表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/31

第001話 たった一人

 男三人と女一人が魔王を斃した。

魔王の存在が消えた事を肌で感じた魔族たちの間に広がり、四天王も失われ、統治能力を失っていた。

魔物達は次の魔王を求めているが、候補者はいない。

四天王にすらなれないような自分が魔王を名乗れば必ず勇者がやってきて殺される。

それを解ってて名乗るバカはいないのだ。

4人の勇者達によって荒れ果てた城内では、骨だけで動くスケルトンの掃除部隊が忙しく働いていた。

バケツに水を溜めて運び、雑巾で血に汚れた壁や床を丁寧に拭く。

エプロン装備の箒部隊もやってきて、ローラー作戦の如く掃き出す。

その間も無駄口が多いが、それを咎める者はいない。


「炎のギルガント様も、土のデスカトル様も、水のマーダトル様も、風のジエル様も、みんな死んでしまった」

「俺達はどうなるんだろうな?」

「俺達は魔王様の配下じゃないからな」

「ただの管理人とは言われているけど、俺達の仲間も勇者にやれてるんだろ?」

「それなら直ぐに復活するらしいぞ」

「そういやウチの隊長は教育係だったな」


 掃除をしながら会話をする。

 遺体が運ばれ、部屋は少しずつ綺麗になっていく。


「そういや隊長が教育してたのって誰だっけ?」

「魔王様の子だよ」

「そっかー…あっ!」


 思い出したのだ。

 魔王に娘がいる事を。

 魔王が溺愛した、たった一人の、娘が。

 彼等は急いで掃除をし、魔王の遺体そのまま残して隊長の所へ報告に向かった。





 ベッドに伏せ、ずっと泣いている少女がいる。

9歳になったばかりの少女にとって、耐えられない不幸が続いたのだ。

2年前に母を病気で失い、二人となってからは良く遊びに連れて行ってくれた父。

湖に、草原に、山に、海岸に。

母親の事を思い出して泣くと、どんなに忙しくても駆けつけてくれた優しい父。

墓石に手向ける花を二人で摘む。

病気に苦しんでいた母をもっと大切にすれば良かったという後悔も、死んだ事を告げられた時の悲しみも、父親の温かい胸板で癒されていた。


 いま、少女を包む優しい父はいない。

 ただ、ひたすらに、こみ上げてくる喪失感に耐えられず、嗚咽を漏らす。

 泣き疲れて寝て、目が覚めては泣き、疲れはてて寝て、覚めては泣いた。


「お嬢様、そろそろ食事をなさってください」

「………」


 起きてはいるが、ベッドに座ってうつむいている。

 水も飲まない所為で、痩せ方が酷い。

 艶々で綺麗だったロングヘアーはぼさぼさで、見る影もなく、綺麗な服も、薄暗い部屋では光沢を失っている。


「どうして?」


 その声を三日ぶりに聞いた。

 だが声はかすれていて苦しさが伝わってくる。


「どうしてお父さんは殺されなきゃならないの?」


 魔王のやっている事は知らない。

 娘にとっての父は、ただの優しい父だ。

 魔王が、部下達が、人々を苦しめ、侵略を企てている。

 そんな事は一切しておらず、父は人との共存ではなく、相互不可侵を守り抜いていた筈だった。

 だから、人が攻め込んで来て、お友達を殺し、勝手に家にまで入って来て、宝を奪い、ついには父を殺した。

 私はそれを物陰で見ていた。

 助けようとして止められた。

 止めたのは目の前の教育係。


「なんで私は一人にならなきゃならないの…」





※後書き


ギルガント 四天王筆頭

デスカトル 四天王

マーダトル 四天王

ジエル   四天王

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