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第040話 ギルドの立場

「お城のお風呂よりひろーーい!!」


 お嬢様がはしゃいでいます。


「ひろーーい!!」


 奴隷だった子供達もワイのワイのと集まってきました。

 ココは女性用なので、子供でも男の子は男性用です。

 男の子達の入浴は……申し訳ありませんがこちらと関係ないのでカットです。


「せんせーい、洗いっこしよー!」

「わたしもー!」


 貴女は聖女ですよね、大人ですよね、聖女の仕事ありますよね。

 謎の湯気で何も見えません。


「まあ、今日は良いにしましょう。私も大人ですから」

「先生って結局、幾つなの?」

「禁則事項です」


 キンソクジコウって、なに。


「それにしてもよく貸し切りに出来ましたね」

「この子達はここで働くの。もう少し大きい子達ならギルドやお店で働けるけど、捨てられたばかりの子も居るから……」

「とにかく身体を洗わないとだいぶ汚れましたね」

「服も洗濯したいわ」

「洗濯ならあっちでやってくれるわ」


 子供の仕事が有りますね。

 良い事です。


「ただ、石鹸が足りなくて」

「石鹸ならありますよ」


 だから、なんで胸の谷間からそんな物が出てくるの。


「さあ、みんなで洗いましょう」

「はーい!」


 素直な子供達です。

 うんうん、良い子ですね。


「嬉しいけどなんて私の頭を撫でるの」

「お嬢様ですから」





 湯上りに孤児院でご飯をたくさん食べて、あの慌ただしかった時間はあっという間に過ぎ去る。二人は最後の一晩をギルドで過ごしていた。

 ギルドではギルド長が珍しく顔を出していて、二人に感謝の言葉を述べただけで姿を消した。何故なら、今までやる事の無かったギルドに一気に依頼が舞い込んできていて、天手古舞なのだ。

 特に護衛依頼が多く、ボールドのギルドに応援要請を出していた。


「というか、こんなに冒険者っていたんですか?」

「今までは素通りしてたからね、食堂も大忙しであの子達に助けられてるよ」


 まだ顔に傷の有る女の子が給仕をしていて、慣れない注文に戸惑っているようだ。冒険者達の方も気の荒い者は少なく、賑わいの有る良い環境で働けそうだ。

 夜だというのに、受付の方も次々と舞い込む依頼を纏めていて、こちらも力仕事は男の子が、書類や受付を女の子がやっている。

 ハニエルの強い要望で優先して仕事を与えられた結果である。

 勿論だが、この街にも普通の住民は存在し、殆どが聖職者とその関係者だったのだが、今は聖女ハニエルに従っている。奴隷に対して特に嫌悪感を示していた者達も、ハニエルを前にしては認めるしかなく、元主教がその地位を失った上に追放された事を考えると、今は大人しくするしかなかった。

 これが今後にどのような影響を及ぼすのか、それについての予想が出来たとしても、マリアにもアイシャにも関係はない。ハニエルもそのくらいの事は分かっているだろう。


「本当に、たった三日で変えてしまいましたね」


 あの時の横槍男が会話に割り込んでくる。

 偽物聖女と言っていたが、今はにっこにこで自慢している。


「そうさ、ハニエルはギルドの英雄でもあるし、救世主でもあるし、しかも聖女で、勇者パーティの元メンバーなんだ、誰も文句の一つもつけようが無い」

「あのハニエルがねぇ……」


 泣いたり、笑ったり、怒ったり、忙しい日々ではあった。

 アイシャも少しは巻き込まれていて、先生の復活を待っている間に子供達にご飯を食べさせていたのだ。料理はハニエルに教わったので少しは出来るようになっている。


「あんた達も明日には旅立つのか。ギルドとしては残って欲しいんだがな」

「それはダメよ、あと3人ぶん殴らなきゃならないし」

「ぶ、ぶん殴るとは穏やかじゃないな」

「まあまあ、アイシャ。今夜は早めに寝て明日に備えましょう」

「うん、そうしよっか」


 二人は賑やかな場所を離れ、ぼろい家の所為で少しうるさい声が聞こえる宿屋の一室で眠りについた。

 先生は寝ずに何かやっていたようだけど。




 翌朝、誰の見送りも無く、街から出る為の税金も顔パスで通過した。

 先生の魔法袋のおかげで荷物も異常に少なく見えるので、逆に心配された。

 街道は広い草原を横切るように続き、子供らしくスキップしながら進む。


「分かれ道ね」

「どちらに行っても途中の町で一泊します」

「人が少ない方が良いわね」

「それは同意します」


 聖地ではもう見る事の無い奴隷達。

 だが、旅先ではまだ見かける。

 それはアイシャの心を悲しくさせるのと同時に、ハニエルを思い出して怒りも込み上げる。アイツだったら絶対に許さないだろうが、今の私にはそんな力も余裕もないから。


「先生、なんか悔しいよ……」


 奴隷を運ぶ商隊と何度もすれ違うのは、この街道それだけ重要なルートだからであるが、そのたびに少しずつ心を削るような痛みを感じる。


「これからはもっと増えるんです。場合によってはギルドでも売買するのも普通ですし、お嬢様の心が荒むのは喜ばしい事ではありませんが……」

「私と同じ思いをしても、私のように先生が居るとは限らない」

「なんです、それは?」

「私の心を安定させる為の魔法の言葉よ」

「なるほど」


 気持ちいい風も、心地よい陽射しも、それは心の持ち方次第。

 人が少ない町を目指す二人は、早くも無く、遅くも無い足取りで進んでいた。


「次の町のギルドは利用しなくても良いですね」

「そーね、また面倒な事に巻き込まれたくないし」

「……フラグになりそうなセリフですね」

「そんな事ある訳ないじゃなーい」


 聖地から遠く離れ、幾つかの町を通過し、何度か魔物に襲われつつも、旅としては順調で、特に大きな事件もなく旅を続けた。

 森を抜け、丘を越えると広大な畑がある豊かな土地が見えた。

 魔物の気配も少なく、柱にくくり付けられた魔除けの鈴が僅かに揺れて音を響かせていた。


「おや」

「ん?」

「珍しい、ココって魔族が多いみたいです」

「へー……」


 そして前方からたくさんの人がこちらに向かって走ってくる。

 ……嫌な予感しかしない。







※おまけのネタバレ



次回……第三章!!



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