表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/32

第002話 悔しい

 目の前の一人娘に、明確な回答が一つだけある。


「魔王様のお仕事、それは理解していますか?」


 苦しみも悲しみも理解できる教育係は、横に座って優しく抱きしめる。


「魔王は常に人と戦い続けてきました。それは、人の敵としてではなく、魔界を守る為なのです」


 くしゃくしゃでも柔らかい、その長く美しい髪の毛をそっと整える。


「人が魔王を倒す理由も、人の住む世界を守る為なのです。その境界は極めて不安定で、悲しみと苦しみが、恨み辛みを産み、争いが収まる事はありません」


 懐から取り出した小瓶の蓋を開け、小さな手に渡す。

 受け取ると、少しだけ飲んだのを確認してホッとする。

 静まり返った部屋の中で、僅かな時間が通り過ぎる。


「お嬢様は、どうしたいですか?私には貴女のお父様、魔王様から教育するように言われています。それには命を守る事も含まれていますし、やりたい事を見付けたら応援するようにも言われています」

「私…?」

「教えなければならない事はたくさん残っていますが、これからやらなければならない事があります。もちろん、拒否する事も可能ですが」

「………」

「魔王には記憶の継承が有り、玉座に座る事で受け取れるそうなのですが、私には受け取る事が出来ません。資格が無いので…」


 魔王の血筋だから受け取れるわけでもなく、魔王に成れば受け取れるわけでもなく、その理由は教育係も知らない。長く生きて来ても、魔王の継承については魔王にしか分からないのだ。過去の魔王が継承に玉座を使用しているのは知っていても、その魔王が死んでしまったため、継承の方法は謎のままだ。


「過去の魔王の記憶や能力の一部も受け取れるそうですので、もし、何かやりたい事があるのでしたら、座ってみると良いと思います」

「お父さんの記憶も…?」

「多分」


 教育係として役に立てないのは悔しいが、その他の事でサポートするつもりだ。

 

「私は…」


 私は…

 同じ苦しみを与えてやりたい…

 大切な家族を失った悲しみを…

 楽しかった日々が思い出にしか残らない…

 新しい気持ちを失った私を…


「あの勇者達は絶対許さない…」


 身体が震える。


「復讐はあまりお勧めしませんが…」


 生きる為の源としては不安要素しかないが、今は必要な力でもある。

 悲しみを超えた先に怒りが残るというのは、親ならば嬉しくは無いだろう。

 教育係なら、曲げても止めさせるべきだったのかもしれない。

 しかし………


「悔しいの……、何も出来なかったのが……」


 コクコクと瓶の中身を飲み干す。


「あの時に止めてくれなかったら私も死んでいたと思うの」

「あの時は気付かれたと思いましたが…」


 聖職者が周囲を見渡していたのでかなり驚いたのだが、お嬢様を守る為に盾になるつもりであった。気付かれないように結界も張っていた筈でしたが。

 扉がノックされる。


「隊長はこちらにいませんか?」

「なんです?」

「あ、良かった。捜したんですよ」

「…報告を」

「あ、はい。掃除が終わりました」

「玉座はそのままですか?」

「はい、そのままです」


 抱きしめていた腕が離れると、少し寒い。


「立てますか?」


 差し伸べられたその手には骨しかなかった。




※後書き


城内のスケルトンは教育係の部下ではなく、契約で使役している奴隷のような状態

スケルトン達にも性別がある

働き者だが身体は崩れやすい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