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第073話 頑張っている姉妹

 お嬢様には朝から魔法の特訓で、湖の上に立って水柱100本打ち上げます。

 隣でピタンが笑いながら邪魔をしているのは、もちろん訓練の為です。

 料理にマンドラゴラが使われていたなんて知りませんでしたし……。

 ねっ、お嬢様っ。

 仕事中のジョンが足を止めて見学をしています。

 持っている箱の中身はマンドラゴラですね。


「先生は厳しいなあ……」

「もっと厳しくても良いのですけど」


 お嬢様が目から水魔法を出しています。

 まだ半分もやってないですよ。


「マンドラゴラなら定期的に貰えますので」

「取引が続いてるんですね」

「はい。ピタン様のおかげもあって安定しています」


 ピタンが水神?になったおかげで周辺にも影響が出ているようです。

 なるほど、なるほど。


「これは先生に差し上げますよ」

「よろしいのですか?」

「畑が安定しているのも先生のおかげです」


 兎獣人が育てたマンドラゴラをお土産に貰いました。

 私より他の人の方が頑張ったと思いますが、こういうのは気持ちの問題ですのでありがたく頂きます。

 すぐに旅立ってしまう事にピタンが嫉妬心をメラメラ燃やしています。

 火属性ではないですよ。


「終わったら先生が行っちゃうんなら、もっと邪魔してやるぅぅぅ!!」


 おおーっ、凄い逆恨みのオーラです。

 お嬢様頑張ってー。

 うふふっ、良いライバル関係になって欲しいものです。


「なんか朝から凄いわ、流石にあの中に参加したくない……」


 リッカーが子供達を引き連れて、パンを食べながら見学に来ました。

 子供達も真似してるのでよくないのですけど、魔法の勉強をしていると言われると文句も言い難いです。


 「ほらほら、あなた達、見学するのでしたらここに整列してください。ちゃんと並ぶんですよー、良いですかー?」


「「「はーい」」」


 良い返事です。

 リッカーが一番元気に返事をしたのが気に成りますけど。

 それにしても魔法の勉強に熱心な子供が多いです。

 どういう理由からなんですかね?

 ただ強くなりたいと言うだけでは、ちょっと説明不足な気がします。

 お嬢様は次々と水柱を発生させ、邪魔をしてくるピタンの邪魔をしています。

 良い判断ですね。


「……はーっ、終わったあ……」

「チッ」

「お疲れ様です。ここで水魔法の訓練すると他の場所よりも効果的なので、もう少し増やしても良いのですが」


 お嬢様がすっごい潤んだ瞳で私を見ています。


「それにしても凄いわ、ちょっと練習するだけで、私でも水魔法が使えるように成っちゃった」

「使えなかったんですか?」

「こんなに上手には使えなかったかなー、魔法が上手くなって、こんな可愛い神様とお友達になれるなら通っちゃうかも」

「えへん、私凄い」


 お嬢様がムスッとしています。

 安心してください、十分可愛いですよ。


「でも、また行っちゃうんでしょー」

「それは仕方がないです。私はお嬢様の教育係ですので」

「私は勝手に付いて行きまーす」

「いいなー……」


 完全に手懐けている街の子供達を使って私を取り囲んでいます。

 真上に浮いて逃げますか。


「それじゃあ捕まえられないですよ」

「先生って飛べたんだ?!」


 真下から子供達が浮いている私を見上げていますが……一部の視線が怪しいです。

 普段は履いていないですが、今日は履いててよかったです。


「浮くだけですよ。飛翔系魔法は難易度が高いだけではなく、適性が無いと身体の負担と魔力の消費が激しいんです」

「でも、頑張れば私達だって使えるんだよね?」

「勿論です」


 子供達の輪の中に戻ると一斉に抱きしめられました。


「行っちゃうと寂しいよー」

「魔法教えてー」

「一緒に遊ぼーよー」

「畑耕しましょー」

「料理をー」


 ちょっと待ってください、後半が子供らしくないです。

 なんで大人も居るんですかっ。


「ぶへっ」

「むへっ」

「せいっ!!」


 おー、リッカーは耐えましたね。


「その転がす魔法って便利よね」

「実はただの風魔法なので魔法制御さえ出来れば、凄く簡単です」

「そのコントロールが激しく難しいんだけど」

「応用すれば水魔法でも可能です」


 ピタンが唸り始めました。


「はっ!!」

「びべっ」


 お嬢様が転びました。


「出来た~!」

「ちょっと、私で実験しないでよっ」

「へへーん。出来るモノなら私にやれば良いでしょ」

「ぐぬぬ……」


 お嬢様は大味な魔法の方が得意なので、繊細さを求められるのは苦手なのです。

 ええ、良ーくわかりま……お嬢様、私にやりましたね?

