第026話 欲しいのは強さ
今日で正月休みも終わり…
というか、4日の夜から仕事なんですよ……
また少しずつ更新していきます 改めて、今年もよろしくお願いいたします m(_"_)m
「なあ、そのSランクはいつ戻ってくるんだよ」
「あなたの言う事なんか聞くはずないですって」
「Sランクだぞ、そんな簡単に現れてたまるか」
誰だー、喋ったやつ―!!
と、心の中で怒っている。
視線をぐるりと周囲へ向けると、他の冒険者達は知らぬ顔をして逃げていく。
魔王国に近い事も有り、Aランクパーティも多く在籍する町のギルドだから、そのギルド長も実力者でなければ務まらないのだ。Aランク達を睨みつけて散らすと、その人混みの間から現れたのは、彼女が追い求める姿であった。
「せ、せんせい、たすけてーー!!」
「へっ?」
セイビアが飛び込んできた。
800歳を超えているとは思えない慌てっぷりである。
追って来るようにもう一人現れ、挨拶も無く、人差し指をまっすぐ向けてきた。
「あんたがマリアか。魔族を斃すのに力を貸せ」
断られると思っていない態度である。
「嫌です。では失礼……」
「は……?」
自分の横を通り抜けていくのを見送ったりはしない。
素早く肩を掴もうとして、避けられた。
「……あれ?」
「アンタ、その程度で先生に命令するなんてバカじゃないの?」
金魚の糞のようにくっついて歩く小娘に言われ、更に冷笑までされて、見ていた周りの者達もつられて笑っている。
笑われた方は顔が真っ赤になって怒鳴った。
「俺を無視するなんて良い度胸だな、何年前のSランクか知らんが、ブランクがあるだろ。俺がSランクなのを知らんのか?!」
「知らないわ」
「知りません」
「貴方もSランクなんですから、もう少し自重してもらわないと困ります!」
セイビアは元Sランクの冒険者で、今はギルド長である。
現役のSランクには及ばなくともかなり強いのは明らかだ。
だが、引退した者に興味はない。
「この俺を……Sランクのコール・マーカーを知らんとは、とんだ田舎者なのか?」
確かな実力があって、実績も有るからSランクなのに、何故かこの男は小物感が凄い。Sランクに昇格した時は威張り散らかして、先達のSランク相手にも自分が優秀なのを自慢したくらいだった。
マリアは声ではなく、その名前を聞いて思い出した。
「あぁ、思い出しました」
ホッとした男は次に驚く事となった。
「魔王国領で何もしないで逃げた人でしたね。仲間にも見捨てられて大変だったでしょう」
「な、なんでそれを知って……お、お、お前喋ったなっ?!」
問い詰められたのはギルド長で、立場上、依頼を失敗した内容を知らない筈が無い。
「俺に恥をかかせるとどうなっ……むべっ?!」
突然その場で滑って転んだ。
僅かに一歩前に踏み出した直後に転び、立ち上がろうとしてまた転んだ。
誰にも気が付かれない程の僅かな魔力と並外れた魔法制御で、人一人を転がしている。気が付く事が出来たのは先生を知っているからで、知らなければただの慌て者にしか見えない。
先生が私に微笑んだから気が付く事が出来た。まだまだ未熟なんだよね……。
周囲からは笑い声が聞こえる。
「セイビア、依頼の報告をしたいので付き合ってもらえますか」
「あ、はい」
ザワっと驚きの声が上がる。
何故なら、どう見ても年下の女性がギルド長を呼び捨てにしたうえに、受付嬢がやるような対応を求めているのだから。
そしてギルド長が断らない事で、誰が見ても理解する。
この人が噂の元Sランク越えの冒険者だという事を。
「おい、まてっ……うべっ」
顔から床に落ちた。
鼻血が出て痛そうだ。
いや、実際に痛い。
今度は立ち上がろうとして躓き、近くのテーブルの脚に小指をぶつけた。
「んがっ……」
「うわー…痛そう。」
とは言ったが、歩みを止める理由はない。
先生の後ろをついて歩き、そのままギルド長の執務室へ入る。
最後にギルド長が、コールの方を一瞥しただけで中に入り、扉を閉ざし、更に施錠の音まで聞こえた。
しかし、事態は急変する。
息を切らせてギルドに入ってきた男は商隊の護衛を名乗り、愕然とする男に突然の知らせが届けられた。
その知らせはギルド長に向けたものであるが、実際に行動をするのはギルドに登録した者達だったので、その場で説明すると、その内容を聞いて意気揚々と一人でギルドを飛び出して行った。
先ほどまでの苦悶が嘘のようである。
「えっ……あれ、Sランクのコール・マーカーだよな?」
知らせを届けた男が不安に思い、誰となく周囲の者に訊くと頷きが返ってきた。
「その内容だったら、あの男で十分過ぎるんじゃないかな」
「それでも、商隊を襲った野盗は30人以上いるんだぞ?」
「格下には圧倒的に強いので心配いりません」
その返答を聞いて、何故か余計に心配になった。
依頼の手続きを済ませ、報酬を受け取る。
予想した以上の結果だったので+Fランクに昇格した。
本当ならこのままもうしばらくギルドで活動して欲しかったが、ハニエルの話を聞いた二人が旅に出るのは当然である。
魚屋で準備してもらった魚は料理され、食卓となったテーブルに並べられている。
自分で獲った魚は格別おいしい!!
