第045話 勇者一人旅 (その3)
勇者ギデオン側の物語です
お嬢様が魔法の勉強に飽きてお昼寝してしまいました...
寝ている間に 一仕事してきますか...
正坐していた冒険者達を解散させ、ギルドは普段通りに戻ったのだが、岩砕きのルービックは犯罪者として牢屋に入れた。ギルドランクも剥奪が決定し、近隣の街から引き取ってもらうように手続きを済ませたのはギルドの受付嬢である。
何しろ、他に手続きが出来る者が居ないほどの田舎なので仕方がない。
「で、料理まで作ってくれるのか」
「今日は私の当番なのです。村の人と交代で食堂を管理してますので」
「腸詰肉と焼卵とパンとワインか」
「手抜きって言わないでくださいよっ」
まあ期待していなかったから十分だ。
量も山盛りだしな。
それよりも依頼内容がやばい。
本当に解決したのか?
取り巻きの二人は完全に俺を兄貴認定していて、コップやら取り皿やら、運んできて同じテーブルに座っている。
「その依頼そんなにヤバいんスか?」
紙を見せると二人揃って目が飛び出ている。
知ってたらこんな村に来なかっただろう。
「ドラゴン退治なんてやりたくねー」
「報酬も村ギルドで最大額だけど、誰もやりたがらねーっス」
「でも、撃退はしたんだろ」
「その依頼で大怪我を負った前ギルド長は仕事が出来なくなってしまいました」
なんで受付嬢まで座ってるんだ。
勝手に取るな、食うな。
道理で山盛りなワケだ。
「あの猫は事情を知ってそうだな」
「……知ってるよ」
テーブルの下から声がしたと思ったら、俺の足を登ってテーブルに乗った。
だから勝手に食うな。
「子供は良いのか?」
「安心して寝たよ。ついでに病気もただの風邪って教えて貰ったんだけど、どういうことなのか説明してもらえるかな」モグモグ
「俺としてはお前の事情を知りたい。子供を巻き込む危険だってあるんだぞ」
「そっ……それは……ぼく……」
顔を赤くしやがって、仕方ない奴だな。
「女だからってナヨナヨしてても可愛くねーぞ」
同じテーブルの奴らが驚いている。
お前ら知らなかったのかよ。
喋るのは驚かないんだな……。
「しょうがないだろ、ぼく、あんなに優しくしてもらったの初めてでさ、好きになったのは間違いない」
「お前も子供だからな」
「メスのケットシーって……ルービックの兄貴は知ってたんですかね?」
「あぁ、あいつは知ってるよ。ぼくが人型に成ってたのを見られちゃったからね」
「獣人系は人気が有るからな」
男二人が興奮しているが受付嬢の方は少し冷めていた。
つまらない事に巻き込まれたように感じたんだろう。
「それで、ドラゴンとはどういう関係だ?」
「ぼくの元婚約者だ……ってなんでそんな目で見るんだよっ」
ドラゴンとは結婚させられる予定で、それがイヤで逃げてきたのまでは理解できる。だが、ドラゴンがこの村を襲う理由がない。
猫の話だとドラゴンが現れたのは確かだが村を襲うつもりは無かったらしい。
「そのドラゴンは村になんて興味はなかったし、もう来ないって言ってたから心配は無い筈なんだけど、なんでも人を探してるって言っててさ……」
「じゃあ、本当に村は巻き込まれただけ、アイツの父親が死んだのが不幸すぎるな」
「それを知ったのは最近だよ。ぼくだってもう、なんて謝ったらいいか分からなくなっちゃって、本当の事も言えなくてさ」
「なら言わなきゃ良い」
焼卵が意外と美味いな。
この村には良い香辛料でもあるんだろう。
買っとくかな。
「はー、下らないし、詰まらんし、面倒だ。人探しなんてドラゴンがするのも意味わからん」
「人って言ってもあの魔王を倒した勇者の事らしいよ」
は、俺?
