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第046話 魔族の扱い

お嬢様ー 朝ですよー


……あと5分……3分でも……


リンゴジュースをご用意いたしました


いただくわ(ゴクゴク


(これは良いですね)

 綺麗な部屋の綺麗なテーブルで、高級酒を呑みながら会議をする彼らは、男爵、子爵、伯爵で、辺境伯と言われるのは領地における自治権を有するもので、伯爵よりも上位に扱われる。侯爵の方が上位なのは明白だが、軍人で言う少将から中将ぐらいの地位に位置する。

 そのような人達が集まっている時は、だいたい碌でもない事を話し合っているというのが定説で、歴史が証明している。

 そういう訳で歴史学者という職業は、編纂としては必要だが、普段は嫌われている。

 

「マンドラゴラの入手は今後の戦争にも大きく影響する。アルファディルは戦争の援助を正式に断ったが……聖女が現れたのではもう手は出せんな」

「あの主教なら金で買えましたが、ハニエルではもう無理でしょう」

「魔王を討伐した所為であの国でも戦意士気が高まっておる。魔族の意識が下がっていると獣人どもがやる気を出すし、面倒な世の中になったな」

「ですが、今なら邪魔な魔族どもを駆除する好機……」


 マンドラゴラの収入だけでもかなりの資金を稼いでいたが、今後は数を集めなければならない。魔族は身体が頑丈なので重労働に向いているし、可能なら直接兎獣人を捕まえて生産させればいい。メスは奴隷娼婦にも出来るし、存在が金の生るのような生き物だ。

 




 三日間の休日生活を堪能したアイシャは、その間もちゃんと仕事をするマリア先生に感心しつつも、裏切者を捜すという、地味で苦労しかないうえに、心に傷を負う作業を続けていた。

 そして、その日はギルドでアイシャが待っていた人がついにやって来たのだ。


「なんか、雰囲気悪いな……」


 仁王立ちして立ちはだかるが、小さくて気が付いてもらえない。


「……あなたがオガサンね」

「ああ、そうだが……」


 ギルドに来たのは取引を伝える為で、フィルド夫妻をここで待つのだが、いきなり知らない子供に話しかけられたのと、ギルドに居る者達の視線が集まっている事に気が付いて思い出す。

 ……もしかして、ハニエルからの連絡があった子供って、コイツなのか?


「筋力増強、一点集中、全力全開、会心の一撃!!」

「なっ?!」


 突然の拳が、オガサンの腹をえぐった。


「流石お嬢様」


 まっすぐ吹き飛んで行くオガサンを見て、壁に激突して家が半分壊れるのを確認する。ちゃんと筋力アップと魔力制御が出来ている証拠にマリアは満足の笑顔をアイシャに向けた。


「やったー!」

「お見事ですよー」


 知っていた夫妻は、あのオガサンが吹き飛んだのを見ていたが、まさかそんな簡単にやられるとは思っていなかったので驚いている。

 ちなみにお嬢様が魔王の娘である事は、この二人しか教えていないし、崩れた家は元々解体予定だったので家主には許可を得ているから問題はない。

 その崩れた家の中から、平然と立ち上がるオガサンが現れた。


「ハニエルから言われた娘さんはお前だったのか……」

「物理障壁を展開するだけではなく、さらに変形させて喰らったように見せるとはナカナカ……」

「初見で見抜かれたんたが、アンタが噂のマリア先生か」

「そうですか、ハニエルから聞いてたんですね」

「じゃなかったら反撃してる」


 お嬢様がやってきて悔しそうにしましたが、十分以上の成果です。

 頭を撫でておきます。

 よしよし。


「一応秘密にしておくが、俺はハニエルほど甘くないぞ」

「それはこっちのセリフよ」


 お嬢様、撫でられながらでは決まらないセリフですね。

 夫妻が申し訳なさそうにやってきました。

 オガサンは笑って許しくれましたが、それはそれ。


「それにしてもとんでもない話になっているのは知ってるんだ。ただ、事情というか、情報が不足していてな、飯でも食べながら少し話すか?」


 お嬢様が頷いたので、このまま昼食です。

 ギルドの食堂ではなく宿屋になったのは、二人からのお詫びだそうです。





 情報の共有と交換を済ませると、オガサンは思った以上に協力的だった。何でも教えてくれたし、別れたパーティの事も話してくれた。


「……ハニエルから手紙を貰ったんだ。戦争の協力があった事と、それを拒否した事。アンタたち二人の事もな。俺が貴族嫌いなのはギデオンの影響も大きいが、家族を守れる自信が付いたってのもある」


