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第038話 聖女誕生

 伯爵の従えている直属の兵によって、その場の警備とケガ人の治療が開始された。ハニエルも参加し、自分が叩きのめした聖職者の治療をしている。

 暇になったアイシャが先生の所に近づこうとするが、その前に呼び止められる。


「そこの小娘、名は?」

「アイシャよ」


 相手が伯爵だと知っても態度を変えない娘に興味を持つ。


「ではアイシャよ、この者達を倒したのはお主か?」

「そーよ、手応えが無さ過ぎるわ」

「ふーむ……」


 考え込む理由は分からないが、治療を終えた主教が改めて伯爵の前に現れる。


「伯爵殿はどちらを信じられるので?」

「主教様のやられている事に何かを制限しようなどとは思っておりません」


 主教の表情に笑顔が戻った。


「ですが、奴隷とはいえ、助けを求められるのでしたら立場は関係ない」


 ハニエルに笑顔が戻って、主教の笑顔に陰りが……。

 治療を終えて戻ってきたハニエルが、伯爵の方ではなく、先生に近づいた。


「ねぇ、先生」


 質問の内容は分かっています。

 えぇ……。


「今は答えません」


 ハニエルは少し残念そうにするが、そこに伯爵からの質問が飛ぶ。

 それは、ハニエルが訊きたかった内容と同じであった。


「そちらの女性は、奴隷ではないな。先ほどの心地良い何かを放った原因かな?」


 女性、それも奴隷でないと理解しているのなら話し方は変わる。


「……まぁ、良いでしょう。事情が理解できたのでしたら、教えて差し上げます」


 先生の口調は、明らかに上からの物言いで、主教も聖職者達も、その場にいる奴隷達も驚きを隠せない。ハニエルに至っては袖を引っ張って止めようとしている。

 だが、今のマリアにそんな事は関係ない。


「ココがどんな場所なのかは理解していますよね?」

「しているつもり……だが、何か違うのかな?」

「ココは聖地ではありません。魔素溜まりの放出を抑えているだけの封印の施設です」

「何を言うか!」


 主教が怒るのは当然で、聖地では無いという言葉を認めさせては困るのだ。

 何の為に独自の宗教と教会と、制度を手に入れたのか、意味が無くなってしまう。


「そもそも聖女の力が無ければこの場所は維持できません」

「……聞いている話と少し違うのだが」


 伯爵が主教に視線を向ける。


「そいつの言う事は嘘に決まっています」

「ウソじゃないわ、だって主教でも通れない壁があるでしょ」

「……」


 伯爵は少し混乱している。

 何しろ情報量が多過ぎて、聖女の力についても、詳しくはない。

 たまたま領地から近く、治療に良いテルマエと聖地であるから通っていただけで、先代がどうしたのかまでは知らないのだ。


「凄い面倒事では無いよな?」

「ブリード伯爵家には何も伝わっていないのね」

「……クラウ・ド・ベネシスという男がこの地を治めていた時に協力したくらいだ。我が伯爵家がただの商人だった頃の話で、何千年も前の事だぞ」

「そう、聖女のクラウドがね」


 その言葉を聞いて、主教と伯爵が声を出して驚いているのを、アイシャとハニエルが釣られて声を出している。あまりの声にビックリしたのだ。

 二人の声が同時に響く。


「「全員整列!!」」


 その声に聖職者は主教の後ろに、兵士は伯爵の後ろに並んだ。


「「跪け!!」」


 声の主も同時に跪く。


「ナニコレ」

「私も知りたい」


 先生はクソでか溜息を吐き出していて、おでこに手を当て俯いた。


「もう、めんどくさいんで聖女も造っちゃいましょう」


 先生が手招きしているのは私を呼ぶ為じゃない。

 ちょっと嬉しそうにハニエルが駆け寄ったのが悔しい。


「な、なんでしょう」

「貴女には素質が有ると言ったのは覚えていますよね」

「え、えぇ」

「良いですか、絶対に受け入れるのですよ」


 そう言うと先生がハニエルのおでこに指を押し当て……そのまま指がおでこに突き刺さる。驚いているだけで痛そうではない。


「いきますよ」

「あわわ、はわわ、うぎゃぅっ……目がぁ~まわる~、せかいが~にじいろに~」


 跪いたままその光景を見守る者達が、固唾を飲みこむ。


「ちょっ、受け入れてっ」

「きょひしてませーん」


 と言っているが、手足をバタバタさせていて、微妙に浮いている。

 どういう事でしょう。

 聖女の職業に変えているだけなのに、妙に抵抗されます。

 ……なるほど、どこかに本物の聖女が存在しているという事ですね。

 それも覚醒済みの聖女が……。

 仕方ありませんね。


「お嬢様」

「今度は私ね、なぁに?」


 ハテ、なんで嬉しそうなんですかね。


「今から面倒な魔法を使いますので、私の身体がどんなになっても驚かずに回収してください」

「あ、うん」

「信用してますから」


 先生は私をじっと見つめた後、にっこりと微笑んだ。

 とても優しい笑顔は母親を想起させる。

 だが次の瞬間に、先生の身体から光が放たれる。


「ほにょぉぉぉぉぉぉおおおお?!?!?」


 奇声が聞こえた後、光が消えると、先生の身体がドロドロと溶けていく……。

 神気魔法は堪えますね、アイツの力を借りるにはまだ負担が大きいようです。

 ですがっ……成功しました……。


「先生が溶けて骨だけに……」


 いつもの先生の姿になったと言えば、それほど違和感は無いが、周囲からはどう見ても死んだように見える。

 ついでにハニエルもその場に落ちるように倒れたけど、私がやることは一つだ。






※おまけ



伯爵「なんなのだ、これは

主教「何を見せられたのだ

奴隷「……(私達が一番知りたい)

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