なんでだ、ドラゴンに知り合いなんていないことは無いが……。
「まさか、そのドラゴンは隠蔽魔法を使って村に近くに居るなんてことは無いよな?」
「凄い汗だけど大丈夫?」
「うるさい、答えろ。」
「え、あ、うん。もうすぐ来るかもしれないからって言ってたから周辺をウロウロしてると思うよ」
やっべー、これって俺の所為にされるじゃねーか。
逃げよう。
うん、そうしよう。
そんな時に黒い影が現れる。
「見つけたぞ!!」
ぎゃー、フラグが立ってた。
まずい、まずい。
俺をそんな目で見るな、って気が付いたのはコイツだけか。
「待て、逃げるな!」
「お金払ってー!」
俺は金貨を一枚置いて、焼卵と猫の首根っこを掴み、現れた奴に体当たりし、逃げるようにではなく、本気で脱兎の如くギルドを出た。
倒れた男はすぐに立ち上がって俺を追いかける。
事情が全く理解できない奴らはそのまま食事を再開していた。
月明かりの綺麗な晴天の夜道を村の外まで逃げたが、当然のように追いつかれる。ドラゴンとは戦った方が楽だが、村の近くじゃまずい、もっと遠くへ。
「お、おい、なんでぼくまで?!」
「てめーも関係者だからなっ」
良い感じの森に囲まれた小さな広場で止まると、振り返って空を見る。
ドラゴンの姿で急降下してくると、人型に変わって足を振り下ろした。
良かった、こいつ弱くてたいしたことないな。
そのまま足を掴み、腕を半回転させて地面に叩きつける。
「ぐぉっ?!」
「えーっ?!」
猫がドラゴンの攻撃を赤子の手をひねるように返したことに驚いている。
「あー助かった、これならなんとかなるぞ」
「何とかなるって、コイツ結構強いドラゴンだよ?!」
「え、弱いぞ」
斃すつもりじゃないから加減はしてある。
傷が一つもないドラゴンが立ち上がって俺を睨みつけて叫んだ。
「貴様が魔王城の関係ないモノまですべて斃したギデオンだな!」
もう、否定する意味はない。
慌てていて鑑定を弾く事も出来なかったからバレバレだ。
猫も驚いている。
「巻き込まれたくなかったらこの魔法袋に入ってろ」
猫は身震いして袋の中に入った。
この中なら俺が死なない限り取り出せるし、少しの間ならちゃんと呼吸も出来る。
便利な袋だ。
「全てかどうかは知らんが、生きている者は倒したな。恨まれると面倒なんでな」
「なら失敗だったな、先生まで倒したのなら俺が許さん!」
「先生?誰だそいつは」
「俺の先生、スケルトンのマリア先生だ!」
「……知らん。そもそもあの城にスケルトンが居たのか?」
いや、確かに居たのは見たが、近づいても来ないようなザコばかりで、ドラゴンに先生なんて呼ばれるような強い奴は知らない。
もしかして育ての親か?
「先生はな、どんな種族でも分け隔てなく接し、魔王だって認める凄い人なんだぞ、それを……それを……」
ちょっと、いろいろ、情報が整理できていない。
このドラゴンは猫の元婚約者ってだけじゃないのは理解した。
よし、めんどくせー。
殺さない程度に倒そう。
「終わったぞ」
「うわー、凄いマジで倒してる……それも、ちゃんと死んでない」
「あったりめーだ」
「ううっ……マリア先生、俺は……」
身体中が痣だらけのドラゴンが悔しそうに呟くマリア先生について、猫は知らなかった。ドラゴンから詳しく聞いても分からないし、スケルトンでそこまで強い奴なら俺の前に立ちはだかっていても不思議じゃないはずだ。
「そもそもスケルトンなら殺しても死なねーぞ」
「なんか口調変わったね?」
「一人の時はこんなもんだ、気にすんな」
「先生に教わった重力魔法まで無効化されるなんて……」
倒れて動かないが口は元気だ。
何しろボコボコに殴っただけだからな。
ってか、あぶねー魔法教えてんじゃねーよ。
とんでもねー奴だなそのマリアってスケルトンは。
「だいじょーぶですかー?」
「くっそ、また誰か来たな……」
ドラゴンの所為で気が付かなかった。
しかし、夜中というほどでは無いが結構な夜で、女が一人で駆け寄ってくるのには違和感しかない。
何者だ?
「あらー、やっぱりドラゴンですねぇ、素手で倒したんですか?」
「いや、ドラゴンを見ても驚かないお前が変だが」
「きゃー、猫ちゃん可愛い。ケットシーですね。お友達ですか?」
「いや、だから、質問に答えろ」
勝手にドラゴンに近寄って何かをし始めた。
「げんきになーれっ」
柔らかい光がドラゴンを包むと、すぐに起き上がった。
って、かなり殴って動けないはずだったんだが?
