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第044話 勇者一人旅 (その2)

勇者ギデオン側の物語です


お嬢様は寝る前なのにリンゴジュースを飲んでいます...


美味しそうです 何故か、渋いお茶が飲みたくなりました...




 猫は捕まえたし、少し小腹も空いた。

ついでに飯を食べて行くか。

田舎の出店は少なく、肉を焼いているのは一軒だけだ。

 匂いは良い。

 肉焼きの串を5本買って食べる。田舎にしては美味いな。

 だけどな、俺の食べるところをジーっと見るな。


「にゃ~」


 猫らしくするな、人型に成れるくせに。

 あっ、俺の肉を……お仕置きが……そんなに怯えるなら横取りするなよ。


「なんだ、つまんない仕事して、猫に遊ばれてるぞ」

「そこら辺のテキトーな猫を捕まえて押し付ければ依頼は達成した事になるもんな」

「そんな装備じゃまともな仕事も出来ないんだろ」


 なんでこういう時にツルム奴らって三人組が多いんだろう。

 しかも、おあつらえ向きと言っても良いような巨漢が居る。

 昔からの謎だ。


「無視するとはいい度胸だな」

「褒めてくれてありがとう」

「にゃ~」


 ケットシーが俺の肩に乗ってもぐもぐとしている。

 鳴いた隙に奪うとはとんでもない奴だ。

 でこぴんの刑だ。


「おい……ぁ……れ」


 俺の肩を掴もうとしたから避けただけだぞ。

 ついでに転がしとくか。


「あべしっ」

「あ、兄貴?!」


 隙だらけだが、多分、俺はこう思われているだろう。

 転んだ隙に逃げやがった、と。





 ギルドに到着すると子供がカウンターの横で椅子に座って待っていた。

 俺ではなく、猫を見ると椅子を蹴倒して駆け寄ってきた。


「にゃーご、どこ行ってたんだよー…」


 依頼主は俺の目の前で俺を無視してぴょんぴょんしている。

 屈んだら猫を持ち上げて抱き寄せている。


「にーちゃん、ありがとーなっ」


 ケットシーの方もまんざらじゃないようだが、心配させずにちゃんと説明したらよかったんじゃないか。


「じゃあ、これ報酬」


 銅貨3枚を手に入れた!


「じゃあ、これでコイツの餌でも買ってやれ」


 銅貨3枚を渡した!


「えっ……いいの?猫探しって結構大変だからやってくれる人いないって言われたんだけど」

「そんなヘタクソならそうだろうな、俺なら散歩のついでだ」

「おにーちゃんすごいんだね、ありがとーっ」

「おう、気を付けて帰れよ」

「うん!」


 上機嫌で帰って行く子供とケットシー。

 アイツ、いつ喋るんだろうな?


「いたぞ」

「てめー!」

「なんだ、まだ俺に用なのか?」

「ちょ、ちょっとやめてください!」


 受付嬢が慌ててカウンターから……出てこないな。

 身体が少し震えている。


「こいつらなんなんだ?」

「このギルドで一番強いBランクの……」


 受付嬢を見ていたら後ろから自慢気な声が聞こえる。


「岩砕きのルービックとは俺様のことよ」

「へー」


 転がしとこ。


「んべっ」

「ちょ、兄貴……どうしたんですか?」

「わからん、何故か足から力が抜ける……」

「調子が悪いならベッドで寝てろ」


 懲らしめても良いが、相手にするのもなあ……。

 完全に受付嬢がビビってるじゃないか。

 確かに力は有りそうだな。

 鑑定……する価値も無いか。


「キサマのようなDランクぐらい片手で……むべっ」


 転んだ拍子に木の床が抜けた。


「岩砕きさん大丈夫ですかー?床砕きになってますよー」


 皮肉たっぷりに言うと、巨漢が床を破壊しながら立ち上がった。

 ちゃんと修理代払ってやれよ。


「よくも恥をかかせてくれたなあ、オイ!」

「お前が勝手に転んだんだろーが」


 顔全体に赤みが増したかと思ったら、耳まで真っ赤になって俺を睨んでくる。


「やっちまえっ!」


 お前がかかって来いよ。

 ったく。


 取り巻きの二人が剣を抜いてニヤついている。

 受付嬢は涙目で、役に立ちそうもない。

 本来ならギルドの方で厳しく指導する筈なのだが……。

 ギルド長はいないのか?

