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第077話 聖女ハニエル、再び

 長雨が続き、街道は泥だらけで歩くのも面倒なほどのぬかるみが多いが、久しぶりの晴天になったので、長靴を履いて出発した。

 道中では商人の馬車がぬかるみにはまって立ち往生していたので、リッカーが馬鹿力を発揮して馬車を馬もいっしょに引っ張り出している。

 馬より馬らしい。



「褒められている気がしないわ」


 色々と感謝されたが、褒めるのが下手なのは商人としては致命的ですね。

 お礼に乗せて貰えたのはラッキーですが、荷物が少ないです。


「これから仕入れですか?」

「ああ、アルファディルも変わってな、取引もしやすくなったんだ。今じゃ何処でもポーションを買い求める客が増えてて良い商売ですよ」


 ポーションが多く求められるのは大規模な戦争か討伐か、何か有る事は間違いない。


「大怪我をした冒険者も聖地に行けば治して貰えるんで、ギルドにも人が溢れていますよ。まあ、大型討伐をやっている所為も有るんですが」


 リッカーは荷台で暴れないでください。

 御者台まで揺れています。


「なんの大型だ?! ドラゴンか、ドラゴンか、ドラゴンか?!」


 商人のおじさんが困っています。


「でも、その通りなんですよ」

「やったー!」

「やったったー!」


 お嬢様まで……。

 ですが、ドラゴンですか。


「何ドラゴンです?」

「えっ、とー……最近グリフォンが暴れてるって話をご存知ですか?」


 リッカーが落ち込みました。


「その所為で、大型魔物が現れ始めているらしいです」

「そう言えば、ギデオンと会った時レッドカラーを倒しながら現れてたわね」

「そう、それ。レッドカラーも現れていて、更に上のホワイトカラーも出たらしいです。それで聖地にはあちこちから冒険者が集まってきているんです」

「それっていつの話ですか?」

「まだ7日ぐらい前ですよ」


 なるほど、起きたばかりですか。

 それなら間に合いますね。


「ぬかるみが酷いですが、聖地までどのくらいで到着しますかね」

「このままいけば夜中には到着します。歩くよりはマシですよ」


 確かにその通りですけど、走った方が早いですね。

 ……馬の体力を回復させたら少しは早くなりますか。


「走らないの?」

「行かないの?」

「急いでも良いですけど、大型魔物がどのくらいか分かりませんので情報が集まるのを待ってからでもいいでしょう」

「あー、集めるの面倒だもんね」

「他の冒険者の仕事を奪う事にも成りますし、ここは少し楽しましょう」

「だねー」


 商人は三人の言っている意味は理解できたが、納得するのに苦労していた。

 何しろ一人はお嬢様……違う、なんだこの子の着てる服は……鉱石リザードかな。

 先生と呼ばれている人は……普通だな。

 うん……ん、この女性は……。


「も、もしかしてSランクのリッカーさんですか?」

「あー、そうだけど、いちいち触れ回らなくていいからな」

「え、えぇ……」


 って、ちょっと待て。

 この人が先生って呼んでるってどういう事だ?