 妻が運んでいる料理をカウンターで受け取り、夫がテーブルに運んだ。

 一通りの料理が揃うとオガサンが祈るように手を合わせたが、先生も私も食べる時に祈るような相手は無い。

 椅子に座った夫妻も同じことをする。


「さて、アンタたち二人の旅の目的は聞いているが、本気なのかい?」

「とーぜんよっ」


 力強く返答してリンゴジュースを飲む。

 相当気に入ってますね、リンゴジュース。

 お代わりもしていますし。


「そっちは有名なマリア先生だろ、こっちの話に巻き込まれたらどうなるかぐらい分かっているよな、子供を教育する立場としてそれで良いのか?」

「お嬢様にとって今は必要な事は全部します。経験が無ければ上に立てませんよ」

「……良い教師だな」

「それはありがとうございます」

「……なら、どうするか作戦ぐらい考えてるんだよな、先生?」


 なんですか、その目。

 先生認定しないでください、なんでそんなに信用するんですか、やめてー。


「作戦なんて考えても実行する組織が有りませんよ」

「何言ってんだ、ココが魔族だけの町だって知ってるんだろ」

「それはそうですけど、戦闘に向いてませんし、失敗すれば町が消えます」


 夫婦の顔が真っ青です。

 まあ、私から何度か説明はしていますが、町が消えるというのはショックです。

 お嬢様だって私だって、城が消えれば……正しく復讐してやりますが。

 うふふ。


「せ、先生、怖いよ」

「先生ってのは少し怖いぐらいが丁度良いもんだぞ」

「優しいのが良いわ」


 正直なお嬢様です。


「作戦を立てるにしてもスパイも居ますし、貴方にも手伝ってもらいますよ」


 発見した裏切者は5人。

 全て確保済み。

 オガサンを連れて尋問に行く予定を決め、その後に町の方針を決める為に話し合わなければならない。そろそろ本格的に来るだろうから。

 兎にも角にも……そう、兎獣人にも逃げて貰う必要はありそうです。

 料理はお嬢様が満足しているので美味しかったでしょうが、私にはまだ味が殆ど有りません。仄かに感じる

 魔素の補給に少し食べておきますか。





 町が妙な雰囲気に包まれているのは、不安が押し寄せていて、その集積地ともいえる広場に町の人達が相談するように集まっていた。


「やっぱり楽して儲けるというのは良くないんだな」

「しかし、マンドラゴラのおかけで町が豊かになったのは間違いない。戦争なんてやりたがる連中の方がおかしいんだよ」

「兎銃人達にはカラー便で手紙を送っておいたが、多分、逃げないだろうなあ……」


 兎獣人はその生態が不明で、町に住むと長生きせず、何処からともなく現れて森の中に棲みつき、小さな畑でマンドラゴラだけを育てて、それを食べている。

 最低限の文明は有るので家は建てるが、いつの間にか姿を消して廃墟となる事も良くある。そして美男美女が多いのも特徴の一つだ。

 一部研究者によると、サキュバスの子孫との説があったが、サキュバスは強かに長生きするのに対し、兎獣人はとても死にやすい上に寿命も短いのだった。

 未だに謎が多い所以である。


「カラー便って珍しいですね、あの鳥ってまだ存在するんですか?」

「俺の家で30羽ほど飼っているぞ」

「先生、カラーって?」


 身体の羽根の色が多彩で、その昔は人語を理解していたと言われる鳥である。

 伝説として伝えられているが、世界樹の近くに住むカラーは人と会話するらしい。


「何でも知ってるなあ、俺は世界樹まで行こうなんて見ただけで諦めたんだけどな」

「知っていてもその情報を生かせないと意味はないんですよ。知るというのはとても重要ですけどね」


 先生は好奇心が強い。

 ただし、ほとんどの事は知っているし、知らないというより忘れている事が多い。世界情勢のような常に変化する情報にはとことん弱いとも言っていたけど。

 そこで、今は情報収集である。旅の商人はちょくちょくやってくるし、オガサンなら信用が高いので、いろいろと教えて貰える。

 確かに、私や先生じゃ無理だもんなー。

 今も新しい情報を仕入れていたし……。

 ただ、裏切者達からは尋問しても情報は得られなかった。

 分かったのは家族を人質に取られている事ぐらいである。


「一番楽な方法が一つありますが……」


 オガサンが好奇の目で見つめる。


「先生の軍師としてのお話を伺いたいな」

「戦うなんて考えてる訳ないじゃないですか、ここで勝ってもずっと狙われます」


 負けると言わない辺りは先生っぽいのかな?


「そこで貴方の力をお借りします」

「俺の……?」






※おまけ



カラー「ぴーちくぱーちく!!

兎獣人「……?

カラー「足のコレ!!

兎獣人「シャベッター

カラー「知ってるんだからアホな事してないで手紙を読んで!!

兎獣人「ア、ハイ



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