第025話 それぞれの思惑
釣りを終えて先ほどの親子が経営する魚屋に行く。
るんるんで到着すると、娘の方がこちらに気が付き、挨拶をする。
「こんなに釣りの上手な女の子は初めて見たよ」
この子も釣りには自信が有ったようですが、こっそりと魔法袋から取り出した樽の中身を見てビックリしています。
「まー、お父様に叩き込まれたからね」
「へー、ウチの親父も漁師なんだけど」
「あー、私のお父様はー……」
言えませんよね。
えぇ、言えません。
「ひみつー☆」
「ははっ、確かにカンタンには教えられないよな、商売敵に成りそうだ」
それにしてもこの女の子は男っぽい喋り方をします。
お嬢様より年上で、筋力だけならかなり高いですね。
「そっちは、かーさんかい?」
「私のおねーちゃんで旅行の保護者なのよ」
そーゆ―設定で行くんですね。
承知しました。
「はい、アイシャがお世話に成ります」
「そっちのねーさんも釣りが得意なのか?」
「いえ、私はカラッキシです」
「釣り楽しいのにもったいないなー」
「ねーっ」
仲良くなっているのは良い事なので、そのままで良いんですけど、なんか疎外感が……。
「おー、済まんな嬢ちゃん」
「あら、おじさん、持ってきたわよ」
「ボスクラムの方も欲しかったが、みんな逃がしちまうなんてな」
「ちょっと、かわいそうですね」
「ハハッ、何言ってんだ、あの貝は美味いぞ」
私もお嬢様も食べた事は有りません。
中身の真珠の方が価値が高いし、大きく育ってくれた方が真珠も大きくなるので、魔王国では誰も食べません……一部は食べてたかもしれませんケド。
「おやじー、全部買うのか?」
「金貨3枚で良いか?」
「そんなに高く売れるんですか?!」
「ああ、このブタヒレが高級品で、貴族が食べたがるんだよ」
なんの事かサッパリです。
鑑定してみます……。
名前 ブタヒレ 説明 脂がのっていてとても美味しい 希少価値が高い
「……」
「何をしてるんだ?」
「あぁ、いぇいぇ。それより、魚屋なんて珍しいですね」
「あー、殆どがギルドか食堂が買い取っちまうからな、ウチみたいに昔からやってるんじゃなけりゃ露店で売るくらいしか店は無いな」
「ふむー」
「それより、その魚まだ元気ならこっちの水槽に入れて欲しいんだが」
魚屋の娘があの樽を一人で持ち上げて、店内の水槽に流し込む。
鮮度は良いので魚は生きていて、水槽の中でスイスイと泳いでいる。
「これ良いわね」
「海と同じ水を使ってるからな、毎日交換しなきゃならんが、少しは長持ちするぞ」
「循環器付ければ良いじゃないですか」
「ジュンカンキ……?」
親子が不思議な顔でこちらを見ています。
魔法袋から……こっそり出せない。
この袋の中には家も入っていますし、水を濾過するのにも使うんですけど。
「まあ、魔法でも綺麗になりますよ」
「ああ、浄化魔法ね」
なんでこの親子、二人とも黙ってるんですか。
「じゃあ、この石をさし上げましょう」
これくらいなら出しても不思議は有りませんね。
小さいですし。
「魔術石か」
「ご存じなのに使わないんですか?」
「こんな高いもん使ったら儲けが無くなっちまう」
娘も頷いている。
「この石なら100年ぐらい使えますよ」
「ひゃくねん……」
「水槽も倍ぐらいでも平気ですし……」
この人は知らない筈ないんですよね……鑑定してみますか。
名前 ホセ・マノリ 種族 猫獣人 職業 魚屋 レベル 387
特殊技能 魚師
「ぶっ…ゲハッ…」
変な目で見られました。
いや、でも、私でもこんな人は初めて見ました。
「あんた。鑑定持ちか。」
「……えぇ。」
「普通はみれねぇモンまで見たな」
「……この特殊技能は初めて見ましたね。っていうかレベルが……」
「……俺も詳しくは知らねえ。何しろ俺の親父が死んだら継承されたもんだからな」
「詳しく調べても?」
「カマワン」
先生が魚屋のおじさんのおでこに・・・手が届きませんでした。
しゃがんでくれたよ。
改めて手をおでこに。
「魚に関係するモノなら何でも効果の有る特殊能力みたいですね」
「あぁ・・・それはあの貝にも効果が有るのか?」
「無いとは言えませんね。何か気に成る事でも?」
「あの貝を捕まえると、泣き声だったり、怒った声だったり、聞こえる事があるんだが……」
「あの貝には独自の言語が有りますので。それと人語も理解しています」
「貝なのにかい?」
「はい」
「あと、とてつもなくレベルが上がり易くなるみたいですけど、そう感じた事は?」
「……有るな。子供のころは海に行くと身体が軽くなる感じがしたんだ」
先生が何かに気が付いた。
こういう時の先生は非常に真面目なので期待が持てる。
「なるほど、海に近い時に発揮される能力と言うワケですね。どのくらい離れると効果が無くなるかは分かりませんが、この町から外に出た経験は?」
「ないな」
「では、海の近くから遠く離れた内陸には行かない事をお勧めします」
そこからは先生の推察も含まれるが、概ね納得できる分析内容だった。
そして、先生はもう一つ知ってしまった事がある。
「あなた達は親子じゃなかったんですね」
名前 マーサ・C・ジョルダン 種族 猫獣人 職業 花嫁修業 レベル 3
特殊技能 なし
「それは秘密……にしているワケじゃないから良いんだけどさ、お父さんって呼ばないと恥ずかしがるんだ」
そこから先は二人の関係に深く関わる事も有って問い詰めるような事はしなかった。
本来の目的は、魚を加工して貰って、今夜のおかずを手に入れる事だった事を思い出し、余計な時間を費やしてしまったかもしれないが、どうせ暇なので気にしない。
目的の真珠は十分手に入れている。
元気に泳ぐ魚の入っている水槽を眺めて待っている間に、見事な技術で加工された魚を受け取り、買い取って貰ったお金も受け取ってギルドへ帰る……。
だが、そのギルドでは、なかなか帰ってこない事に質問攻めされているギルド長が首を長ーくして待っていた。
※あとがき
名前 ホセ・マノリ 種族 猫獣人 職業 魚屋 レベル 387
特殊技能 魚師
名前 マーサ・C・ジョルダン 種族 猫獣人 職業 花嫁修業 レベル 3
特殊技能 なし