 てへぺろしても可愛いから許しません。


「ところで、次に元のメイガスの街に向かうのですが、何か知りませんか?」


 子供達に聞いても知らないようです。

 もちろん、ピタンも分かりません。

 ジョンは仕事でどこかに行ってしまいましたし。


「最近パパがてーさつに行ってきたって言ってたよ」

「あなたのお父さんは何処です?」

「あっち」


 案内された畑で農作業をするこの子の父親は丁度休憩中でした。


「パパー」

「おー、ティル、どうした?」

「ちょっとよろしいですか」

「ん、先生がなんの用で?」

「偵察に行ったと聞いたので」


 詳しく話を聞くと、旧メイガスの街はビレッドの街と名前を変えていて、テオトル・デ・ザジャーと言う男爵が代官に就任したらしい。住人の殆どが兵士で、その家族が農業をしているらしいのだが……。


「アイツらさー、畑をめちゃめちゃにしてやがってよー」


 なんでも、耕作地の殆どが放置されていて、自宅近くにちょっと植えてあるだけらしい。荒れ果てて草が生えているから、もう一度畑に戻すのにかなり苦労する。


「どっちかと言うと夜の店の方が充実してたかな……い、いや、俺は行ってねーぞ」


 そんな事は聞いていませんのでスルーします。


「では、街としては機能しているのですね?」

「おうよ、冒険者ギルドも有ったから大きくなるんじゃないかな。魔物はそこそこ出る地域だったし、森も近いからなぁ」


 抱き付く自分の子供をあやしていると、何かを思い出す。


「そーいや、教会を建設しているって言ててさ、なんでも聖職者の姉妹が治療してくれるらしい」

「言っていたとは?」

「偵察のつもりで行ったんだけどな、俺の顔見てもただの旅人ぐらいにし思ってなかったから、普通に散歩して帰って来た」


 流石に街の人の顔全てを把握しているワケではないので、見逃してしまうことが有るのも不思議ではありません。

 兵士も下っ端の方は給料が貰えるからやっているだけって人も多いですし。

 ん?

 教会……?


「……その聖職者の姉妹の名前って分かるの?」


 お嬢様が鋭く質問しますが、こんな時に発揮しなくても良いと思います。


「えーっと、フィルド姉妹って名乗ってたかな」

「……やっぱり」


 お嬢様が私の顔を見ています。

 えぇ、覚えていますとも。

 しかし、なんであの街で教会を……。


「てか、なんでビレッドって名前に変えたのかしらね?」

「魔族が名付けた名前が嫌だったからだと思いますよ」

「普人ってそーゆ―トコあるよねー」

「うんうん」

「普人以外しかいねーよな。なぁ、ティル」


 子供のティルが不思議そうな目でパパを見ていました。

 種族なんてものは子供には関係ありませんからね。


「あー、そーいや、あの姉妹なんか凄く兵士に好かれてるみたいで、教会にもたくさん兵士とその子供が居たなあ」

「それは、あの二人が回復魔法と治癒魔法が使えるので、怪我や病気を直してもらっているのでしょう」

「えっ……それって凄い事じゃないのか?」

「普通にめちゃくちゃ凄いわね。なに、その姉妹って?」


 リッカーが興味深げに私を見ています。


「教会で働けるとは言いましたけど、まさか自分で教会を建てるとは思いませんでしたね。回復や治癒の魔法が使えるだけで貴族に連れ去れると思うので、教会に行くように勧めたのですけど……」

「まぁ、悪い事に成ってなかったんなら良かったんじゃないかな」

「頑張ってるって事でしょ。回復が出来る教会なんて毎日行列が出来ると思うけど」


 大盛況だと思います。

 これならこっそり通過するつもりでしたが、堂々と行っても良さそうですね。


「じゃあ、そろそろ行く?」


 ピタンの抗議は無視します。

 いちいち相手にしていたら散歩も出来ません。


「ああ、街のみんなに挨拶していかなくて良いのか?」 

「そーだよー、挨拶してこーよー」


 またピタンとお嬢様が睨み合っているのをリッカーが止めています。

 流石Sランクですね、力技で物理的に転がしまた。


「なんか余計なこと言っちまったかな」

「いえいえ、お気になさらず。ではお嬢様、行きましょうか」

「はーい」

「じゃあねー」


 ピタンが手を振って見送ってくれました。

 ティルとその父親も手を振ってますのでお嬢様はそちらに返しています。

 リッカーはもう後ろを見ていません。

 旅ってそういうモノで慣れているのでしょう。


「いつでも帰れる場所が有るのって良いよね」

「私とお嬢様はあの城ですけど」

「ここに来た時ただいまって言ってなかった?」

「そういう日もありますよね」

「ねーっ」


 街を出ようと門をくぐる時には皆が集まってきて物見櫓や塀の上から、アイシャ達を見送っている。

 彼らにとってこの土地は住み慣れた場所ではなかったのに、気が付けば以前の街よりも住みやすく、守ってくれる存在も現れ、安全度も高い。

 旅人も来ることが今のところオガサンしかおらず、その彼が来るのも数日先だ。

 どこか長閑で、どこか慌ただしい、出来たばかりの新しい街に別れを告げて、アイシャ達は次の目的地を目指した。 







※おまけ



「先生達行っちゃったねー

「ねー、また魔法教えて欲しかったなー

「でもさ、なんかあの子の雰囲気違わなかった?

「あー、アイシャってなんか凄いカッコよくなった気がする

「なんでだろーね?

「そりゃ、アイツは……(次期魔王って秘密なのかな……

「ピタン様、どうしたの?

「ううん、なんでもないよ

「じゃー、ピタン様あそぼー

「お前ら、遊ぶ前に畑仕事を手伝ってくれよ……

「えー

「えーー

「えーーー

「ピタン様まで混ざらないでください

「あ、なんか癖で、てへぺろ☆


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