。

 その手が、その爪が、マリアの身体を引き裂いたと確信する時、姿が消え空を裂いた。思わぬ回避に姿勢が崩れ、黒帝はまた転んだ。

 先生は何食わぬ顔で立っていて、それが恐ろしいほどのオーラを纏っているのに気が付いたのは、まだ黒帝だけだ。

 次々と繰り出される攻撃は、触れる感触が伝わる前に消えていく。

 骨は歩いた形跡すら無く、ただ立っている。

 いや、立っているだけの様に見える。


「はっ!!」

「ぐはっ!!」


 カウンターだ。

 最小限の動きで、脇腹に肘が入った。

 だが、ココからさらにカウンターを……。

 一回でも触れられれば……。


「なっ……消えた?」

「中りませんよ。絶対に」

「そんな筈は……ないっ」


 無理に姿勢を変え、腕を伸ばし、骨を切り裂こうとする。

 だが、何度やっても空を切り、そのたびに強烈なカウンターを喰らう。

 逃げようと、隙を見出そうとするのだが……。


「おまえ、隙だらけだな!」

「そりゃ、何もしてませんからね」

「フン、なら次だ。次に会う時は必ずとどめを刺してやるからなっ」


 飛び立とうとして、浮いた直後に墜としました。

 逃がす訳ないじゃないですか。


「ご退場願いますとは言いましたが、逃がすのとは違うのです」


 先生怖いって、目が怖いよ。

 いや、目は無いけど。


「なんのつもりだ……」

「1000年。いえ、10000年は眠って貰います。残念ですが私の力ではあなたを殺す事は出来ませんので」


 リッカーがアイシャを抱きかかえて逃げ出した。


「みんなここから離れろっ」


 声が響いただけではなく、その心にまで突き上げた。

 それは、野次馬のように見ていた者達の心と足を動かす。

 アイシャはされるがまま受け入れつつも、先生から目が離れない。


「何をするつもりなの、先生……」


 遠く離れたようにみせて、実は大聖堂の屋根の上に移動しただけだった。

 そこにはハニエルと、その治療を受けたベルディナンドが待っていて、セイビアも少し遅れてやってきた。

 誰一人、一言も発する事なく、その視線はただ一人に集中しているのだった。







※おまけ



「遂にシルバーカラーまで来たぞ、どうなってんだこの町は

「……だから滅んでるのかな?

「……人の死体……?

「ちげぇ、こいつは悪魔だ。ココは悪魔が住んでいた町だったのか……

「ちっ、ベルディナンドか、厄介な

「ココってそんな名前の町なの?

「いや、その町はもうすでに滅んでいるし、俺達には行く事が出来ないな

「修ちゃんって意外と詳しいよね?

「この世界に来て歴史はちゃんと習ったからな

「歴史って苦手ー

「勉強しろよ……

「え、えへへ……



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