 舌なめずりをした顔で俺に近づいてくる。

 よく考えてみたら、猫に関わっただけでなんでこんなに絡まれるんだ?


「一応訊くが、ご法度だよな?」


 震える受付嬢が一度だけ頷いた。

 ギルド長は不在みたいだしなあ……。

 いや、待てよ。

 コイツが一番強いBランクって言ってたよな。


「お前、ギルド長か?」

「今頃気が付いても遅い。お前には罰を受けて貰うのさ」


 お仕置き決定。

 こんな可愛い娘をビビらせるなんて許せん。





 3分後、何故かギルドに居た冒険者全員が俺の前で整列して正坐している。

 関係ない奴も居た筈なんだが、こんな田舎じゃギルド長に逆らえるわけもないか。

 しかも、事務仕事は全て受付嬢一人にに任せていたそうだ。

 教育しとこう。


「あ、兄貴…お強いんですね、へへっ」


 俺を斬ろうとして床に埋められた取り巻きAだ。


「ルービックってお前らから見てそんなに強かったのか?」

「オークと力比べして勝つぐらいは強いんですけど、兄貴が強すぎますぜ、へへっ」


 こちらは取り巻きB。

 受付嬢がキラキラした目で俺を見る理由は分かるが、ここに残るつもりは無い。

 気を失ってうつ伏せで倒れたままのギルド長兼冒険者のルービックには手錠が嵌められている。

 岩砕きで有名なのは間違いはなく、このギルドに来た当時は活躍してくれたそうだ。

 受付嬢がギルド長不在で全てを代行するぐらいやりたがる者がおらず、お願いして名前だけでも、というのが始まりらしい。

 ギルド長になると多少の無理も通せると思ったのか、態度が急変したらしい。


「本当にDランクなんですか?あなたほどの腕ならAランクもすぐだと思いますけど」


 なかなか良い目をしている。

 鑑定しているワケじゃなくとも、人を見る目は……無いからこうなったんだよな。


「しかし、他の連中までなんで正坐してるんだ」


 以下10人の冒険者で、女性も3人いる。

 そっぽ向いた。

 ああ、お前らコイツの女か。

 娼婦館も奴隷も居ない村だもんな。


「俺が居残るかどうかで態度を変えるつもりだろうが、安心しろ。俺は明日にはこの村を出る」


 受付嬢が悲しそうな目で俺を見詰めてきた。

 というか、こんな奴より相応しい奴がいるじゃないか。


「お前らがあの猫を付け狙う理由は何だったんだ」

「えっ……知っててあの依頼を受けたんじゃ?」

「知らん」


 全てを軽い口でぺらぺらと説明したくれた事を要約すると、計画を実行して、母親を重い病気だと偽って高額を請求し、ケットシーなのは知っていて、捕まえて奴隷にするつもりだったらしい。


「確かにアイツ強い筈なのに何もしてないんだよな。特に忠義に篤い種族でもなかったはずだが」

「いつまでも猫のふりをしているから秘密が有ると思って探ってたんですよ」

「あー……アイツの秘密か」

「何かご存じで?」

「まだ大人じゃないのは確かだな。それに、アイツが成長してたらお前らで勝てるワケないだろ」

「そーなんス、だからこっちの兄貴が調べるように指示してたんっス」


 そっちとかこっちとか、俺を兄貴認定するな。


「一つだけ疑問が有るとすれば、ケットシーがこんな田舎にくる理由だが……」

「あの子供が変なコトに巻き込まれているって可能性はないんスか?」

「有るとすればそいつの父親が失敗した依頼の内容によるが、そんな面倒事に巻き込まれそうな厄介な依頼があったのか?」


 受付嬢がカウンターで過去の依頼をサラッと調べると、その当時の依頼の概要が書かれた紙が出てきた。そんな昔の話でもなく、半年前ぐらいだった。

 まだ岩砕きがココに来る前の事で、一応は解決したらしい。

 ただ、その紙を受け取って確認した依頼内容は、こんな田舎では場違いなほどの難易度だった……。






※おまけ


「お前らいつまで座ってるんだ

「足が痺れてしまって……

「回復魔法が使える奴はいないのか

「使える奴はそこで痺れて倒れてます

「アホか……


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