第041話 古の魔族
なんか、一話の文字数が増えて来た気がする……
気の所為かな……
ともかく
第三章 勇者と貴族とお嬢様
はじまりまーす
「た、たすけてくれーー!!」
いきなりの叫び声で、前方からは大人とその子供らしき複数人がこちらに向かってくる。長閑な感じのする景色にとても似合わない。
「おかしいですね……」
「助ける?」
「んー、なんと言いますか、鑑定してみても怪しい人が見当たらないんです。もちろん魔物でもないですし、ドラゴンのような特殊個体も見当たりません」
そう言われても、目の前からは確かに逃げてくる人達が……。
「お嬢様も鑑定しましょう」
「う、うん」
……ナニコレ、ココの人達って全員が魔族なのかしらね?
そして逃げ出して来た人達は、私の横を通り過ぎて先生に寄って行った。
確かに子供ですけどぉ……。
「旅の方、すまないがアレを何とかしてくれ!」
「アレとは?」
今度は隣の女性が先生に訴える。
「アレよ、あの巨大な化け物が見えないの?」
「見えませんけど」
逃げて来た人達が後ろを振り返ると、何も見えない。
「あ、あれ……?」
「おかしいな……」
「で、でも、僕達も見たんだ」
「何をm……ああ、なるほど」
お嬢様も気が付いたようです。
「幻影魔法よね?」
「大正解です」パチパチ
「やったー!」
なんで逃げて来た人達にそんな目で見られるんですか。
「なあ、やっぱり……」
「そうよね……」
不穏な会話ですね。
「まあ、事情ぐらい聞かせてもらえますよね?」
助けを求めて来た男が唇を噛んで悩んでいる。
「種族的な問題でしたら我々は魔族寄りなんで大丈夫ですよ」
「なんか魔族の人が多い町って珍しいけど、私が魔族だから」
「えっと、こちらの方は?」
「マリア先生は問題無いわ、私の先生だし」
「あなた達なら話しても問題無いので、ばらしちゃいますけど、元スケルトンです」
皮膚がドロッと溶けて骨が見えるが、流石魔族なのか、驚くより感心している。
「……マリア先生って強いのか?」
「私が保証するわ」エッヘン
お嬢様に自慢されると照れますね。
えへへ。
「確たる証拠はないのだが……とりあえず町まで来てもらって良いかな」
「良いわよ、宿屋かギルドがある場所も教えて貰えると助かるんだけど」
「ギルドはないんだ、依頼が無いというより、俺達は困ってないからな」
町に入ると、想像以上に田舎で、レンガの家が並ぶ商店街は有るが、他は殆どが倉庫の併設された大きな家で、家畜も多いから一部は臭いも凄い。
「町とは言ってもそれほど人口は多くなくてな、宿屋も経営難さ」
他の人達は町に入ると解散し、今は夫婦らしき男女に案内されて宿屋に入る。
「あなた達の経営する宿屋ですか」
「そうだ。ここは元ギルドだったのを改装して宿屋にしている」
「それで、あの幻影魔法は?」
丸いテーブルと四つの椅子。
勧められて座ると女性が厨房の方に消え、すぐに飲み物が用意された。
「リンゴジュースだけどいいかしら?」
「あら、ありがと」
「おねーさんの方はコーヒーね」
「おや、良い香りですね」
ふむ。
なかなか美味しいですね。
と、それよりも。
「聞かせていただけますか?」
二人は自己紹介をし、この町の住人の殆どが魔族なのは魔王国領からの移民で、それも1000年以上前との事。町の名前は当時の開拓の代表者の名前を取ってメイガス。
基本は農業で生計を立てていて、数年前までは他の種族も住んでいたのだが、だんだんと減り、今では大多数の魔族と少数のハーフが居るだけ。
へー、そんな事が。
「良い畑でしたね」
「解りますか」
「私もアイシャも鑑定できるので、土地の肥沃さも判別できるのです」
「それは羨ましいですね」
話を戻し、最近の事を話そうとする前に表情が暗くなる。
以前はココから辺境伯の治めるドードリアの町まで穀物を運んで売っていたのだが、そこで知り合った冒険者が直接買い取りたいと町まで来て買ってくれるようになった。
