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第075話 私達の神様

 作業も終わり、血生臭くなったアイシャ達に用意してくれた浴室で、軽く汗を流してから食堂へ向かう。ボアの肉も有るのだが、ロックバードの肉に変更されたのと、功労者である旅人をもてなす為である。


「良い匂いね」

「香辛料が何百種類とありますので、使い方は数万通りあると言われていまして、人の好みや地方によって、かなり変わるモノなんです。料理は奥が深いですからね」

「それ、私が料理人に言われたヤツとおんなじだ」


 期待を膨らませながら食堂に入ると、既に並べられた数々の料理にマリアも口を縦に開いた。兵士の数に比べて料理が多過ぎたのも有るのだが……。


「丸焼きが有るなんて凄いですね」


 丸焼きをするにかなりの手間が必要で、思わず見とれてしまったマリアは、そのままそのテーブルに座る。自分の姿が隠れるくらいの大きさなので感動すら覚える。

 給仕が椅子をひき、そのまま座った先生の目が輝いている。


「ヒポマンモスで包んだ香草焼きです。カットしましょうか?」

「ええ、お願いします」


 先生は最近になって強く味を感じるようになった所為もあって、料理に熱が入っている。ヒポマンモスと言うのはヒポ系植物の巨大な葉の事をいい、そのまま生でも食べれるのだが、焼くと汁が染み出し、それを肉にかけるとより美味しくなる。

 塩は地域によっては洞窟でも採れる所が有るので、一般に流通しているが、ヒポマンモスは数が少なく、料理人達でも貴重な食材な一つである。

 カットされた肉にかけられたソースにもコダワリが有ると感じ、目の前に置かれると、木製の皿にのせられた肉からは湯気が出ている。


「私達も座ろう」

「う、うん」


 先生がその肉を一口食べるのを何故か注目されている。


「……これは宮廷に出せる逸品ですね。とても美味しいです」


 アイシャとリッカーもカットしてもらった肉を食べると、満面の笑顔になる。

 それを見た料理人も満足そうだ。


「ロックバードを倒してくれたという話なので、気合を入れて作りました」

「後で焼き時間と火加減を教えて貰えますか?」

「では、のちほど」


 そこに現れた姉妹が背を向けている3人の女性に近づく。その後ろ姿だけでも、どこか見覚えがあった。アレから1年以上経ったぐらいでは忘れない。


「……マリア先生ですよね?」


 今回は知っているので驚きはない。


「そうですよ、話をしたいのでしたらあなた達も座ったらどうです」

「え、はい」


 何故か少しの恐怖を感じた姉妹が、マリアの対面の席に座る。

 兵士達はアイシャ達が来る前から食べていて、この席は3人の為に用意されたのだ。

 ワインも用意されて、食事はほぼ無言のまま食べ終えると、何故か話をし難い空気を感じた。それは先生が少し怒っているからだ。


「……事情を」

「え、えっとー、そのー。ねっ?」

「私に振らないでよ、おねーちゃんが言って」


 アイシャはリンゴジュースを飲み、リッカーはワインを三杯お代わりしている。

 

「マリア教ってなんです?」

「じ、実は……」


 姉のティルの説明によると、街に向かったのだが、途中で捕まりそうになって逃げまわっているうちに、方向を見失ってどうにか辿り着いた街道を歩いていると、冒険者と遭遇した。その冒険者達は12人パーティと多かったのだが一代の馬車の中で6人が重症で動けず困っていたので、治療した代わりに街まで運んでもらったという。

 

「ほほう、それで?」

「街に辿り着いたのは良かったんですが、その街に教会が無く……」


 ギルドで治療しつつお代を貰う仕事をしばらく続け、安定した生活をしていた時に、ビレッドの街で教会を建てるので住み込める聖職者を募集していたので応募したところ……。


「見事に当選したと」

「はい……」

「それが、どうしてマリア教を名乗っているのですかっ」


 先生は聖母だが、負のオーラを纏える。

 正のオーラも操れて、魔導師としては一流の範疇を超える存在だ。

 そのオーラの揺らめきが可視化出来るほど強い。


「だって、先生は私の、私達の神様だもん……」


 ミィが泣きだした。

 流石にそれは私の本望ではありません。

 しかし、困ったものです。

 認めるのも面倒ですし……。


「別に良いんじゃないの」

「お嬢様?」

「だって、先生の事だなんて誰にも分らないじゃない」


 確かにその通りです。


「はあぁぁぁぁぁぁ~」

「先生って誰にも頼られててすごいねー」

「先生だもん」

「先生ですもの」

「先生カッコイイ」


 周りの兵士達の注目を集めてしまう前に終わらせますか。


「良いでしょう。ですが、ハニエルとは必ず仲良くするように」

「聖女様と敵対するつもりなんて毛頭ありませんよ、そもそも先生が聖女を生み出したとお伺いしておりますが」


 はぁ?!


「ハァ?!」


 あっ、思わず考えが声に。

 お嬢様もリッカーも笑わないように。


「それって有名な話なんですか?」

「一応、教会責任者には出回っているようです」


 ハニエルは何をやっているんでしょうか……。

 教育的熱血指導が必要ですね。


「と言うか、初代聖女様の伝説に関わっている方のマリアですけど、同姓同名の別人ですよね?」


 直接関わっている事を知る者は殆どいない筈ですし、そう言われると否定できないのですが。どうせ城に帰れば魔王国領の外に出る機会も減りますし、そういう事にしておきますか。


「……はい。そうです、ね。はい。って私が生み出したって話はどうして?」

「先生の事ですから、可能性としてそう思っただけです」

「先生なら出来そう」

「私の先生は優秀だからね」


 なんでお嬢様がドヤ顔するんです。

 二人は羨ましそうにしないっ。

 もう、なんなんですかっ。

 リッカーはもう酔って寝ています。

 呑み過ぎましたね……。


「先生、今夜はどうするの?」

「今夜ですか?」

「泊るところが無いのでしたら教会はどうでしょう、祭壇の方は完成していませんが住む分には問題ありませんので」

「ではそうさせてもらいますか」


 リッカーを叩き起こして今夜は教会で休む事になった。

 特に大きくも小さくもない教会で、治療室も建設予定になっているのと、今後は孤児の保護も予定していて、規模としてはかなりの規模になる。

 それでも建設してもらえるのはこの姉妹の役割が街にとってではなく、兵士達にとってかなり重要だった。何しろ治癒と回復の魔法が使える者は貴重で、まだまだ発展途上の街では魔物の侵入も防がなければならない。

 そうすればケガ人が出ないことなどありえないからだ。


 客間や食堂とかまども有るがこちらは建設中で、寝室はとても綺麗に作られている。ガラス窓に遮光カーテンと真っ白なベッド。

 お嬢様もリッカーもぐっすり眠れているようでよかったです。

 さて、眠気が無い私はまた内職でもしますかね。

 ……頑張っているようですし、服を新調しますか。

 ロックバードの羽根は十分ありますね。


「無音結界」


 マリアの周囲から音が消えた。

 これでどんなに音を立てても周りに聞こえなくなる。

 良い月明かりの夜だが、これでは少し暗い。


「光源」


 マリアは内職を始め、夜明けまでに服を二着完成させた。



 




※追加情報



■:ヒポマンモスの葉


 ヒポ系の植物で、森の中に他の種類の樹木と混ざってひっそりと生えているが、葉が異常に大きく、花は匂いは強いがとても小さい。葉も種も、生で美味しい。マンモスは大きいという意味。


名前 ヒポの葉 種類 植物

説明 ヒポ系植物。基本的に全て食べれる


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