第023話 秘密の話…
先生とギルド長のセイビアさんは知り合いだった。
というか、生徒だった。
生徒になった切っ掛けは、魔王国領内の森の中で倒れているのを助けた事から始まったらしい。先生が森に入った理由はポーションの材料を探していたからなんだけど、セイビアさんは違った。
「魔玉が欲しくて魔王城に忍び込む予定だったんだけど、その前に魔物にやられちゃったの。そこに先生が現れて助けてくれた訳なんだけど、自分が強いと思ってきたのにあっという間にやられちゃってさ、実力不足を自覚したから先生に弟子入りしたの」
「弟子にしろってしつこくてしつこくて……」
「あの森の中をひょいひょい移動できる人が弱いなんて思いません」
「骨だったのに強かったの?」
「少なくとも私に襲い掛かる魔物はいませんので、もともと安全なのです」
「ねーっ、先生ってすごいよね」
「うん、すごい」
セイビアは先生をジーっと見詰めている。
セイビアさんも美人だが、先生だって負けないくらい美人だ。
まあ、お母さんそっくりだし、同然よね。
「先生って、骨でしたよね?」
「まぁ、色々と事情が……というか、あなたはエルフなのになんでこんなところでギルド長を?」
「えっ、エルフ?!」
特徴の長耳は……?
「先生のおかげで強くなったのは良いんですけど、強くなり過ぎた所為か、勧誘が多くなって、貴族の相手をするのが面倒だからギルド長になったんです」
「相変わらず貴族って……」
「暫く大きな戦争もなかったですし、最近ですと魔王討伐の時に囮部隊で侵攻したくらいで、その後も殆どが単品の魔物の討伐くらい平和ですね」
タンピン……?
「く、詳しいですね」
「ギルドは情報の集積地ですから」
「そうですか……ちょっとお話ししたい事が出来たので別の部屋に行きません?」
「えーっと、先生とお話しするのは良いのですが、少し予定がありまして、夜でも良いですか?」
「かまいませんよ、あと、これをついでに換金してください」
先生が古代金貨を一枚渡すと、そのまま返ってきた。
丁寧なお辞儀の後、丁寧な口調で言った。
「無理です」キッパリ
その日の夜。
遅い夕食を食べながら、先生と元生徒の秘密の話が始まった。
「実は……」
簡潔に纏めると、私が魔王の娘であり、勇者を倒す為に旅をしているという事だ。
凄く吃驚していたし、私をジーっと、たっぷり1分ぐらい無言で見詰めていた。
「事情は理解しました。もちろん他言はしません。そもそも先生がココに居るだけで大問題になりましたし」
「ですよねー……」
先生のギルドがーというより、過去の記録が出てきた事で、とんでもない事が分かった。先生は元+SSランクの冒険者。
生きてSSSランクに成った人は居ないという事で、過去の記録でも先生以外では数人しかいないという高ランクなのだ。
騒ぎになる前にギルド内で緘口令が敷かれた。
外部に少しでも漏れたら一目見たいという野次馬でギルドの機能がめちゃくちゃになってしまうのを防ぐ為でもある。
「骨だった時の先生しか知らなかったモノで、まさか伝説の魔女だったとは」
「そういや、以前も言ってたよね、魔女って」
「正確に言うと、魔女は職業ではなく種族なんですけど……」
「それでも魔王に勝てなかったんだから、初代魔王ってどんだけ強かったのかしら」
「少なくとも今の勇者よりは強いですね」
化け物じゃん……お父様だってそこまで強くない。
いや、強いけど。
「勇者を斃すには先ずお父様を超える強さを身に付けないとダメってことね」
溜息が漏れる。
半年間みっちりやって、確かに強くなった実感は有るけど、今の私はお父様の足元にも及ばないだろう。
「少し失礼しますね……サーチ」
サーチとは鑑定の事。
違いは無い。
イメージしやすい言葉を使うのが魔法には適しているので、同じ魔法でも人によって唱える魔法や呪文は違うのだ。というのはもちろん先生の教えだ。
「ホントに10歳とは思えない能力ですね。普通にDランクで行けますよ」
「私が育てました」
「育てられました」
なんかそっくりな二人です。
んんっ?!
