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第067話 ギデオンの帰国

「船の中って暇なのよねー

「……

「暇だなー

「……

「どうした?

「……(船酔いしたとは言えん)

 船に乗って15日ほど。

対岸の港町パルキアに到着した勇者一行はそのまま冒険者ギルドへ向かった。

そこには既にラッセル王国からの使者として近衛兵が待っていて、ギデオンを見るなり連行する気満々であった。

当然のように全員が転がったが。

 20名の近衛兵達がすっ転ぶ姿があまりにも滑稽だったので、ギルドに居た冒険者達に笑われている。


「船旅で疲れてるから明日出発する。少しぐらい待てないのか」

「もう十分待った筈ですぞ」


 この場合、彼の主張の方が正しいが、それを一睨みで引き下がらせるのはギデオンが怖いからである。魔王を討伐したという知らせは間違いなく届いていて、それを知っているはずの人達からの大喝采は無い。


「この港町は相変わらず何も変わってないんだな」


 ギデオンの後ろには同行している様子の二人がいる。

 勇者パーティは解散した筈で、新たなパーティを結成しているのは知らない。


「この二人は?」

「男の方はドラゴン、女は偽聖女だ。怒らせない方が良いぞ、俺でも止めるのが面倒だからな」


 ヴァルドは暴れるつもりなど全く無いのに、ギデオンによって危険人物にさせらた事に怒りを感じる。感じたが……久しく恐れられているという感覚を忘れていた所為で、新鮮なモノを感じて受け入れてしまった。

 ピンスは興味が無い。


「料理長はいるか?」

「あー、ギデオンお帰り。今夜は泊っていくのかい?」

「その予定だ。良い肉を持ってきたからこれで頼む」


 ギデオンが魔法袋から出したのはグリフォンの肉で、国王だってなかなか食べられる代物ではない。そういうモノは国王に献上しろと言いたそうな兵士達を無視して、3人はギルドでのんびり休む事にしたのだった。




 さらに15日後、城下の商店街はいつもより賑わっている気がする。3人は王城に到着していて、近衛兵の案内からの、護衛隊に続き、親衛隊のところまで到着するのに、朝から来たのにもうすぐ昼だ。

 本当にメンド臭い。

 これまた臭い。

 あーくさくさ。

 こんな奴らに騙されて7年も経っているのだから、余計な事は排除したい。


「おっさんは居るか?」

「今日は不在だ、証拠の品を置いて帰るが良い」

「おまえ、嘘つくの下手だな」


 親衛隊の訝し気な視線をはねのけ、ズカズカと進む。

 止めようと声を掛けても、力で止めようとする者は一人もいない。


「お前……ココだと無茶苦茶だな」

「私もケッコー嫌な目で見られてたけど、修ちゃんはもっとすごいねー」


 いつの間にか修ちゃんって呼ばれてるけど、ギデオンは俺の名前じゃない。

 短くもない旅だったが、ピンスは何故か俺に懐くようになった。

 ……二人で風呂に入ったのは嬉しかったが、そこまでしてくれるものなのか。

 俺、もう勇者ではないんだけどな。


「……そっか、おまえ聖女だったもんな」

「いやらしい目どころか、実際に手も……」

「いやらしい事をされるのは嫌いな癖に、するのは好きなんだな」

「私の居た国も王様の根性は腐ってたからねー、慣れちゃった」


 聖女として若い時から国に囲われた人生を送っていたピンスの方もかなり性格は歪んだことだろう。俺の方がまだマシだが、比べるモノではない。

 そこ、てへぺろするよう軽い話じゃないぞ。

 会話をしながらでも3人は止まる事なく進み、謁見の間に勝手に入り、その奥の扉を開く。居るじゃないか……。


「ひゃっ…」


 若い女の声だ。

 家族がいるくせに遊んでやがる。

 俺を見て真っ赤になった女は脱ぎ捨てられた服を拾って慌てて裸体を隠している。


「き、貴様は呼ばれていないのに来るとは、衛兵は……」

「来るワケないだろ、おっさんは遊んでないで早くしろっ」


 こちらは怒りで真っ赤になった国王である。

 丸出しで隠さない。


「うわ、ちっさ……」


 ピンスの呟きで、何故か男3人が同じ気持ちになった。

 スゲー、あの国王を脱力させている。

 ……褒めてないからな?

