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第031話 意気投合

 こっそりと宿に戻り、何事も無く翌朝を迎えた。

朝のギルドの賑わいもあまり感じられず、あの港町と比べるととても静かだ。

ここのギルドは宿屋も食堂も一軒に纏まっていて、食堂の方が少し賑わいはある。

しかし、依頼も少ないし冒険者も少ない。


「そもそも、旅の冒険者は長居しないのよ」


 料理長兼給仕の女性が教えてくれた。

 

「やはり、信者の方が優遇されるんです?」

「そうねー、魔物もそれほど寄ってくる事も無いし。なんにしてもこれからは聖女様によって結界が強化されれば、私達はただの連絡用くらいにしかならないかも…」


 ふぅっ。

 と、溜息をついている。

 ギルド自体にも仕事が少なく、殆どは大聖堂で処理されている。

 ギルド長も居るらしいが、給料泥棒と罵られる日々である。


「あーあ、私も次の仕事探した方が良いのかな……」


 料理はちゃんと美味しいし、宿の部屋も綺麗だし、人相の悪い人も少ない。

 違う意味での怪しい人は多いけど。


「聖職者って言っても、実際に職業が聖職者になるかどうかは別だからな」


 隣のテーブルに座る冒険者風の男の人が会話に割り込んでくる。


「確かにそうですね。でも、そうすると何をもって信者とするのです?」


 知っていますが、知らないふりをしておきます。


「聖地だと冒険者用のギルドカードとは別に大聖堂用のギルドカードもあるんだ。登録するのは無料だが、定期的にお布施を納めないと治療院を利用できなくなる。くらいかな……」

「治療が……有料なんですか?」


 先生が吃驚している。

 回復魔法なんかでお金が取れるのかしら?


「回復魔法を使える者は多いけど治癒系は少ない。病気も治せるからな」

「なるほど、確かに。聖女様は高レベルの治癒魔法使いですか」

「知ってるくせに何を言っているのかしら……」


 後ろから声が聞こえた。

 目の前の男の人が吃驚して座っているイスから転げ落ちた。

 何事。


「もう少し丁寧な登場をするんじゃないんですか、噂の聖女様は」

「まだ聖女じゃないし、ここに来るのも初めてじゃないの。登録はしなかったけどね」


 勝手に同じテーブルに座る聖女様。

 暇なのかしら?


「この人達と同じの私にもチョーだい!!」

「はーい」


 あの女性、料理持ってきたら吃驚するんじゃないかしらね。


「昨日の一発分ね」

「はぁ?ちょっと、聖女様なのに奢らせる気なの?」

「奢らせてアゲルのよ」

「ここに来たという事は、今度は私達に用事なのですよね」

「先生は話が早くて助かるわ」


 先生になった覚えはないけど、この子の母親の先生なんですよね。

 てへぺろし難いです。


「それで、私達に何の用よ」

「あー、ね。ちょっとさ、大聖堂を破壊して欲しいんだけど」


 は?

 聖女様……よね?

 呆れて声も出ないわ。


「……なるほど、そういう事でしたか」


 先生は何で納得してるの……。


「聖職者の先生だったのなら、私の言いたい事も分かるんでしょうね。本当に弟子入りしたいわ」

「今は駄目です。生徒が目の前に居ますので」

「あぁ、昨日の子。ってか、あのお城にも居たんだろうけど、もしかして城に住めなくなっちゃったとか」


 お嬢様の目が怖いです。

 ああ、育てて良かった……。


「自己紹介してなかったわね、私はアイシャ・ブイルダン。解かるわよね?」


 ハニエルの目が飛び出そうで飛び出ませんでした。

 なんで二人して見詰め合ってるんですか。

 そこへ女性がトレイに乗せて料理を持ってきました。


「はーい、お待ちどうさまってハニエルじゃないの、久しぶりねー」

「おばさんのごはんが食べたくなっちゃってさ」

「驚かないんだ」

「何言ってるの、この子はギルドに来て治療してくれる数少ない子よ。お金を取る悪徳聖職者じゃないのよ」

「ちょっと、おばさん、ごめんね」


 そう言うと結界を張った……?


「アンタさー、何やってんの?!」


 凄い大声でお嬢様が耳を塞ぎました。

 これが普通の反応だと思います。

 あれ、ハニエルって実は良い子なんですかね。

 塞いだ耳を解放すると椅子の上に立つお嬢様。

 さて、耳を塞ぎますか。


「私はね、あの勇者に復讐する為に城を出てきたのよ!!」


 あらら、お嬢様も対抗心が凄いです。

 周りの人達から注目されていますが、結界で近寄れないし、声も届いていないでしょう。この魔法は……昨日も使ってましたね。


「殺されたらどうするの?!」

「そんなの、わかってるわよ!!」


 今度は二人が私を見詰めます。

 凄いプレッシャーです。


「……あー、だから先生がいるのね」


 納得されましたが、それは違うと言いたい。

 頼りにされるのは嬉しいですけど。


「私はお手伝いですよ」

「勇者の復讐の為に手伝ってるってのも凄い話だと思うけど」

「否定出来ませんね」

「もっと強くなって、実力で勇者をぶん殴るわ」

「じゃあ、私も付いてく」

「え?」

「は?」

「聖女辞めたかったのよ。良い機会だし大聖堂を壊して逃げようかなーって」


 どこが良い機会なのか問い詰めたいです。

 お嬢様が、怒るのと感激するのと悔しいのと、凄く恥ずかしそうな……。


「良いじゃない、やりましょ!」

「でしょ!」


 意気投合しないでください。

 私を見ないでください。

 止めてください。

 死んでしまいまs……死んでました。


「私の母親の仇は討ってあるんだけど、あなたの場合は父親なのよね」

「そーなるわね。でも……許したワケじゃないからねっ」


 許したって言ってませんでした?

 いえ、何でもありません。


「解ってるわ。そもそも、仇っていっても殺したからって良い気分になる訳じゃないし……」


 話によると、自分の手でやった訳ではなく、ギデオンにやってもらったとの事。

 勇者行動で無理矢理犯罪者に仕立てたそうです。

 ……証拠が集められなかっただけで被害者はたくさん居たそうで、勇者対領主の全面戦争に発展する寸前だったって……なるほど、領主側から裏切り者が出て、偽の書類を造ったと。

 結界が消えましたね。


「なんの話かは聞かない事にするけど、協力できるんなら手伝うよ」

「ありがとう、おばさん」


 改めてテーブルに並べられた料理は少し多い。


「こっちはサービスね」

「あら、ありがとう」


 良い笑顔です。

 聖職者ですがこっちのギルドの人達とは仲が良いようです。

 ……なるほど、きっとハニエルは未来のお嬢様の姿に近いのかもしれません。

 私の理想とするお嬢様の姿に……。 







※おまけ



 食事が終わると、ハニエルの周りに人が集まります。


おばさん「また魔物が出たんだけどさ、大聖堂じゃ対応する気が無いんだよ

ハニエル「頑張ってもCランクしか居ないもんね、ココのギルド

ギルド員「ハニエルさんになってもらいたいのも、もう無理かー

ハニエル「あははー、ごめんねー

冒険者A「勇者達と行っちゃった時はもう二度と戻ってこないと思ったからな

冒険者B「そうだぞ、聖女なんかになりやがって……

ハニエル「まぁ、それはね……

ギルド長「お前ら、あんまり困らせないでくれよ。俺の命にも関わるんだからな

一同  「(笑)


 なんですか、これ…。

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