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第027話 旅の道連れ

 旅立ちの日は、夜明け前にこっそりと。

ギルド長が自ら門まで付いて来てくれた。

 門番の兵士が吃驚していたけど、睨み付けてそっぽ向かせた。

 流石だ。


「まだ野盗がウロウロしているようですので、お気を付けて」

「ありがとねー」

「ありがとうございました」


 それだけの会話で背を向ける。

 背を見詰める視線は意外にもはやく消えたのは、多忙だからだろう。

 振り向く事なく歩き、夜明けの陽射しが気持ち良く、スキップしながら進む。

 港町からの潮風が追い風となったかのように、順調にすす……むぅ。


「……あの男が来ますね」

「隠れる?」

「ちょっとソコの茂みに隠れましょう」


 ささっと身を寄せて隠れると、コール・マーカーが4台の馬車を引き連れて鼻歌交じりに歩いてくる。ロープでグルグルに縛られた20人の男達が引っ張られていて、監視するように鎧を着た兵士が囲んでいる。


「商隊の人達の表情が優れませんね。鑑定したいところですが……この距離だと流石にバレちゃいますし」

「会話は聞こえない?」

「それ採用です」


 なんの魔法か分からないが。先生は目を閉じて集中している。

 魔力が何も感じられない。


「……女性二人が行方不明のようです」

「えっ……大変じゃないの?」

「買ったばかりの奴隷を奪われたのではなく、ドサクサに紛れて逃げられたようです」


 鼻歌が止まって、歩みが遅くなる。

 ?!

 マヂっすか……。


「鑑定も察知も無い筈なのに気付かれましたね……」


 鑑定持ちは鑑定されると気が付く。

 危険察知の特殊技能は……有りませんよね。

 有って欲しくないです。

 商人が居るので無駄に鑑定しかけてくないんですよね。

 近くに居ると感知してしまうのです。


「先生でも隠れられないって、意外と凄い才能が有るのかしら?」

「そこかっ?!」


 バレたっ?!

 マーカーが足元の小石を素早く拾い上げて投げると、私達の横を通過して茂みの中の何かに当たった。野鼠だ。石を当てられた野鼠が姿を現し飛び掛かって行くと、そのまま素手で軽く掴まれた。

 へー、凄いけど、なんか違うわね。


「これ、結構美味い奴だったよな?」

「え、えぇ……流石ですね。その魔物を素手で捕まえる人は初めて見ました」

「じゃあ絞めといてくれ」

「はい……」


 そして再び歩き出す。

 良かった、バレてない。

 で、なんでこっちを見てるの……。

 ボールド所属の兵士が困った表情で問う。


「マーカー殿、早く行きませんか?」

「あ、あぁ……今夜のおかずにもう一匹欲しかったんだが」


 諦めて前を向いて歩き始める。

 どうにかバレずに済んだようだ。

 商隊と遠く離れるまで待機してから茂みを出る。


「見つけましたよ、逃げ出した奴隷」

「はやっ?!」


 商隊から逃げたのだから、私達にとっての進行方向へ小走り気味に移動する。先生が足元を確認しているのは走るのが久しぶりなのと、その練習も兼ねているからだけど、意外と早い。

 ちょっ、待ってー……。


「あっ……」

「どうしたの?」

「通り過ぎチャイました……」


 後ろを見ると吃驚して尻もちをついたまま動けない二人を見付けた。

 一人は大人の女性のようだが、もう一人はどう見ても私と同じ年齢か、それ以下の子供だ。それなのに奴隷なんて、可哀想すぎる。

 首には隷属の輪が付けられていて、喋る事が出来ないようだ。


「こんな状態でよく逃げ出せましたね……」


 先生を見て恐怖で泣いている。

 口を大きく開いて何かを叫んでいるようだが、首輪の所為で声がかき消されている。


「この首輪は安物ですね……」


 バキッという音ともに首輪が壊れた。


「え……あっ……ありがとうございます……」


 感謝を述べているようで、全く信用していない。

 手と足の不規則に動きではあるが、遠ざかろうとしているのが分かる。


「あら、これは念入りですね、隷属の魔法が掛けられています。グルグルほぃっと」


 先生があっさりと隷属の魔法を解いた。

 先生の凄さを自慢してたらどうなるんだろう?


「お、おねーちゃん……何処に行くの……お家帰りたいよ……」


 お嬢様は凄く心配そうな表情ですが、どうすれば良いのかまだ分かりません。

 自分の年齢では信用されないだろう事を記憶の所為で理解してしまったのだ。


「普通に喋れるみたいですね。どうです、怪我とかないですか?」


 お嬢様がこの二人を見捨てる選択が出来る筈もなく、助けた事による商品を強奪した犯人にされてしまうかもしれないという不安と、面倒を見る必要も有る事で少し混乱しているようだった。


「先生、今気が付いたんだけど、この隷属の魔法って祝福なの…?」

「えぇ、そうですよ」


 祝福の魔法と言えば回復や治癒、身体に良い効果が殆どである。

 隷属の魔法は祝福。

 先生に肉体を与えた時は呪い。

 この辺りの理由は詳しく教わってない。


「それにしても奴隷らしい服ってなんでいつもこうなのかしら?」

「メイド衣装を着た奴隷も居ますので、多分お金をケチったんでしょうね」

「なるほど」


 二人は怯えたまま私達を見ていて、生死を問われているのか、絶望しているのか、対応はお嬢様に任せようか……。


「ねえ、二人は何処から来たの?」

「えっ……アルファディルからです……」

「聖職者の街よね、奴隷の売買もしているの?」

「それは、隷属の魔法は聖職者が行う事ですから」


 なんか聖職者のイメージが壊れたんだけど。


「た、助けていただけませんか……?」

「助けるのはかまわないんだけど、あなた達にアテは有るの?」


 絶望でしたね。

 お金も無い、食料も無い、そして希望も無い。

 どうしよう……。







※おまけ



名前 ティル・フィルド 性別 女 年齢 17 種族 猫獣人 職業 奴隷


名前 ミィ・フィルド 性別 女 年齢 8 種族 猫獣人 職業 聖職者見習い



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