 Sランク様だぞ、ドラゴンを一人で討伐する人が先生って呼んでるのか……。

 全然、全くもって、普通じゃなかった。


「ねぇ、おじさん大丈夫?汗が凄いんだけど」

「は、ははは……」


 仲良くなりたいが、成っちゃダメな気がする。

 なんて言うか、見た目でもうアウトだ―――

 助けてもらったし、さっさと街に行くか。


「す、少し急ぎましょうか?」


 馬にも回復魔法を掛けてくれたおかげで、ぬかるみもものともせず進む。

 途中で盗賊に襲われたような気がしたんだが、気が付いたらいなくなってた。

 どういうコトなのさ。


「あんた、気にしたらマケだよ」

「ひょっとして、俺がこうなるの分かってましたね?」


 くすっと笑ったリッカーが付け加える。


「ちなみに、あのちっちゃいのはギデオンを拳で吹き飛ばしてるよ。試合は負けたけどねー」

「は、はは……冗談です……よね?」


 ギデオンって魔王を倒した勇者じゃないですかー、もーやだー。

 街が近付くのなら、買い物も出来るのだから、暇つぶしに食べ物を取り出す。


「暇なのでおやつでも食べましょうか」

「最後のリンゴジュース飲んでも良いよね?」

「着いたら買えるよ」

「あ、おじさんもおやつ食べる?」

「あ、ああ、ありがとう、頂くよ」


 なんでこんなに暢気なんだろう。

 確かに天気は良いし、魔物も現れないし、街に近付けば他の旅人や冒険者も増える。

 この馬車の移動速度なら日が落ちる前に着きそうだ。

 おい、お前ら無理しなくていいぞ。


 馬がヒヒーンと啼きました。




 日が落ちる前に到着した入門所ではいつもの手続きを省略できるアイシャの冒険者カードを使う。

 他のメンバーは持っているのが分かれば良いという特別待遇だ。

 馬車のおっさんは商業ギルドカードでここからは別行動だ。

 そもそもパーティメンバーでもないから、手続き前にお礼を言って別れている。


「冒険者が多いですね」

「まともなヤツは少なそうだけど」


 既に品定めをしていて、戦力の計算でもしているのかな?


「なんで鑑定しないのに分かるのよ」

「これこそ経験と勘ですよ、お嬢様」

「ふーん」 


 手続きの列は長く、待たされる筈だったのをリッカーのSランク権限で優先してもらっている。マリアもSランクだが、ギルドカードを出したがらないし、アイシャは子供なのにAランク相当の扱いを受けられるとはいえBランクである。

 

「ってか、なんで待たされてるの、私達」

「もう他にもSランクが来ているんですかね?」

「この辺りならラッキー・マーカーでしょ」


 マーカー?

 はて、どこかで聞いた名前な気がします。


「コール・マーカーなら覚えてるけど」

「半分くらい運で生きてるような奴がSランクなのよ、実績は確かに有るんだけどさ」

「それでラッキー・マーカーですか。そんな呼ばれ方されてたんですね」


 お嬢様がくすくす笑っています。


「ぶぇぇっっくしょんっ」


 デカいクシャミが……あっちに行くのはやめておきますか。


「済みません、お待たせしました」


 何故か兵士では無くギルド員が走って来ました。

 私達を見付けた事で何か安心した様子。


「あー、良かった先生達で」

「パーティーリーダーはお嬢様ですけど」

「あ、えっとー……アイシャ様、こちらに来ていただけますか?」

「え、なになに」


 アイシャ達はギルド員の案内で別室に入ると、そこに居たのはマーカー。

 他にも冒険者が居るようですが、口論に聞こえるんですよね……。


「だーかーらー、俺が一番上なんだからお前らは言う事聞けばいいんだよっ!!」

「なんでおめーみてーな運だけSランクの言う事聞かねーとならねーんだっ!!」

「なら、おめーらだけでドラゴンを倒せるとでも?」


 ドラゴンを出される黙るのなら倒して見せればいいだけなんですけど。

 って、もう情報集まってるんですかね?


「こちらが報告書です。あと、聖女様を呼んでいますのでしばらくお待ちいただけますか?」

「ハニエルがココに来るの?」

「既にブルーとグリーンを撃退しているのですが、撃退してしまうと他の町に被害が出てしまうので……」

「え、なんで?」


 お嬢様の疑問に答えたのはリッカーでした。


「ドラゴンの目的はまだ分からないけど、この街が目的ならしつこく攻めてくるの」

「うん」

「だけど、何らかの理由があって人を襲うのが目的の場合、この街でなくても良いってワケ」

「じゃー、ここは無理だから他で暴れるって事?」

「そーなるわね。ただ暴れたくて来ているだけなら暫く耐えれば済むけど、冒険者がこれだけ集まってるって事はドラゴンが群れで来てるんでしょうね」

「でも、それってさ、撃ち漏らして逃げられたりしたら……魔王国にも来ちゃうって事じゃないの?!」


 大正解ですお嬢様。


「先生、いつもの選択は無いの?」

「今回は有りません。選ぶくらいならココで倒した方が今後の為にもなります。ちょっと利用するような感じもしますが、魔王国を守るという理由も含まれるので、今回は私も全力で戦います」