「あれ、何ともなくなったゾ」
「はい、回復しました」
この女、さらっととんでもない事しているんだが、猫が猫のふりしている。
いや、そんな事しなくても猫だぞ、お前は。
しかし、この回復……いや、治癒魔法だ……ハニエルの魔法に似ているな。
「遠くから見てたんですけど、もしかして勇者様ですか?」
「遠くからって、どの辺りからだ?」
空に浮かぶ月の方を指さしている。
「あの辺りの空中から見てました」
「浮遊魔法なんか使ってまで見学するもんじゃないと思うけどな」
「なんか、一方的にボコボコにされる予感がしました」
ドラゴンが落ち込んでるぞ。
そりゃあ、もう、凄い落ち込み具合だ。
「それなりに強い自信が有ったんだが、流石に魔王を倒した奴には勝てん」
「仇討ちは推奨しないぞ、恨みしか生まない」
「それ、アンタが言うセリフじゃないよ」
「みんな仲良しですねー」
「「「それは違う」」」
あまりにも息がぴったりだったので、驚いて一瞬の間の後、笑われてしまった。
俺は巻き込まれただけなんだがな。
鑑定しとくか―――
「てーっ?!」
「な、なんだいきなり驚かせないでくれよ」
「コイツ聖女じゃねーか」
「聖女……様?」
ドラゴンだって驚くわ。
聖女って言えばハニエルがそうなるような話があったが……。
「あははっ、違うよー、ちゃんと見て」
「偽りの聖女ってなんだ……」
「知らないけど急にこうなったの」
「職業ってそう簡単に変わるもんじゃないだろ」
「知らないよー。でも、そのおかげで城から出られたから大感謝してるの」
なんかとんでもない事になっている。
偽りの聖女って、じゃあなんだ、本物でも居るのか?
「あ、あと……あの……その……」
モジモジして頬を染めている。
まーた、いつもの奴だ。
知ってた。
「ほらよ」
「わー焼卵ありがとう!」
嬉しそうに食べているのは良いんだが、この状況で平気で食べれる精神力は見上げたものだな。
ドラゴンは俺を睨んではいるが、もう何もしてこない。
そもそもコイツの攻撃を喰らっても痛く無い。
しかも、このドラゴンは無職だ。
「何故、俺を見て笑ってるんだ」
「すごいなーって思ってな」
「ドラゴンは仕事が殆ど無いんだ、無職は普通だぞ」
「いや、知ってるぞ、もちろん」
「それじゃあ、ココからはみんなで旅しましょう」
はぁ?
何言ってんだコイツ。
「もう全力でくっついて行きますから、面倒見てくださいねー」
そう言って俺の腕に抱き付いた。
ちょっと待て……お前呪いかけたな、可愛くても面倒な奴はやめてくれ。
ドラゴンに笑われてるぞ。
「あっ……」
ドラゴンも腕を掴まれた。
「チーム、イチレンタクショーの結成でーす」
「ぼくは関係なくてよかったよ。あとの事は説明しておくから、旅を楽しんでね」
猫が逃げていく。
月明かりがあったとしても、姿は直ぐに見えなくなった。
「ちょっと待て、色々と突っ込みたいところがあるぞ。それにっ、うっ、ごっ、けっ、ねーーーっ!!」
「聖女の祝福だから安心してね」
「呪禍の間違いじゃねーかっ、やめろっ」
「俺を巻き込むなぁぁぁぁぁあ!!」
何処までも付いてくると言うより、特定の条件で一ヶ所に集まる呪いだ。
その集める為の呪いの言葉が使えるのはこの聖女のみ。
どこが聖女だ。
「私センス、よろしくねーっ」
そんなの訊いてねーよ。
「あ、夜の相手もしてあげるから、浮気したら呪うからね」
ドラゴンが青ざめている。
俺に負けた時よりも絶望している。
……こうして、俺の一人旅は終わった。
※追加情報
名前 ギデオン(シュウイチ・山本) 性別 男 年齢 22 種族 普人
職業 勇者 Lv 87 筋力 583 魔力 568 敏捷 78 魅力 120
HP 2943 MP 650
所持 魔法袋 太陽の剣
特殊技能 異世界転移 ドラゴンバスター 鑑定Lv3 自動回復 技能神と契約
名前 シュウイチ・山本 性別 男 年齢22 種族 普人
職業 旅人 Lv 38 ギルドランク +D 登録地 モガルド
記録 薬草の目利き
名前 バジル(にゃーご) 性別 女 年齢 86 種族 ケットシー
職業 逃亡者 Lv 5 筋力 30 魔力 80 敏捷 150 魅力 250
HP 765 MP 320
所持 なし
特殊技能 変身 妖精の加護
名前 ヴァルド 性別 男 年齢 385 種族 ドラゴン
職業 無職 Lv 999 筋力 325 魔力 255 敏捷 135 魅力 80
HP 1192 MP 156
所持 なし
特殊技能 竜の加護 鑑定Lv2
名前 センス・ピピーニン 性別 女 年齢 19 種族 普人と妖精のハーフ
職業 偽りの聖女 Lv 69 筋力 5 魔力 108 敏捷 15 魅力 333
HP 893 MP 634
所持 精神の杖
特殊技能 聖女の覚醒 治癒Lv3 鑑定Lv1 予感Lv1