「あぁ、このままだと職業の所為で登録できないんですよね」
「流石に無職登録の冒険者だと信用がありませんからね」
「へー、そう言えば私の職業って何?」
「ご自分で確認しませんでしたか?」
ちょっとステータスっと……。
「魔王見習いって……」
「かなり特殊な職業ですね」
「強制的に変更は可能なんですけど、正規の手続きを踏むと教会に行かなければならないのが面倒なんですよ」
そう言えば戦闘面での勉強はみっちり教わったけど、社会や地理などの一般常識はあんまり教わっていない。そもそも、城から出る予定はなかったから当たり前だ。
「半年でみっちりの弊害が出ましたね」
「そんなこと言わないで、これから教えてよ」
「今回はセイビアに任せました」
先生も城に居る時間が長くて一般常識を忘れているらしい。
セイビアの説明では職業は教会で指定されたモノと、生まれながら就いているモノ、そして、何らかの影響で勝手に変更されるモノがあるとの事。
私の場合は一部継承の影響で魔王見習いに成ってしまったようだ。
「変更は私が出来るので問題ないです」
「先生は天魔導士でしたね……世界でもSランクの職業ですが」
「今は教育係です」
「……自力で変更できるのが羨ましいです」
「教会のインチキ転職なんかすぐに真似しましたよ」
インチキというのは、教会での転職は転職神という都合の良い神の力によって適性の職業に変更して貰うというモノ。どこがインチキなのかは先生が教えてくれた。
「実際は職業を定める神がいて、それは転職神でも、職安神でもないんですよ」
しょくあんしん???
「そして、それを代行する道具があって、その道具が有れば誰にでも職業の変更は可能なんです。それを教会いがもったいぶってそれらしく扱っているだけなんですよ。しかも、望んだ職業に成れるかはその人次第ですし。あの神は働かないんですよ……狡い」
なんか余計な一言が……。
「先生はどうやってやってるの?」
「自分でステータスを確認した時に職業名に指を挿して魔力を流し込むと、変更可能な一覧が出ます」
もちろん真似をしたが出来ない。
ギルド長もやったが出来ない。
「これをこうして、こうやって、ここにもう一度魔力を流し込みます。そうすると……オリジナルの職業も作れます」
先生がステータスを見せてくれた。
職業が <教育係> から <塾講師> に変わっていた。
また意味が分からないモノに成っている。
先生って本当に何でも出来るんじゃないのかしら……。
「ああ、オリジナルは自分の時にしか出来ませんし、他人の職業を変更するには受け入れて貰わないとならないので、勝手には出来ないんですよ。そもそも職業による特別なモノってなんにも有りませんし」
「えーっと、例えば魔法が使えるから魔法使いになるのであって、魔法を覚える為に魔法使いになる訳じゃないって事?」
「そうです。お嬢様だって魔法使いでないのに魔法を覚えたでしょう?」
「そう言われれば、そうね」
「…………」
セイビアが凄く困った表情をしている。
「以前の私達の常識では逆でした。今もその常識の方が主流なんですけど……魔法剣士になった人を見ると確かに先生の言う通りなんですよ」
「魔法の素質があったから剣士でも魔法を使えて、魔法剣士に変化したんでしょうね」
「一応、無理矢理でも別の職業に就かせると、その影響が出るみたいですけど」
「さっき先生は、職業による恩恵は無いみたいなこと言ってなかった?」
「私には無いですね」
「普通は有りますよー……」
戦士、鍛冶師、土方、剣闘士、など、力が上がり易い職業は有るのだが、筋力が高いだけではどの職業に就くかはその人次第になる。
と、いう訳だ。
「じゃー、私はどんな職業が良いかしら?」
「魔闘士辺りがお勧めですかね」
セイビアが頭を抱えている。
珍しい職業らしい。
「もう少し一般的なモノにしませんか……」
「じゃあ……魔操師くらいにしておきますか」
セイビアが眉間に指を押し込んで悩んでいる。
「まぁ、それなりに多い職業ですし、魔道具の扱いや魔法コントロールが上手な職業でもあります。ただ、10歳でその職業に就いた人は見た事が有りませんが……」
「職業による影響がどのくらいなのか、ついでに調べるのも良いですね」
こうして私の職業が決まった。
ステータスを鑑定で無理やり開いたところへ先生の指が押し込まれる。
ああっ、なんかっ、ぐるぐるするっ……。
※あとがき
■:セイビア
エルフで800歳越えの女性
元Sランク冒険者
マリアに戦い方の基本を教わり
帰国後+Bランクから魔物を狩りまくって
半年後に+Aランクにまで昇格
Sランクに成って貴族からの勧誘から逃げるように引退
エルフの国に帰る予定だったがギルドからの提案でギルド長になる
■:魔玉
魔力を詰めた玉
スケルトン達がコツコツ作っている
魔素が溜まりやすい場所でないと作るのに時間が掛かる
高純度の魔玉は高級品
■:ステータス
名前 アイシャ・ブイルダン 性別 女 年齢 10 種族 魔族
職業 魔操師 Lv17 筋力1 魔力51 敏捷15 魅力35
HP35 MP547
所持 ミスリル製の釣竿
特殊技能 進化の女神と契約 魔力の紋章 鑑定Lv2 父親の記憶
名前 マリア・薄田 性別 女 年齢 不明 種族 普人 職業 教育係
Lv128 筋力5 魔力897 敏捷20 魅力300
HP155 MP8500
所持 魔力核(体内) 魔法袋
特殊技能 技能神と契約 不死の呪い 魔女の知識 異世界転移
鑑定LV3 受肉 自動修復