そうなった事で我々はドードリアまで行く必要がなくなり、荷物もその冒険者が馬車を用意する事で、運搬に関してもかなり楽になった。
「良い話じゃないですか……あっ」
ドードリアに行く馬車が激減した事で、ドードリアではメイガス産の穀物が入荷する事が殆ど無くなった。良質の小麦や野菜が届けられなくなったことで、ドードリアでは価格が高騰し始め、他の町と比べても人気が高い所為もあって、直接買いに来る商人も現れたのだが……。
「数ヶ月前の話ですので、今は売れる物が無いんです。あるのは我々が食べる分で、他には回せません」
「それを奪いに来る者が現れたと」
「それは撃退しました」
「じゃあ、さっきのは?」
「まだ良く分からないんです。何処からともなく恐ろしい魔物が現れて倉庫を襲うのですが、我々では倒す事も出来ず、避難している間に倉庫の食物が駄目になりました」
奪われたんじゃないんですね。
「被害が出ているのなら辺境伯に助けを求めればよいのでしょうけど、既に助けは求めたのに何も助けが来ないまま今回の事件。と言うワケですね」
「お察しの通りです。以前はただの野盗で、それは昔から我々自身が撃退しています。その冒険者というのも実力はSランク級と言われる人で、魔物に襲われると、逆に狩って素材にしてしまうぐらい強い方なのですよ」
「その方の名前は?」
「オガサンという人です。なんでも魔王様を倒したパーティの一員だったとか。魔王様が倒されたというのはショックですけど、我々のは先祖の代からここに住んでいますので、そこまでの忠誠心は持ち合わせていません」
お嬢様の機嫌が悪くなりました。
これは仕方のない事ですし、我慢してください。
そもそも魔王国の住人ではないのです。
「とても気さくで良い人なので、我々もそオガサンを信用しています。しかも我々の方で不足している鉄製品や農具を運んできてくれるので、取引も安定しています」
「それが気に食わないのが辺境伯という事は理解できます。しかし、奪いに来るほどの事なのかという問題が……」
話の途中で人が入ってきて、話し掛けてきた。
「またやられた。今度は腐らせていきやがった…」
「なんだと…」
「それは…おかしいですね」
「先生は何か気が付いたの?」
入って来た男はさっき逃げてきた者達の中に居たので、二人の事を知っている。
なので邪魔はせずに軽い会釈で耳を傾けた。
「このやり方だと、最終的にこの町を全滅させることにしかなりませんよね」
「ぜ、全滅……?!」
「続けて欲しいのなら交渉、欲しいのでしたら運び出す、燃やしたり腐らせたりするのは、この町の存在を嫌うという事になりますから」
「た、確かに……」
「そのオガサンという人はまたこの町に来るのですか?」
「契約では三日後に来る事になっています。この町では鍛冶や裁縫に必要な道具は不足しやすいので運んできてもらってます」
「なるほど、簡単に言うと大手の取引を横取りされたって事ですね」
「運ぶ手間や人員と食糧、門税の支払いが無くなるのでとても助かるんですよ」
「それだけドードリアでの税収が減るという事ですよね」
「確かにそうだが……」
だが、そんな事で近隣の町を全滅させていたら、戦争が起きてしまうだろう。
何かもう一つありそうな。
「この町での特別な生産品って有りますか?」
「あぁ、我々の特産品はマンドラゴラだ」
それじゃん。
お嬢様の目が細くなって欠伸をしました。
※あとがき
■:ジョン・フィルド
宿屋の主人でメイガスの代表
魔族なので基礎能力は高いが戦闘は苦手
■:レテ・フィルド
ジョンの妻
魔族なので基礎能力は高いが戦闘は苦手
子供はいない
■:メイガスの街
移民した魔族の住む街
1000年以上前に他の種族との交流目的で魔王国領を出た
200人前後が農業を中心に安定した生活をしている
■:ドードリアの街
辺境伯の治める街で、領地内では最大の貿易の中心地
港も有る
■:辺境伯
ヒルデスハル辺境伯
巨大な貿易港をいくつも所有し、敵対国との交渉もする
高級品のマンドラゴラを格安で入手し高額で売っている




