第004話 教育
「お父様に怒られちゃった……」
そう言って笑う。
凄く嬉しそうに。
「それにしても、何か雰囲気が変わりましたね?」
「知らなくて良い事も知っちゃったのよ」
「それはどういう事でしょう?」
「継承はね、記憶を受け取る事だったんだけど、私には足りないらしくて、お父様の記憶の一部だけもらったの。だけどね……」
「?」
「なんで泣き落して口説いてるの…」
「?!」
「いや、ちゃんと魔法とか特殊技能とか、何らかのスキルも継承したけど、今の私には使えないわ」
「経験不足ですか?」
「そう」
「では、その辺りの事でしたら私が教育して差し上げます」
「お願いするわね」
その言葉遣いは9歳とは思えず、教育係として教育する内容を考えさせられた。
教育期間は1年を提示したが、お嬢様は納得しない。
「半年みっちり、ぎゅうぎゅう詰めでお願い」
「良いんですか?」
「お願いね、マリア先生」
「は。承知いたしました」
教えてもいない名前を呼ばれた事、見た事もない大人びた笑顔とウインク。
もしかしたら……
何かを期待するマリアであった。
マリア先生の修業が始まって1週間。
魔術に剣術に、そして座学も、日々を忙しく過ごしていたが、朝と夕方の墓参りを忘れずに行い、必ず取り返してくると、心の中で誓っていた。
それは……
「まだ見つからないのですか?」
「そう言われましても、何処にも無いのです」
「破棄してませんよね?」
目は無いが窪みにあやしい光がある。
「持ち帰っても意味は無いはずですが…」
「先生、授業はまだ?」
「す、すみません。探し物が見つからなくて…」
「もしかしてお父様の右腕?」
「そ、そうです!何かご存知ですか?」
「それならあいつらが証拠にするとか言って持ち帰ったわ」
そう言いながらこめかみに筋がびしっと入る。
「え、なんでそんな事を…、ああ、もしかして記憶の一部に?」
「うん、お父様の記憶よ。そんな事はしなくて良いと言われてるけどね」
スケルトン達が先生を睨んでいる。
「あなた達も忙しいのに悪かったわね」
「いえいえ、悪いのは隊長ですから!」
「あんた達ねぇ……、お嬢様は取り返すおつもりで?」
「もちろんよ」
「あの勇者達の出身地ってかなり遠いですけど」
「どうせ斃しに行くんだから同じだわ」
今のお嬢様は怒りのオーラを纏っているので余計な事は言わない方がよさそうだ。
多分、あの勇者達はまだ故郷に戻れていないだろう。
それほど遠いのだ。
……魔王の右腕を持ち帰っても、扱い切れるか謎である。
「それと、破壊された物や盗まれた宝物の請求書の書き方も教えて頂戴」
「まさか、請求するのですか?」
「当然よ!」
城の外壁が何ヶ所も壊れていて、室内の柱も折れている。
修繕するとなればかなりのお金が必要になるだろう。
決意は固そうだ。
しかし、いくらなんでも一人では無理だと思う。
「その為にも勉強は全力でやるから」
そうなのだ。
まだ1週間だというのに、お嬢様の魔力は上昇し続けている。
今の私よりも高いのだから、本来は教える事など無いが、残念なことにコントロールが十分ではない。
力が無いので剣術はそこそこだが、そろそろ室内での魔法の練習は無理だろう。
なんというか壁がヤバい。
「エムブレムフレイム!」
壁が熱で崩れました。
スケルトン達、直しておいて。
「字が汚いわねぇ…」
自分の字を見て幻滅している。
請求書を書くのは諦めたようだ。
良かった、問題が増えなくて………
※あとがき
名前を知らないのは、知る必要が無かっただけで教育係とは初対面ではないです
魔王の娘 アイシャ 9歳の一人娘。釣りが好き
教育係 マリア 元魔女で今はスケルトン。呪いによって死ぬ事が出来ない
父親 アッシュ 勇者に倒された魔王でアイシャの父親
母親 セリーヌ アイシャの母親だが2年前に病死