と、しっかり自慢をしておく。
本題は食事中から始まった。
「路銀も問題ありませんし、馬車ではなく歩いて行きたいので出発は早い方が良いでしょう。お嬢様の訓練も続けたいですし」
「ハニエルはあのパーティでの活躍はあまり目立ってはいませんが、陰で支えた実力者なのは間違いないです。……戦いは挑みませんよね?」
先生に見詰められた。
そんなお母様みたいな目で見ないで……。
にっこりするのやめてぇぇぇぇ……。
「あの時は負けない事に重点を置けば凌げましたが、今なら特殊技能に何らかのモノが無ければ勝てると思います」
「ぇっ?」
「勝つという意味で戦うとそうなります」
「……まぁ、あっちのギルドで騒ぎになるのは構いませんけど」
こっちは遠い眼をしている。
先生が規格外なのは分かるけどさ。
これ、私にもっと頑張れって言ってるのよね……?
「でも、聖女になってしまうと会うのも大変になるわよね」
「聖女は現存するんですか?」
まるで物みたいに言うのね、先生は。
「特殊技能に聖女が刻まれた例はありませんね。職業なら有りましたが」
「蘇生魔法は扱えるんです?」
「流石に見た事が有りません……。過去にも世界樹の葉を使って蘇生された伝説は有りますが、結果をご存じですよね」
「まぁ……」
ただ仮死状態だったのを死んだと勘違いした事で、伝説の世界樹の葉を煎じて飲ませたら生き返ったように見えた。
「ただの偶然です」
「今でも世界樹の葉を欲しがる人は多いですけど、あの木はでかくて遠くからでも見えるんですが、そこまで行こうとすると一年以上かかるんですよね」
「あの土地は面倒でしたね。トレントとケルベロスが守っているなんて思いませんでしたし、やっとの思いで辿り着いても小さな家と畑が有るだけ」
「世界樹も有るんでしょ?」
「その木の根っこに家があるんですよ」
先生もギルド長も行った事が有るという事だ。
「まぁ、世界樹の話は横に置いて、聖地に繋がる街道は商隊や冒険者が多い分、野盗も多いですから、しっかり経験にして強くなりましょうね」
「普通は避けるように言うんじゃないんですか」
「お嬢様の経験と成長には必要です」
「ですよねー……」
「聖地アルファディルの大聖堂は遊ぶには詰まらないですけど、街中にテルマエがあるので女性にも人気のある国です。悪さをする人の方が少ないとは思いますが……」
まーた、なんか、フラグが立ちそうな言葉が……。
「魔王の存在が消えた後から黒い噂も有るんですよ」
もう立ってました。
「あんまり酷かったらこっそり破壊しておくんで大丈夫です」
「お願いします、それは止めてください」
てへぺろってしてるから冗談だった。
冗談……だよね?
「そんな事したら悪目立ちし過ぎて勇者みたいになりますよ」
「あー、流石にネ」
「そうです。それに、お嬢様の成長に何ら寄与しませんから」
「そっちかー……」
先生は私にかなり期待しているようだけど、今の私にはそこまでの自信は無い。
勇者を斃すつもりの旅だけど、本気で斃せるなんて今は微塵にも思わない。
でも、思い出すと腹は立つし、涙も出る。
「時間はたっぷりあるんです、お嬢様がそうしたい事にお手伝いいたしますから」
「えぇ、先生お願いね」
セイビアは微笑んでいるが羨ましそうに見ている。
二人で旅をしている事を懐かしんでいるようにも感じた。
「先生と二人旅なら死ぬなんてありませんから、思いっきりやって先生を驚かせてあげてね」
「……それは頑張りガイがあるわ」
「そこ、生徒の間で先生を利用しないっ」
「はーい」
「はーい」
アイシャは、心を通わせる事に喜びと幸せを感じていた。
※あとがき
セイビア「それにしてもいい真珠ですね
アイシャ「そうかな?
マリア 「少し小さいですよね
アイシヤ「うん、もっと3倍ぐらいが普通だと思ってたわ
セイビア「……もう少しこの町に滞在しません?
マリア 「無理です(キッパリ
セイビア「ぐぅっ……負けた
マリア 「勝ちました
アイシャ「どういう関係なのよ……