 頭は撫でてやろう。


「そんな事より、俺は帰れるんだろ、約束のモノは持ってきたぞ」

「そ、そうか……」


 約束のモノとは、咽喉から腕が3本くらい出てくるほど欲しい代物である。

 それが有れば国が……と言うより、自分の安全が確保される。

 へそは曲がっていても勇者が国王の言う事をキクのはこの為である。


「準備するからもう少しぐらい待ってろ」

「いいぞ、その女は置いてけよ」


 国王は衛兵をとメイドを呼び、本来は家族に内緒の隠し部屋を出ていく。

 服ぐらい着ろよ。

 ちなみに残された女性はピンスの玩具にされていた。





 上級魔導師2人。

 宮廷魔術師6人。

 特殊警備兵が12人。

 国王とギデオン達が集まった照明が少なく薄暗い地下の大きな部屋は、ギデオンが召喚された場所である。

 床には大きな魔法陣が描かれていて、ほんのり光を放っていた。


「関係のない者を連れて来るとはどういうことか」

「何言ってんだ、偽聖女とドラゴンだそ、お前は強い奴を欲しがってだろ」

「ほ、ホントか?!」


 2人が頷く。


「でも、このまま実行するとイヤーな予感がしますねー」

「それは心配ない。我が国の最高の魔術師だ」


 魔術師達のLvは最低でも50を超えている。

 だが、魔力はそれほど高くなかった気がするが……。

 心配って何の心配だろうな?


「約束のモノは?」

「ほらよっ」


 あの時に斬り落とした魔王の右腕である。

 生きているはずも無いのに、何故かぴくぴくと痙攣していて、しかも血は滴っていない。

 受け取れよ。

 嫌そうな顔すんな。


「私が受け取ろう。国王陛下、危険かもしれませんのでこちらに」

「う、うむ」

「逃げたわね」

「逃げたな」

「この魔法陣は……」


 ヴァルドが人差し指と親指で顎を持つような姿勢をし、魔法陣を凝視している。

 その視線を無視して、上級魔導師の二人が慎重に置く場所を選んでいて、何やらぶつぶつ言いあっている。


「これは転移の魔法陣なのか?」

「その筈だが」

「確かに何かを喚び出す事は出来そうだが……?」

「転移系か」

「うむ。その点に間違いは無いと思うぞ」


 この時のギデオンは気が付かなかった。

 喚び出す事が可能であるのなら、その逆も然り。

 そう考えていたからだ。


 配置が決まったらしい。

 二人が満足そうに国王にひそひそと話をしているが、ヴァルドには聞こえているらしい。その能力は欲しいと思ったが慣れないとかなりうるさいという事で、諦めた特殊技能だ。そもそも結界を張られると聞こえないし、特に役に立つ事も無いだろう。


「それで、上手く行きそうか?」

「魔王の腕に宿った魔力量が凄いので、制御さえ失敗しなければ確実に成功します」


 と、教えてくれた。

 試験を受けても落ちない限り合格する!

 ……みたいな回答だな。


「直ぐに始められるそうだが、失敗しない為にも少し時間を置きたいが、良いな?」


 そう言われてすぐにやれと言うほど場バカではない。

 というか、駄目とは言い難い雰囲気だ。

 失敗したら困るからな。

 その時、ピンスが腕を掴んでギデオンを見上げた時の目に涙がある。

 この時の表情を忘れる方が難しいほどの悲しい目をしていた……。







■:バーデルハン11世


ラッセル王国の国王

直系が全員死亡し、継ぐ者がいなくなった

当時76歳のバーデルハン9世が国王に就任

当然、陰謀説が主流

10世が財産を食い潰し

11世が躍起になって戦争している

とても酷い国



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