「えっ、先生の本気って?」


 リッカーはワクワクしながら私を見ないでください。

 あっちはまだ口論していますし、報告書を確認しまいしょう。


「ちょっと……Sランク足りないですね……」

「え、私にも見せて」


 リッカーが報告書を見ると手が震えています。

 流石にこの数は意味が解りません。


「黄龍山脈から100以上のドラゴンがココに向かってるって……どうして?!」

「……理由を知って良そうな人が来るのを待ちましょう」

「ハニエル遅いわねー」


 ムスッとしてても可愛いので癒されます。

 ちょっと撫でておきますか、暫く無理になりそうですから。


「ハニエルの性格から考えれば、人々を避難させるのではなく、戦える人を集めているのですから、ココが決戦場になる覚悟が有るって事です。それだけの理由が有るのです」


 口論している連中の騒がしい声が止まりました。

 来ましたね。

 ハニe……。


「せんせーーーーーーーーーい!!」


 私の胸に飛び込まないでください。

 視線が全集中しています。

 とりあえず、転g……あれ?


「むべっ」


 お嬢様が得意満面のドヤ顔です。

 拍手っ……したのは気が付いたリッカーと私だけですね。

 直ぐに立ち上がって私の横に立つ女性を指でさしました。


「あーっ、リッカーがなんでここに?!」

「先生に付いてきた」

「そ、そう。とりあえず今は助かるわ」


 理由を知りたかったが今は我慢をするハニエルだ。


「お前、聖女になって何か変わったな?」

「懐かしむのは後にしてもらうわね、もう一人Sランクのベルディナンドも来るから大聖堂の会議室に来て」

「私は?」

「もちろんアイシャも先生も。報告書は見た?」

「手が震えたトコロだ」

「もう救援要請を出したのです?」

「ブリード伯爵が協力してくれる予定です。あと、セイビアってエルフで元Sランクの女性を知ってますか?」

「えぇ、あの子の事は知ってますよ」


 あの子呼ばわりしていて、ハニエルは安心した。


「流石先生、助かります。その人も来てくれるそうです」

「アイツも呼んだのか?」


 アイツ呼ばわりされた男がこちらに向かって胸を張って歩いてきました。

 自信だけは十二分な顔なんですね。


「アイツは気が付いたら居たから呼んでないわ」

「だよなあ……」


 私達の前に立ちはだかるように両腕を広げる。


「俺の力が必要だろう、協力してやっ……ずむべっ」


 私が転がしました。

 説明すると面倒なので。


「さぁ、行きましょう」

「はーい」


 綺麗に三人が同時に返事をし、ハニエルの案内で大聖堂の会議室へ向かう。

 床に顔が埋まったので出遅れたマーカーは、ハニエルの姿を探したが見失っていて、走って追いかけてくる前に兵士がブロック。

 良い仕事していますね、あの兵士を後で褒めてあげてください。








※おまけ



「おい、なんで邪魔するんだ

「聖女様に呼ばれているのですか?

「Sランクなんだから当然だろ

「では、お名前を

「お前は、俺を知らんのか

「知りません

「知らないってなんだ、コール・マーカーだぞ

「知りません

「Sランクの力が必要だろ

「聖女様のリストにはランクの制限は有りませんでしたが?

「……

「ですので、他の冒険者の方々とギルドでお待ちください



 一問一答のたびにくすくすと笑われるマーカーであった。


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